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Q.92「資格試験に必要な批判的思考力はどのように身につけるべきか?」

この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
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Q.92「資格試験に必要な批判的思考力はどのように身につけるべきか?」

 英検一級取得を目指して勉強をしている者です。最初の単語の穴埋めや長文の読解は暗記や読む練習を重ねていけば対策できると思うのですが、英作文や2時試験については、経済や法律、社会問題など色々なトピックについて英語で考え、その場で答える必要があります。思考力も問われているような気がするのですが、こうした問題にはどのような対策をすれば良いでしょうか?良い対策方法があれば、教えて頂きたいです。(ゆういち、33歳、会社員)

 

求められるのは、英語での批判的に思考する力

英検1級取得を目指されているということは、すでにかなりの英語力をお持ちだと思います。おっしゃる通り、英検の英作文や2次試験の面接では、トピックが多岐にわたっているので、英語力に限った対策では不十分だと言えます。文部科学省の後援も受けており、国内の英語能力試験として最高峰のものなので、英語力だけではなく、それに相応しい教養と批判的思考力が試されているというのは当然だといえます。

どのような対策をすれば良いのかというご質問ですが、これに特化した対策というのはなかなか難しいかもしれません。しかし、出題傾向を知るというのはとても重要だと思います。

すでにご存じかとは思いますが、出題される問題は、あらゆる社会問題に触れるトピックが題材になっています。たとえば、経済成長とその環境に及ぼす影響に関するトピックや、国際的な団体の役割、国際平和の実現に関する話題など、時事的な問題だけでなく、長年に渡って課題とされている内容も多く含み、未だこれといった具体的解決策のない問題を取り扱っているともいえます。これは作文やスピーチの中で議論をするために考慮されていると考えられます。

 

日常的に物事のメリットとデメリットについて考え、理由付けをする習慣を

 このような議論を求める問題には正解がありません。なので、自分なりの答え(考え)を持つことがまず必要になります。社会の様々な問題をただ理解するのではなく、自分なりにこうすれば解決するのではないかと考えたり、いくつかある解決方法のメリットとデメリットを考えることを習慣にすることを強くオススメします。英検の英作文と2次試験の共通点は、議論の余地のある問題に、自分なりの答えを出し、それに対する理由付けが必要であるという点です。その理由付けをする際に、メリットとデメリットを考える習慣が最大の武器になります。

また、そのメリットとデメリットを考える際、視点を設定すると議論がしやすくなります。たとえば、

「民間企業の経営破綻に政府が税収を投じて倒産を避けるべきかどうか」

という問題があるとします。この問題には、「税収を国民の生活の安定に投じるという政府の立場」での意見と「納税している国民からの立場」では見解が変わってきますし、民間企業とはいっても銀行と飲食業では、倒産した場合に与える影響が変わってくる考えられます。それらの複数の視点を踏まえた上で、

「政府の立場から考えると、より多くの国民の生活の安定を最優先して、経済の専門家が議論した上で、税収を民間企業の倒産を防ぐために利用されているはずだ」

という議論を行えば、読み手や聞き手が反対意見を持っていたとしても議論としては成り立ちます。

 

議論の展開は、まずは視点を絞ることから

試験中に議論をする際には、文字数や時間が限られているので、すべてを議論することは不可能です。なので、ある視点に絞って議論すると、読み手・聞き手に分かりやすい議論ができ、考えが上手く伝わるはずです。その考え方が正しいかどうかということが問題ではなく、問題を多面的に捉えて、自分なりの答えと理由付けをすることが重要になります。そのためには、普段からあらゆる問題に関して多面的に捉えて、メリットとデメリットを考えておくことが重要になります。

 

英字新聞などを読み、表現をのインプットを

そして、そのような批判的思考力を身につけると同時にやはり重要なのは、その思考力を表現する英語力です。おそらく普段の生活で批判的思考力を養うためには、日本語で行うと効率的だと思いますが、それでは英語で表現することが難しくなります。

必ずしも時事問題が出題されるわけではありませんが、普段から英字新聞などを読んで、あらゆるトピックに関する情報のインプットを英語で行っておく必要があります。例えば省庁など政府機関の英語名や、国際機関の英語名なども、英字新聞を読むことを習慣としていれば、日本語から訳す必要もなく、英語で表現できるようになります。

英字新聞を読むとはいっても最初から終わりまですべてを読むというのはあまり現実的ではないかも知れません。対策として考えるのであれば、トピックを絞るのがやはり効果的です。

英検は過去問題を公開しています。日本英語検定協会のホームページには、過去3回分の問題がダウンロードできるようになっていますし、さらに古いものでしたら過去問題集として出版されている書籍もあります。過去数回の英検で実際に出題された英作文の問題と2次試験の問題をしっかり解くところから始めてみてください。そして、自分なりの回答をする際に、辞書や他の資料を見ないと表現できないという壁にぶつかると思います。そのような表現が登場しそうなトピックの記事を普段から読んでいると、自分が使える表現が増えていきます。

端的にいえば、過去問題を解いて自己分析し、自分に足りない部分を把握する。そして、それを克服するために、必要な思考力とそれを表現する英語力を身につける、というのがオススメです。折角ですから、あらゆる問題について議論できる力を身につけてください!

 

 


○編集部より
英検でよく取り上げられるトピックに関する情報のインプットには、
BBCやCNN、NHK WORLD JAPANなどのニュースサイトを活用するのも効果的です。
 
BBC
 
CNN
 
NHK WORLD JAPAN
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/                 
 
これらのサイトを活用して、批判的思考力と表現力を身につけましょう。

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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