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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.116「ディクテーションで、聞き取り以外のスキルをみがこう!」

最近、ディクテーションという勉強法に挑戦していますが、なかなか聞き取れず苦労しています。それぞれの単語は聞き取れるのですが、英文で一度に流れてくると、手が止まってしまいます。実際に書いてみると、英文はExpressingとなっているのに、Expressと書いてしまっていたりします。今はTOEICの単語帳の例文の音声を元に取り組んでいるのですが、レベルが高過ぎるのでしょうか。


 

複数のスキルが求められるディクテーション

ディクテーションは聞こえてくるスピードつまり話すスピードと書くスピードがあまりに違うこともあり、レベルのかなり高い学習方法です。聞いた英文を書き取るためには、個々の英単語を聞き取るスキル、単語と単語の繋ぎ目を判別するスキル、聞こえてこない部分を補う文法知識など多くのスキルが要求されます。求められるスキルは様々ですが、どれも英語力アップに不可欠なスキルなので、簡単な英語を使用した教材を使って練習していきましょう。

まずは個々の単語を聞き取るスキルです。とくに日本語にはない子音や母音が含まれている単語を聞き取るのはかなり難しくなります。たとえば、/l/も/r/も日本語にはないので、lightと言ったのか、rightと言ったのか判断するのは、発音だけに頼ると難しくなります。これには時間がかかりますが、いつも音の違いに注目しながら聞き取り練習を続けると徐々に聞き分けられるようになります。

また、日本語には英語をカタカナにした外来語が相当数ありますが、その外来語と英語とではかなり発音が違うため、聞き取れないことがよくあります。まず、音節と拍の違いです。

英単語は音節で成り立っていて、たとえばstrongという単語は1音節の単語となるので、一拍で発音されます。しかし、これをカタカナにするとストロングと言うように、5拍になってしまうので、この拍の数の差が聞き取りの妨げになることも多々あります。

この音節と拍に関連することで、もう一点注意が必要なのは、強弱から作られるリズムです。2音節以上ある英単語は、強く発音される音節と弱く発音される音節に分けられます。その強弱のパターンが、カタカナとは異なると聞き取りが難しくなります。たとえば、日本語で聞き馴染みのあるはずのオレンジという単語もOが強くrangeが弱いので、英語の発音を知らないと上手く聞こえてきません。

もちろん、ディクテーションで必要とされるスキルは単語レベルの聞き取りだけではありません。ところが、聞き取るのが文になると、実は内容を理解することは比較的易しくなります。文脈があることで、すでに聞き取れる音の情報と、まだ聞き取ることができない情報を結びつけて、内容理解を促してくれます。たとえば、

Mike ------- his client yesterday, but she wasn’t in.

(Mikeは昨日クライアントに-------したが、彼女はいなかった)

というように空欄部分が聞こえなかったとします。でも残りの情報から、Mikeがクライアントにしたのは、visitedかcalledかというように可能性が絞られてきます。このように、英文を音情報だけでなく、他の情報を基に正確に推測するスキルも重要になってきます。

 

音のつながりを知り、単語を聞き分ける!

さらに、ディクテーションをする場合大きな妨げとなる大きな要因は音のつがなりです。知っている単語ばかりが使われている英文でも、ナチュラルスピードでは、単語と単語を区切ることなく話すので、その区切り目を区別するのは簡単ではありません。たとえば、

The tall lady spoke Korean.

(その長身の女性は韓国語を話した)

という文では、tallの/l/とladyの/l/は/l/を一度しか発音しませんし、spokeの/k/とKoreanの/k/も一度しか発音しないため、taladyやspokoreanのように一つの単語のように聞こえてきます。書き言葉ではスペースがあるので、単語と単語の区切り目を区別するのは難しくありませんが、聞き取りでこれをするのには、単語の知識、音のつながりの知識が必要になります。ディクテーションを正確に行うには、このような音のつがなりの学習が有効になりますし、後にリスニング力の向上に大きく繋がるので、ディクテーション用の教材や発音の教材などを利用して、音のつながりの学習することをオススメします。

 

聞き取りにくい弱勢は、文法知識でカバーしよう!

最後にディクテーションで最も大きな妨げとなるのは弱勢です。英語には強弱のあることは先に述べましたが、強勢部分は、内容を伝えるのに重要な部分なので、比較的聞き取り易いはずです。逆にいくら練習を重ねてもなかなか聞き取れるようにならないのが弱勢、つまり弱く発音される部分です。これは、文中で、重要な意味を持たない語句なので、通常はっきり発音されません。たとえば、

Cathy heard about the news ------- the train.

の空欄部分に入る言葉が、inと言っているのかonと言っているのか分からないことが多々あります。弱勢の母音は/ə/という母音に置き換えられて発音されていることが頻繁にあり、inもonも/ən/と発音されているため、これを音で聞き分けるのはほぼ不可能です。ディクテーションでこの空欄を正確に埋めるには、音を聞き取って書き取るというよりは、広めの空間がある乗り物に乗る場合には、一般的にonが使われるので、ここにはonが入るというような文法的な知識を使って空欄を補う方が現実的です。

リスニングをする際、初級者は音情報に頼り過ぎる傾向にあり、どうしても聞こえてきた情報だけに頼って内容を理解しようとしてしまいがちです。レベルが上がるにつれて、他の情報や、文法知識などを使って、聞こえてこない部分の情報を正確に埋めることが可能になります。今の時点で、ディクテーションして全文を正確に書き取れないことは何も不思議なことではありませんし、やり方が間違っているわけでもありません。あまりにも上手く書き取れないようであれば、嫌気がさして継続するモチベーションを保てなくなってしまうので、使用する教材のレベルを下げて、ある程度達成感を実感することも重要です。

継続に勝る学習方法はないので、簡単な英語を使用したリスニング教材などを使用して、正確にディクテーションできる成功体験を得ていきましょう。そして、徐々にレベルアップをしてからTOEICのリスニング教材などにチャレンジしていくのはいかがでしょうか。

 


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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