『絵を見る技術』(評者:Booksアイ 茗荷谷店/西田みきさん)
近年、著名な画家の作品が多く来日しており、日々関連書籍が書店を賑やかにしています。
本書『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』が解説するのは、描かれた絵の時代背景や、画家のバックグラウンド、モチーフに隠されたメッセージ…ではなく、絵画の理論的な構造です。
「絵の主役」、「視点の誘導」、「バランスの見方」、「色の根拠」、「構図と比例」、「統一感」。
どれも絵画に必要な要素ですが、なかなか事前知識なく理解できるものではありません。本書は上記6つの観点から絵画を分析し、観察の仕方を優しく解説しています。実際の絵の上に図形を置き解説しているため、パッと見ただけでも分かりやすいです。
特に本書をオススメしたいのは、デザイナーの方です。
名画と呼ばれる、古来より洗練され完成されてきた「見せたいものを見せる」技術は、まさにデザインに求められている技術だと思います。近年専門化されてきたUI/UXデザイナーを始め、多くのデザイナーの鍵になると思います。
もし私がすごい権限を持った偉い人だったら、本書を全ての学校の美術教科書に指定します。そのくらい、整頓された『絵を見る技術』がぎゅっと集約されています。偉い皆様どうぞご検討ください。
今まで美術館に行ってもよく分からなかった方も、ぜひ読んでみて欲しいです。なぜその絵画がそうある必要があるのかが分かり、これからはきっと楽しくなると思います。
観るのも創るのももっと面白く、豊かになる。そんな素敵な一冊です。
西田みきさん
Booksアイ 茗荷谷店 勤務。
お店は小さいけれど、面白くてオススメの本をたくさん集めています。
絵画を専攻したりデザインの仕事をしたりしてきました。