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にしまりちゃん 龍神道を行く

龍神様と動物たちの相性?

鳳凰と龍の関係

私は無類の動物好きで、その昔、「ムツゴロウ王国で働きたい」とムツゴロウさんに会いに行ったことがある。

とにかくどんな動物も好きすぎて、道で動物たちに会おうものなら、なかなかそこから動けない。

かくいう私は、ずっとセキセイインコと暮らしているのだが、「動物ほど魂がピュアで美しい存在はないだろう」と思っている。

 

そんな動物好きが高じて、龍とご縁がある動物や相性がいい動物を調べ始めたのは、もうずっと昔のこと。

その中でも代表的なものを、私は時折、龍の絵の中に登場させている。

 

神社や仏閣で、また中国の文献で、龍と鳳凰が共に描かれているのを見たことがある人は多いと思う。

私は昔からこのルーツを知りたくて、台湾に行った時に、龍がたくさんいることで有名な龍山寺(ロンサンスー)で取材をしてみた。

 

龍と鳳凰が幸運の象徴と言われるのは、ずっと昔から「天と地をつなぐもの」として、天には龍が、地には鳳凰(時に孔雀の場合もある)が存在し、ひとつの宇宙を作ると考えられていたことに由来するそうだ。

「つまりは陰陽の法則と同じだな」と、私は納得した。

どっちが欠けてもいけない、ふたつでひとつ。

 

仏教の本にも龍と鳳凰について記されており、共に描くことで、「至福」、「吉祥」、「長久」を表現する。

ほかにも興味深い言葉があり、「龍鳳呈祥」とは、龍と鳳凰がいっぺんに現れたくらい、普通では考えられないような繁栄のこと。

「人中龍鳳」とは、人間の間に龍と鳳凰がいるかのような、形容しがたいほど優れた才能のある人のこと、を指している。

 

令和の虎と龍は共に闘う

ところでまもなく年が明けるが、今年は五黄で寅の年だった。

「激しくさまざまなことが起こりやすく、世界的な波乱や災害が多い」といわれる年なのだが、まさにその通り、戦争がはじまり、様々なことが起こり、波乱が多い年だ。

 

私が寅年であることは関係なく虎が大好きなので、時折、虎の絵を描く。

とりわけ今年は、龍と虎の絵をよく描いた。

 

「龍と虎の絵」というと、私は狩野派の龍虎図屏風の絵が大好きで、展覧会があるたびにこの絵を見るためだけに予定を詰め込んでしまう。

描かれた当時、龍虎はとにかく「闘い合う相手」。

「雲は竜に従い、風は虎に従う」という言葉さえ残っているくらいだから、互いにライバルだったのが垣間見える。

 

睨み合う屏風絵を見ながら、私は思った。

いや、時は令和。時代は変わった。

「そこが闘ってる場合ではない」、と。

龍も虎も互いに力を補い合い、どんどん攻めていく協力者になるべきだ、と。

 

そこで今年何点か描いたのは、「お互いに全力でいこう!」という協業の龍虎。

まさに、「令和の龍虎は共にいきます」である。

ちなみに龍虎の絵は、とある企業の社長にとても気に入られ、私の理想と同じく「今はいろんなトップ同士手を取り合い、どんどん世界を変えていこうと思う」と連絡をいただいた。

 

鳥と龍の思いがけない関係

 

私は無類の鳥好きでもあって、小さい頃からずっと家には小鳥がいた。

そして今も、3羽のセキセイインコと暮らしている。

 

龍と鳥の関係性がわかる文献を探してもこれといって出てこないので、全く独自の見解だけれど、私が見る龍の夢にはもれなく、不思議な色の小鳥がついてくる。

龍の横に鮮やかな小鳥たちが自由に飛んでいて、その夢を見て目覚めた朝は、とても幸せな気持ちに満ちている。

その夢を一年に数回は見てきたので、小鳥と一緒に龍の絵を描くことが多くなった。

 

龍は私にとって、水面を泳ぐというより空を飛ぶ存在。水の中でも飛んでいる、という感覚。

私が神社仏閣や空を見上げた時に見る龍はまさに、飛び回っている、のだ。

これはもう鳥と同じ感覚で、翼もないのに飛ぶという不思議。

 

理屈抜きで、龍と鳥にはとてもご縁があるのではないかと思っていた時、風水に詳しい友人から、とても面白い話を聞いた。

龍と酉(鳥)は相性がよくて、「酉年の人は龍神様のお守りを持ってると、さらに運気が上がっていくんだよ」、と。

その時、「あ、やっぱり!」と目から鱗だった。

私の見かける龍はまさに、鳥たちと共に温かいエネルギーを発しながら飛んでいる。

 

龍はそもそも動物パーツの賜物

そもそも中国の文献に、「龍の体の角は鹿、頭はらくだ、眼は鬼、耳は牛、うなじは蛇、腹は蜃(しん:想像上の生物)、鱗は魚、爪は鷹、掌は虎」というものがあり、これを読んでから描くと確かにその通り、と思うことがある。

何回絵を描いてもいろんな動物が入ってくるのだ。

 

もちろん私は直感系の画家で、描写画家ではないので、私が描く龍でそれらを感じることはないと思う。

しかし描く過程で自分の中の意識が飛んでいても、あとで細かいテクスチャーに筆を入れる時、「あ、ここは牛だな…この辺は鷹だし…」などなど納得しながら描いていて、そのつど脳内では動物が動いている。

 

また、私が鳥好きだからというのも関係しているかもしれないが、描きながら、「あ、このパーツはいつも接している何かに似ている」と気づくことがある。

ふと肩に乗ってきたインコに目を向けると、足が、足の鱗的な柄が、まさに龍のそれなのだ。

「あ、キミは私の絵の龍さんにもいたんだね」と、思わずインコに声をかけたりする。

 

実にアーティスト的な目線だが、感覚としては、「龍の中にたくさんの動物たちを見て、命を見て、さらに宇宙を見ている」と言えば、わかりやすいだろうか。

 

ニューヨークの最初の顧客DRAGONワンちゃん

 

そういえば、私が初めてニューヨークで個展を開催したのは2016年、チェルシー地区でのこと。

私の絵の最初のお客様は、ニュージャージー州に住むTOM。

彼は、私の龍の絵を見た瞬間、叫んだ。

「おお!これはうちの犬だ!彼女だ!」

 

「え?あなたの家の女の子?これは犬ではなくて龍ですよ」と答えると、TOMは大爆笑して言った。

「わかってるさ、だってほら、これを見て!」

見せてくれたスマホの写真には、3歳の女の子のワンちゃんが。

 

なんと首からかけているタグには、Dragponという名前が掘ってある。

そう、このワンちゃんの名前はDragpon、まさに龍の顔をした犬だった。

 

それだけではなく、時々、「MARIさんの絵をじっと見ていると、亡くなったうちのワンコに似ているんです」というメッセージをいただく。

私はどんな動物ももれなく大好きで、特にワンちゃんは、セントラルパークに入り浸って見ているくらい好きなのだが、「まさか龍の中に犬を見つけてくれる方がいるとは」と、ちょっと嬉しくなった。

いや、もしかしたら私の動物愛こそが、私が描く龍に映し出されているのかもしれない。

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著者略歴

  1. 西村 麻里

    コピーライター/クリエイティブディレクター/アーティスト
    熊本生まれ。
    国内広告代理店、外資広告代理店のコピーライター・CMプランナー・クリエイティブディレクターを経て、MARI NISHIMURA INC. を設立。
    龍を描くアーティストとして、ニューヨーク、東京をベースにアーティスト活動を展開し、ロサンゼルス、ベルリン、ロンドン、カンヌ、パリなどでも個展を開催。
    2020年公開の映画「響 HIBIKI」に画家として出演。
    著書に『THE AURA』『龍スイッチはじめよう』(ともにWAVE出版)がある。

    ●国内賞
    TCC賞新人賞、TCC審査委員長賞/ADC賞シルバー(RA-CM)/ブロンズ(TV−CM)/電通賞最優秀賞(TV-CM)/FCC賞OCC賞CCN賞/朝日広告賞 ほか多数
    ●海外賞
    CLIO賞シルバー/one show ブロンズ/SPIKS ASIA ブロンズ/epica award paris シルバー/one show メリット賞/D&AD インブック受賞

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