【春のK-POPコラム】「推しごと」のグローカライゼーション(仁科えい/『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』担当編集)
『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』では、K-POPシステムのグローカライゼーションに触れられていたが、K-POPの「ファン活動」もいま同様に世界に輸出され、現地のアレンジが加えられている。
デジタルサイネージが駅に多い韓国では地下鉄広告が「サポート広告」の覇権を握っているが、タイではトゥクトゥクの座席の背面が多くのK-POPアイドルの広告でジャックされている。ほかにも、紙幣を折ったり曲げたりして花束のようにかたどった「マネーブーケ」も、タイのファンからは頻繁に推しに贈られている。韓国では両親に、中国では恋人に、愛情を込めて贈られることはあるが、アイドルへの直接の献金に抵抗がないのは、仏教の国で寺院への「お布施」が日常的に行なわれるタイならでは。黄色・紫・赤・青・緑と「バーツ」のカラバリが豊富なのも、タイで次々と綺麗で鮮やかな「金束」が生まれるゆえんかもしれない。
最近では、中国でしか見ない応援方法もある。日本と違って、軍関連施設・飛行場周辺以外であればドローンを飛ばせる中国では、推しの生誕をドローンで祝う「人工花火」はいまや一般的。2020年EXOのメンバーの誕生日には、夜空をキャンバスに610台ものドローンを使って絵や文字が描かれていた。
人海戦術がお得意の中国ならではの、オタクの「推しごと」をサポートするファン組織「バー(吧)」にも驚きは隠せない(当然だが無給)。たとえば某アイドルのバーは、(宝塚の組分けと専科じゃないが)「翻訳組」「美術組」「資源組」「動画組」「詩文組」の5つと、「研修組」に分かれ、総勢50名の大所帯。研修組は昇級試験をパスすることで、正式に配属が決まる。5つの組にはそれぞれ組長がいて、さらにその上に3名の管理者(吧主)がいる。権力を分散するための「三権分立」だそうだ。語学のエキスパートである翻訳組に入るには、各語学試験合格書の提出が必須で、インターンよりも過酷なバーでの経験は履歴書に書けるだろうと強く思う。
世界的なK-POPのムーブメントとともに、ファンによる「推しごと」もK-POP式が韓国を飛び出し、各国固有の社会背景と融合し、現在進行形で新しいカルチャーを生み出している。これからも世界のファンの動きから、目が離せない。
(仁科えい/朝日出版社編集)
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