Q.47「冠詞のおはなし~どうしてSameの前は必ずTheが付くのか?~」、Q.48「英文の意味を素早くつかむ方法」
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むかしからの疑問なのですが、Sameの前は必ずTheが付くと聞きます。これはなぜなのでしょうか?他にも必ずTheをつけなくてはいけない名詞というのが、存在しますが、これは慣例的なものなのでしょうか?どうやって決まるのでしょうか?(孝太郎、27歳、会社員)
話し手と聞き手の共通認識を示すthe
冠詞の用法はかなり複雑で難しいですよね。冠詞の用法だけの専門書があるくらいなので、この用法を系統的にルールとして理解して覚えるのは非常に困難で、私も冠詞に関しては未だに間違えることがあります。幸いなことに、冠詞の間違いはニュアンスが多少変わったり違和感を与えたりするレベルで済みますので、少しずつ身につけていけばいいと思います。
さて、質問にあるsameと一緒に使われるtheについてですが、私も「いつもthe sameとして使う」と教わりましたし、ほぼその通りです。辞書等の説明によると、ビジネス業界ではsameを代名詞としてitのように使う用法があるようです。この場合にはitにtheが付かないように、sameにもtheが付きませんが、稀なので、sameはいつもthe sameとして使うと考えてもいいと思います。
では、sameにいつもtheが付く理由についてですが、冠詞theの用法通りだと考えられます。簡単に説明するため、ここでは数えられる名詞について説明しますが、theを使うケースについては数えられない名詞も同様だと考えてください。
英文の中で名詞を使用するとき、theを使うかa(n)を使うかというのは、話し手が決めます。その基準は、その名詞が、話し手と聞き手の間で共通の物・人を指しているかどうかです。「その本」などと言ったとき、「聞き手が理解できる」と話し手が判断できる場合には、the bookのようにtheを付けます。
このsameという単語は、「同じ〇〇」という意味なので、この単語を使用する場合には、the same 〇〇がどの物・人を指すのか、文脈や状況から聞き手にも明らかだと話し手が判断できると言えます。したがって、sameを使うときには、いつもtheが付いてthe sameとなると考えられます。
この話し手と聞き手の間で共通の物・人を指す場合にtheを付けるというルールが当てはまらない名詞もあります。Japanのような地名、Bill Gatesのような人名、Sydney Airportのような空港名などの固有名詞とEnglishのような言語名には、通常theが付きません。しかし、the United Kingdomのように国名に普通名詞を含んだり、The Philippines のように複数形を用いる場合、the Louvreのような有名な施設名、the New York Timesのような新聞名などにはtheが付きます。他にもありますが、基本的には話し手と聞き手が共通して何を指しているかわかるものにはtheを付けるのが一般的で、普通名詞や複数形を用いない地名や空港名、そして言語名にはtheを付けないと覚えた方が分かりやすいと思います。
冠詞をマスターするには時間がかかると思いますが、theを付けないケースを学習することをおススメします。名詞の数はあまりにも多いです。学習にあたっては、少しずつコツコツ頑張ってください。
Q.48「英文の意味素早くつかむ方法」
私はきちんと意味が取れているのか不安なので、英語を読む時は一文一文訳しているのですが、大学では心理学部ということもあってか、ゼミの先生から渡される資料も英文のものが多く、予習に時間がかかってしょうがありません。早く読めるようになるコツがあれば知りたいのですが、そんな方法あるでしょうか?正直なところ、英語はあまり得意ではありません。T O E I Cは400点台です。(まな、20歳、大学生)
スラッシュリーディングをマスターする
日本人にとって英文を読むのに時間を要する理由は、やはり文の構造の違いにあります。これを克服するのが、素早く英文を読めるようになる近道です。その文の構造の違いを克服するのには、いくつか実践しなければならないことがあります。
まずとても大事なことは、文単位では日本語に訳さないということです。文単位というのは、最初からピリオドまでを1文とするということで、例えば、
Social networking services are used widely in the world.
というのは、1文と数えます。これを「ソーシャルネットワーキングサービスは世界で広く使われている。」というように、全文を訳す必要は全くありませんし、語順に大きな違いのある英語を日本語に訳すという作業は時間がかかります。したがって、まず、各文を訳すという作業はやめましょう。
次に、文をいくつかのチャンクに分けるようにしましょう。例えば、
Social networking services / are used / widely / in the world.
のように英文をスラッシュの位置で区切ります。スラッシュ間の意味上の塊のことを一般にチャンクと呼びます。そして、
ソーシャルネットワーキングサービスは / 使われている / 広く / 世界で
のようにチャンク毎に意味を把握していき、後戻りしないで意味を解釈するようにしましょう。これを俗にスラッシュリーディングといいます。
各英文をこのようにスラッシュで区切るには、語彙力、品詞や英文の構造に関する知識が必要になってきます。まずは普段の英語学習の中で、主語、動詞、目的語、補語に分ける練習をしましょう。さらに、それぞれの単語の品詞を言い当てられるようになるまで練習しましょう。最初は辞書を頼りながら、時間のかかる地道な作業ですが、2~3文を使った練習を毎日続けると2週間程度で、ほとんどの品詞を言い当てられるようになります。
主語、動詞などの各チャンクがまだ長い場合には、接続詞の前、関係代名詞の前、前置詞の前で区切るようにすると、チャンクを上手く作れると思います。それを繰り返していけば、英文の構造も理解できるようになり、品詞に関する知識も身につき、そして、意味も分かるようになり、何より、前から順に読み進められるようになり、英文が早く読めるようになります。
少しずつで構わないので、毎日2~3文から、品詞の言い当て、チャンクに区切る練習を続けてみてください。
応援しています。