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S'awesome! ~世界は驚きに満ちている~

春の訪れ~Green on Green on Green!

3月。アメリカでは第二日曜日に全時計を一時間早めサマータイムが始まった。17日は街が緑色に染まるSaint Patrick's Day(聖パトリックの祝日)。アメリカに住んでいた中学生の頃、校内で緑色の服や帽子を身に着けさっそうと風を切る同級生は輝いていた。“I’m Irish.”(私はアイリッシュ)。誇らしげだった。 

日本人のいないアメリカの中学に転校したばかりの私は、日本を全く知らない人の多さに唖然とした。学校の図書館にある一番大きな50センチ四方の分厚い地図帳に小さな丸い本州しかない日本を見て撃沈。日本といえばパールハーバー、侍、忍者。ジャップと呼ばれたこともあった。それでも、日本人の誇りとアイデンティティは大切にした。そんな私もSaint Patrick's Dayには、周りの空気に誘導され緑色の服を着た。緑色を着ないと仲間外れのような居心地の悪さを感じ、着ると何とも言えない連帯感が湧いた。

St. Patrick’s Dayは、ドルイド教が占めていたアイルランドをカトリック教に改宗した聖人Patricius(パトリキウス)の命日(A.D. 461年)、カトリックの祭日、アイルランドの祝祭日です。

聖人パトリキウス(本名Maewyan Succat(推定))は、イギリス西部ウェールズに住むクリスチャンのローマ系イギリス人の家庭に生まれるが、14歳頃アイルランドの賊に奴隷として売られ、北アイルランドで投獄、豚羊飼いをさせられる。彼は信仰心のない自分に罰が与えられたと連日祈り、20歳頃神のお告げで脱走し実家に戻るが、「アイルランドに呼ばれる夢」を見てアイルランドでの伝道を使命と悟る。仏オークセール修道院で12年間神学を学び、司教に叙せられるとアイルランドへ戻り、全土に365の教会や修道院、学校を建て、讃美歌を作曲し、12万人を回心させたと伝えられます。司祭になり名をSaint Patricius (聖パトリキウス)、その後Saint Patrick(聖パトリック)となり、彼の命日がSaint Patrick’s Dayになりました。

聖パトリキウスは布教で「三位一体」の教義を説くのにアイルランド語のシャムロック(shamrock)という「三つ葉のクローバー」(アイルランドの国花)を用いた。当時はシャムロックを身につけてミサに行くのが伝統的な祝い方でしたが、今では首都ダブリンで4、5日間(2019年は14-18日。2020年は13-17日)の盛大なフェスティバルや、世界各地でもパレードやショーが行われ、アイルランド民謡や舞踊が披露されます。


William Murphy / flickr
ダブリンのパレードは3月17日正午から


Miguel Mendez / Wikimedia Commons

パレードが始まったのは、アイルランドではなく、1600年にフロリダ、1737年にボストン、ニューヨークでは1762年から毎年行われています。当時は、イギリスの支配下でアングロサクソン系プロテスタント(WASP)が多数派。反カトリック、反移民の法案が可決され、カトリック教徒のアイルランド人は「酒好きで無知」とひどい差別を受け、低賃金の過酷な労働と栄養不良で短命に。「自分の身分は自分で守る」と労働条件改善を求め、イギリス軍隊にいたアイリッシュ兵隊が結集して行進したのが始まりです。のちにアイルランド系移民は、ニューヨーク市民の25パーセントに増加し、ニューヨークのパレードは世界最大規模です。


Kevin Coles / flickr


Ferran / flickr

ニューヨークのパレードは、午前11時にマンハッタン5番街のEast 44番通りをスタートし、79番通りまで約15万人が行進、約200万人の観客が集まります。2019年は17日が安息日にあたるので、パレードは16日(土)に行われます。

日本でも、東京・表参道、横浜元町、松江、福岡など15都市でパレードやフェスティバルが行われます。参加条件は緑色のものを身に着けること。

3 月16日(土)・17 日(日) 代々木公園
第6回「アイラブアイルランド・フェスティバル
(主催:在日アイルランド商工会議所)

3 月17日(日)1PM~ 
原宿・表参道でアジア最大規模の「セント・パトリックス・デー・パレード東京
(主催:アイリッシュ・ネットワーク・ジャパン東京)

この日に緑の衣服を身に着けるのは、緑はアイルランドのカトリック教徒の象徴で、アイルランド系アメリカ人が母国のカトリック信仰を緑の色で示す風習から。アイルランド伝説のレプリカーン(leprechaun)という緑色の帽子を被った赤ひげの小人の妖精が「緑色を身に着けていないとつねる」、「緑色の帽子を被ると幸福になる」といった伝承もあり、緑色を身に着けるのがお約束です。


Jean-no / Wikimedia Commons

アイルランドは「エメラルド色の島」と呼ばれ、この日は世界各地がエメラルドグリーンに染まります。度肝を抜かされるのはシカゴ川。1962年から蛍光色素のフルオレセインで染色。現在使用する成分は非公開ですが無害とか。


VasenkaPhotography   / flickr

 

くーさん  / Wikimedia Commons
2007年の聖パトリックデーは、アイルランドと日本の外交関係樹立50周年を記念して、東京タワーは緑色にライトアップされた

アメリカのSt. Patrick’s Dayの定番メニューは、過酷な時代の御馳走だった「コンビーフとキャベツの煮物」に「グリーンビール」。パブやレストランでは着色料やリキュール入りのグリーンビールがメニューに並びます。


VasenkaPhotography   / flickr

実は、グリーンビールは自宅でも簡単に作れます。

グリーンビールの作り方

材料
色が薄めのビール       200ml
ブルーキュラソーリキュール  約15-30ml

①ビールをグラスに注ぎます。
②ブルーキュラソーを適量(約15~30ml)少しずつビールに加えます。
色がエメラルドグリーンに変わってきたら混ぜ合わせ、少しずつブルーキュラソーを足しお好みの色になったらできあがりです。
注意:ブルーキュラソーは多く入れるとエメラルドグリーンがブルーに戻るので、少しずつ変化する色の様子を見ながら加えてください。

ミントやメロンリキュールでも代用できますが、より甘くなります。

着色料やリキュールが苦手な方は、オーガニック食材を使ったグリーンビールはいかがでしょう。色はオリーブグリーンになりますが、簡単にすぐできます。

オーガニック・グリーンビールの作り方

材料
ビール       100ml
有機粉末緑茶/抹茶 小さじ1/3~1/2
ぬるま湯      小さじ2~3

①有機粉末緑茶または抹茶を別の器に入れ、ぬるま湯で溶いておきます。ダマができたらスパチュラで押しつけるようにつぶし、なめらかになるまでよく混ぜてからグラスに入れます。
②グラスにビールを少しずつ注いでよく混ぜ合わせ、きれいに溶けたらできあがり!抹茶/緑茶の風味が残るので、嫌いな方は入れる量を減らしてください。
混ぜる粉末は、スーパーフードといわれるスピルリナ、クロロフィル、大麦パウダー、小麦若葉のパウダーなどでも同じ要領で作れます。

お酒が飲めない人には、色の薄いノンアルコールビールやお好みの炭酸飲料でも代用できます。

炭酸抜きの飲料に緑色のフルーツを入れてミキサーにかければグリーンスムージーに、シロップを入れて甘くもできます。スライスしたライムやキウイ、ミントなどを添えるのもお勧めです。

 

St. Patrick’s Dayは A day for everyone to be Irish!(みんなアイリッシュになる日)を口実に、踊って、食べて、飲む!不思議な連帯感が生まれる日・・・。You look green!(顔色悪いよ!) と言われないようにね。      

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著者略歴

  1. 松田奈利子

    Felicity 教育開発研究所代表。立教大学英語講師(元准教授)。コロンビア大学大学院Teachers College卒。国際教育開発学・英語教授法修士号取得。専門:英語教育、英語教授法、異文化コミュニケーション。オーガニック料理研究、バラ栽培。シンガーソングライター。元CNNニュースキャスター。主著:「テレビで留学!ニューヨーク大学英語講座」(NHK出版)、「モーツァルト英会話」(朝日新聞社)、ヒップホップ・チャンツ(研究社)等。

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