平成最後の復活祭 ~Happy Easter!
平成最後の卯月。華やかに賑わったお花見は桜流しで終宴を迎え、春色の卵やウサギの装飾品が店先に並ぶ。日本もイースター(復活祭)を祝う人が増えてきた。
復活祭とは、世界の約23億人が信仰するキリスト教の最古、最大で最重要な祭日。エルサレムで十字架にかけられ亡くなったイエス・キリストが、生前に予告したとおり死後3日目に復活したことを祝う、クリスマスより重要な日です。
復活祭が行われるのは「春分の日以降の最初の満月の後の日曜日」で、2019年は西方教会(ローマ・カトリック、プロテスタント等)が4月21日、東方教会(ギリシャ・ロシア正教等)は4月28日に行われます。(移動祝日であるため2020年は4月12日、4月19日)
英語のEasterは北欧神話の「春の女神エオストレ(Eostre)」が由来といわれる。キリスト教伝播により北欧の「女神の祭り=春祭り」は異教とされたが、民衆は春祭りを失うことを拒絶し、「キリストの復活祭」に形を変えて残ったという説がある。つまり、復活祭の起源はキリスト教の母体のユダヤ教と北欧神話の「春祭り」と思われます。
イースター・エッグ(Easter egg)やウサギ(bunny)は北欧の春祭りの名残で、卵は「生命のはじまり」、ウサギは多産なことから「繁栄と豊穣」のシンボル。我が家でもアメリカにいた頃は、卵の殻の上下に針で穴を開け強く息を吹いて中身を出し、よく洗って乾燥させた卵の殻に絵付けして友人とプレゼントしあいました。繊細に描いたイースター・エッグは厳粛な気持ちと浮き浮き感を運んでくれます。
写真:Jan Kamenicek/Wikimedia Commons
NYの復活祭のお楽しみは、マンハッタン5番街のイースターパレード&ボンネットフェスティバル(Easter Parade and Easter Bonnet Festival)。他の6大パレードと異なり、こちらは参加型ストリートフェス。イースターをモチーフに趣向を凝らしたボンネット(帽子)を身に着け、小鳥や犬などペットも参加できる。1880年代の復活祭に信者たちが一張羅の晴れ着をまとい五番街のセントパトリック大聖堂(St. Patrick's Cathedral)を花で飾った慣習が始まりです。今では宗教色は薄れ、50/51通りの大聖堂を中心に49丁目から57丁目にドレスアップした人が大集合。2019年は復活祭当日の4月21日(日)午前10時から午後4時まで行われます。
写真:annulla/flickr
写真:Guru Sno Studios flickr
復活祭当日は世界各地で盛大に祝いますが、敬虔な信徒は復活祭の40日前(日曜除く)から四旬節(Lent)と呼ぶ節制生活をします。イエスは40日間荒野で断食したと聖書にあり、その苦しみを分かち合い、祝宴を謹み、肉、卵、乳製品、酒や油を断ち、質素な食事や断食をし、節約した分を慈善活動に活用します。テレビやインターネット、SNSを自粛する人もいます。
復活祭前の1週間は聖週間、受難週間(Holy Week; Passion Week《注: Passionは「情熱」ではなく「受難」の意》)と呼ばれ、特に重要なのが聖木曜日の日没から始まる「聖なる三日間」(Easter Triduum)。その流れをわかりやすく表にまとめてみました。
*スマホをお使いの場合、表を右側にスクロールしていただくことで、表をすべてご覧いただけます。
2019年 最も重要な「聖なる3日間」は聖木曜(日没)から始まる | ||||
日付 | 教会の暦 | 英語表記 | 聖書の出来事 |
教会・信徒 |
4月18日(木) |
聖木曜日 洗足木曜日 |
Holy Thursday Maundy Thursday |
ユダに裏切られる。 イエスはへりくだりの行いとして12人の使徒の足を洗い、最後の晩餐を する。 |
最後の晩餐の式。 イエスがしたようにパンと葡萄酒を 食す。 |
19日(金) |
聖金曜日 受難日 受苦日 |
Good Friday Holy Friday (Black Friday) |
イエスは十字架にかけられ午後3時に息絶え、埋葬された。 | 十字架への敬意を表す礼拝。節制・ 断食・苦行をしイエスの受難(死)を想う(喪に服す)。 |
20日(土) 安息日 |
聖土曜日 復活徹夜祭 |
Holy Saturday Easter Vigil |
(安息日にはユダヤ人は労働しない習慣から)イエスの遺骸は墓に安置されたまま。 | 復活のシンボルの大きなロウソクを掲げて行列行進し、イエスの受難を想う (喪に服す)。 |
21日(日) 過越祭 |
復活祭 |
Easter Jewish Passover |
早朝にイエスは甦り、 弟子達の前に現れる。 |
夜明けとともに喪が明け、教会の鐘が鳴り盛大に祝う。 |
(c)松田奈利子
信仰深いカトリック教徒が大半を占めるフィリピンでは、聖金曜日(受難の日)にイエスの十字架での苦しみを想い、キリスト同様の苦行をする人もいる。フィリピン首都のマニラ東部マンダルイヨンでは自ら鞭などで体を傷つけ、イエスがされたように手足に釘を打って十字架にはりつけになる人もいます。
写真:istolethetv/flickr
スペイン・アンダルシア地方のセビリアやマラガでは、聖金曜日にキリストやマリア像を乗せた神輿(6トン近いのもある)や、カピロテ(Capirote)という尖った円錐形の帽子を被った行列が行進する。中世では紙のカピロテを罪人に被せ懺悔させたことから、自分の罪を悔い改める人がカピロテを被り覆面をして行進します。
写真:MarinGarcia/Wikimedia Commons
写真:Hernán Piñera/flickr
中米グアテマラでは、聖週間にイエス像をのせた神輿を担ぐ聖行列が何台も練り歩く。人々はその度に朝方までかけて花や果物、彩色したおがくず等を道に敷き、聖行列のための美しい絨毯(アルフォンブラ)を作る。2キロ以上もある「世界一長い絨毯」としてギネス登録されました。
写真:GuateRob/Wikimedia Commons
イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリア、フィリピンなどのキリスト教圏では、復活祭前の金曜から月曜日(振替休日)は4連休。多くの人が帰省し飛行機などの交通機関は大混雑します。アメリカは祝日(Federal holiday)ではないですが、ハワイやニュージャージーなど州により連休。公共・商業施設などは休館や時間変更もあるので要注意です。
復活祭は、世界中の多くの人が様々な形でイエスの苦しみを想い、イエスの復活を祝う日。イエスの教えの根本は、「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」(ルカ6:31)。全ての人がそうなれば、世界はどう変わるでしょう。
「平成」の日本は、悲嘆に暮れた大災害にとどまらず、倫理観を欠いた事件が多かった。
間もなく幕が開く「令和」は、皆が周りの人や万物を大切にする日本社会、”East star”(東方の星=太陽)になってほしいと祈っています。Happy Easter!