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読んで知る! 英語の言葉の面白さ Mother Gooseの世界へようこそ!

Hey diddle, diddle

 

ナーサリィ・ライムズのそれぞれは、仕分けできます。子守歌、数え歌、この二つはすでにこの「あさひてらす」でもやりました。知っておくべきこと、なんて分野もあって、その中に英国のKings and Queensを32行使って、ノルマン系フランス人の王様William一世(1066年)から始まり、現在のウインザー家のエリザベス女王にいたる名前を、覚えやすいように羅列しているだけなんです。今の女王さまが入っているのですから、かなり新しいナーサリィ・ライムズですよね。面白おかしく特徴をつかんで紹介しています。歴史、人々、季節、習慣、謎々(前回ひとつやりました)、動物、バラッドや歌もあります。どれもこれも、英語の詩の特徴ともいえるrhyme(韻)を踏んでいます。

NONSENSEの分野もあります。政治の世界や学生運動で(今は言わないかしら)、「ノンセンス!」と言えば、それは「くだらない!」でしょうか。確かにそういう意味もあります。しかし、文学や芸術の世界では、意味が違ってきて、だいたいが、言葉遊び、想像遊びで作り出されるものになります。ノンセンスは、摩訶不思議、滑稽、ある時は不可解、意味不明だってあるというのに、なぜか、面白さを感じるものである!

次にご紹介するのは、ナーサリィ・ライムズの中で、一番に有名なノンセンスなものと言われています。そりゃたくさんの画家たちがノンセンスを絵にしてきて、その多さは際立っていると言えましょう。

 

Hey diddle, diddle
The cat and the fiddle,
The cow jumped over the moon;
The little dog laughed
To see such sport,
And the dish ran away with the spoon.

へーい ディドゥル、ディドゥル、
ネコ と フィドゥル、
メウシが 月を とびこえた。
こんな おふざけ みた
イヌは けらけら わらった、
おさらは スプーンと にげてった。

 

1行目のdiddle [didl] には他の意味もありますが、ここでは、はやし言葉です。「そーら、そらそら」、とか、「えっさか、ほいさか」、とかのように。日本語のはやし言葉や、掛け言葉にはしないで、「音」としました。なぜならば、2行目のfiddleと韻を踏んでいるからです。

Heyは、呼びかけです。cat[cat]のcが、下の行のcowを引き出しています。キャットと発音しないでください、そうでないとcow[kau]と韻を踏まない!

2行目のfiddle [fidl] 実際にはviolinと同じ楽器ですが、民族音楽や民謡などの演奏に使われるときには、フィドゥルです。日本では「フィドル」と言われます。確かに言いやすい。アイルランドやスコットランドの民話やフォークソングには、必ずフィドルが登場します。アイルランドでは特にパブ(アメリカではバーといいます)に行くと、フィドル演奏が聴けるでしょう。ネコがフィドゥルを弾く、という絵がたくさんあります。The cat and the fiddleという言葉には演奏するはありませんが、それでも楽器を手にしているネコを想像するのです。

3行目のcowはウシでも牝牛のこと。ついでに、牡牛は、bull とかoxです。bullのついたイヌがいますね、oxのついた大学もありますね。moonは最後のspoonと韻を踏んで。

4行目のlittle dogはコイヌ(子犬)ではありません。そう訳している人もいますが、形を言っています。小さい、低い、小柄などの大きさを言っているのです。youngの意味もあります。人につけると、little girl とか、little boyと、愛らしさだったり、快さをあらわしたりします。ここの訳は、小型犬になるので、大きさは訳しませんでした。若いイヌでもあり・・・

laugh 笑うのにも英語はいくつもありますが、laughだけは声にだして笑います。ですから声をいれてみました。いろんなイヌっぽい笑い方をさせるといいのですが。がふふとわらう、ウホンウホンとわらう、など。作ってみてください。laughedの-edはtと発音して、下の行のsportのtと韻を踏みます。4行目と5行目は、訳の順序を変えました。

5行目のsportは、きっと今までに考えたこともない意味ではありませんか?スポーツ、体操、体育ではないんです。冗談、気晴らし、娯楽、お楽しみ、おふざけ、からかいの意味になります。私は、おふざけにしてみました。ネコが楽器を演奏するか、牝牛が月を飛び越えるか、とイヌは、なんてこった、このおふざけは、と笑ったのではないかなあ・・・

run away with  逃げ出す(何かを持って、誰かと)、駆け落ちする。run away from はどこからか逃げてく、などになります。withか fromで意味も状況も違ってきます。

 

印刷物にHey diddle….が載ったのは1765年ごろとあります。100年以上あとの19世紀後半、1870年代には、英米の国で大発見や大発明がありました。そのひとつは電話機で、アレグザンダー・グレアム・ベル(スコットランド人)の発明です。アメリカのフィラデルフィア博覧会でベルが電話の使い方のショーを行った時、それを見たサー・ウイリアム・トムスン(物理学者で科学機器の発明をしたのちのケルヴィン卿)は、電話機一式を買い求めます。それを新聞紙にくるんでアメリカから大西洋を渡りスコットランドに帰国すると、聴衆の前で電話を使って見せました、その時に電話に向かって言った言葉は「Hey, diddle, diddle, the cat and fiddle」、すると向こう側から答える声がかえってきました、「さあ、こう言っていますよ、the cow jumped over the moon,」聴衆は大喜びでした。この話はAsa Briggsの作品‘Victorian Things’にあります。

                       (文と訳=:みむら・みちこ) 

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著者略歴

  1. みむら・みちこ

    文芸翻訳家。訳書に『動物と分かちあう人生』(河出書房新社)『ちびフクロウのぼうけん』(福音館書店)など、共訳書に『なにがはじまるの?』『あかんぼ大作戦』(共に河出書房新社)など多数。A.A.ミルンの評論あり。スコットランドに詳しい。翻訳の専門校フェロー・アカデミーの講師を務める。
    → https://www.fellow-academy.com/fellow/pages/teacher/mimura_michiko.jsp

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