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読んで知る! 英語の言葉の面白さ Mother Gooseの世界へようこそ!

Sing a Song of Sixpence

今回のマザー・グースはSing a Song of Sixpenceです。その前に……

マザー・グースって何?

マザー・グースの言葉は、昔話や言い伝え、労働する人たち一般人から王室の人たち、歴史の中のさまざまな事象、日常生活などから生まれてきました。大人のものが子どもたちのものにもなっていて、幼子の時代に親やきょうだい、近所の人たち、幼稚園や学校の先生、そういう人たちから口伝えで覚えているのが多いのです。意味を知る前にすでに口ずさんでいるのが、マザー・グースの歌や言葉と言えるでしょう。小さな時から知っているあの歌や言葉を、たくさんの大人が研究している、まるで、シェイクスピアの作品を調べるみたいに、です。

マザー・グースの意味は?

「マザー・グース」の意味は何?と思う人たちもいらっしゃるでしょうね。今さらですが、書いておいたほうがいいかと考えました。子どもたちが知るように、なんとなく覚えていくのがいいかと、思っていたのでしたが。

18世紀の中ごろのことです。イギリスの隣の国フランスにシャルル・ペローという作家がいて、子供向けに昔話をまとめた本を出版しました。本の題名は、「鵞鳥おばさんの語る物語」という意味でした。それがイギリスで英語に翻訳されて『マザー・グースのお話』となり出版されました(1729年)。この本がとても良く売れて、出版社はその人気にあやかり、マザー・グースの名前をいただき、Nursery Rhymes(わらべうた、童謡)を集めた本の題名に使ったというわけです。初めて刊行されたのは、1765年、“Mother Goose’s Melody, or sonnets for the Cradle”という本になりました。

 そういうことから、昔は英国でも今はNursery Rhymesと言っていますが、「マザー・グースのわらべうた」と呼んでいた時もありました。その後その名称はアメリカで使われるようになったのです。

             

      15世紀には、歌われていたSing a Song of Six pence?

               Sing a song of sixpence
               A pocket full of rye;
               Four and Twenty blackbirds,
               Baked in a Pie.

               六ペンスの うた うたおうよ
               ライムギ ふくろに いっぱい
               二十四羽の クロウタドリ、
               パイにいれて やかれたよ

               When the pie was opened,
               The birds began to sing;
               Was not that a dainty dish,
               To set before the king?

               パイ きって あけられて
               クロウタドリ うたいだし
               なんておいしい ごちそうじゃないか
               おうさまに さしあげるのに?

               The king was in his counting-house,
               Counting out his money;
               The queen was in the parlour
               Eating bread and honey

               おうさま きんこしつに おりました
               おかね かぞえて おりまして
               おうひさま ちゃのまに おりました       
               ハチミツつけた パンたべて

               The maid was in the garden,
               Hanging out the clothes,
               There came a little blackbird,
               And snapped off her nose.

               ひとりのメイド にわにいた、
               せんたくもの ほしていた
               いちわの クロウタドリ やってきて
               メイドのはな ぱちんと とった

               They sent for the king
               Who sewed it on again,
               And he sewed it on so neatly,
               The seam was never seen.

                おうさまの おいしゃさま よばれると
                メイドのはな ぬいました
                とっても きれいに ぬいました
                ぬいめは まったく わからなかった

                   

ここまでが一番知られている5段落の歌で、Happy ending になります。もっと長いのもあります。この言葉に、スコットランドの古いダンス曲Calder Fairが使われて歌われるようになりました。明るくて軽い曲で、たしかに体がうきうきと踊りたくなります。どんな曲か Youtube など確かめてみてください。そこには、Calder Fair、you may know it as ‘Sing a Song of Sixpence’と出てくるでしょう。古いダンス曲が今に残っているのは、このマザー・グースのおかげですね。

               

シェイクスピアも知っていた「六ペンスの歌をうたおう」?

六ペンスの歌をうたえ、どういうことかしら?六ペンスは貨幣の価値を表します。この硬貨は1551年のエドワード六世の時に英国で始まった貨幣で、初めは純粋の銀で作られました。ヘンリー八世(王位1509―47)の時代、1540年代には硬貨の銀の質が下がってきて、ついに1947年以降は白銅貨となっていきます。六ペンスというと、質がだんだん下がっていき、安っぽいの意味も辞書にはあるのです。

               

ところで、シェイクスピアの作品で、喜劇の傑作と言われる'Twelfth Night'『十二夜』の中に六ペンスの言葉がでてきます。道化に歌ってくれと言う場面ですが、Come on, there is sixpence for you. Let’s have a song. 小津次郎さんの訳では、「やったりやったり、さ、六ペンスだ。歌をやらかせ」一曲が六ペンスです。この作品には歌が多くでてきます、道化はチップに六ペンスをいただくのでした。このコラムにたびたび登場する、ナーサリィ・ライムズの収集家であり研究家で第一人者のアイオナ&ピーター・オピィ夫妻の言葉に、「Sing a Song of Sixpence を語るのに、インクをずいぶん使ってしまう」、と言うくらいにいろんな説があります。そしてシェイクスピアはこの歌を知っていたにちがいないと書いています。

16世紀のころには、パイに何かを入れてお客を楽しませることがはやったともいわれているために、この歌は16世紀まで遡れると言われています。そうすると、やっぱりシェイクスピアは知っていた!

ペンのインクが足りなくなるほど、語られるSing a Song of Sixpence

この歌の歌詞は、王様はヘンリィ八世で、王妃はカサリン、メイドはエリザベス一世の母であるアン・ブーリンという説。24の数字は一日を表していて、24時間。またはアルファベットの24文字。24本のローソクとか、または、パイの下に入れる24か所の領地の権利書、パイは貢物・年貢、などなど。(ローマ法王から離婚はならぬ、と言われたヘンリィ八世と、結婚しない第二妃のAnne Boleynとの間に、のちの女王となるエリザベスが誕生。アンは姦通罪で処刑されます)

実際にあった話では、Henry James Pyeと言う詩人が1790年に桂冠詩人として、王室つきの終身任命を受けました。王の前で最初の頌歌を朗誦しましたが、あまりにもおもねったお粗末な詩であったために、すかさずもじり歌が作られた、つまり歌ちゅうにある王様に差し出されるパイは、この詩人のPyeさんのことだというのです。

大人の思惑はなんであっても、子どもたちは楽しくこの歌を絵本で読んだり、歌っているのですから、私たちも、楽しみたいです、裏話を知りながら!

何と言おうとも、ちょっとしたことを知り、楽しもう!

Sing a song of sixpence,sが三つあります、こういうのは、頭がそろっている頭韻です。

Ryeと pye、sing と king, money とhoney, clothesと nose, again とseen。韻を踏んでいます。俳句や短歌のように決まったところがあって、覚えやすく唱えやすく韻が踏まれている、というわけです。

A pocket full of rye の rye はライムギです。このムギで王様のパイを焼くのですが、ライムギがポケットにいっぱい、と訳しますと、読者はポケットをどう想像するでしょうか? ポケットが問題です。その意味については、ひとつ前のところでも触れましたが、服につくポケット以前のポケットは、物をいれる袋のことでしたから。この歌の場合も、袋いっぱいにライムギを6ペンスで買う意味にとらえられます。pocket=bag、穀物を計るsackです。

以上に述べた以外には、英文でわかりにくいところは、ないと想像します。言葉を素直に追って日本語にすることが大事です。過去形ですべて書かれていても、日本語では現在形にしたくなる時があるのですが、これは日本語の特徴と言えます。歌えるようにするには、散文とはだいぶ違い、原文から離れて言葉を変えていく場合があります。

ところで

「アナと雪の女王」、ディズニー・アニメですが、ものすごい数の子どもたちが「ありのままの・・・」という歌を覚えてくちずさんでいました。あの原文はlet it go, let it goでした。歌の訳者の説明によると、6文字ですから6つの日本語の音を当てはめて作る、それが歌を訳すときのやり方だと言うのです。ですから、「あ・り・の・ま・ま・の」になるの でした!「アラジン」のアニメでは、A whole new worldの4文字が が、四つのの音で「じゆうな」になっていました。このやり方で、どうぞSing a Song of Sixpenceの5文字を5音でやりますと、「ろ・く・ぺ・ん・す」で終ってしまう!

アガサ・クリスティは、この歌詞から言葉をいただき、‘A Pocket Full Of Rye’を出版し ました(1953年)。ビートルズのジョンは、Cry and Cry や Cleanup Time に王様と王妃のやることを逆にして、今風の性の役割に逆転させている。王様が台所にいると言う風に。

 

(注:六ペンス硬貨は、もう今はありません。英国の1ポンド=20シリング=12ペンスという貨幣の数え方は1971年に終り、1ポンド=100ペンスの十進法となりました。ところで、六ペンスは時によってデザインが変わっていますが、手に入ればどれも幸運の印としてあるのだそうです)

                          (文・訳=みむら・みちこ)

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