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CNN English Express-編集部が見た等身大のアメリカ

フランク・ロイド・ライトの最高傑作

(前回のおさらい)

◆日本人が旅行先に選ぶアメリカの都市としてはサンフランシスコやニューヨークが人気。けれど、アメリカ人の国内旅行先のテッパンはシカゴであり、その街並みは日本人がイメージする「これぞアメリカ」的な要素にあふれているので、アメリカ好きなら一度は訪れてほしい場所。

◆近代建築を代表する巨匠 フランク・ロイド・ライトは、そのシカゴの建築を語る上で欠かすことのできない人物であり、「シカゴの建築物≒ライト」といっても過言ではない!

◆そんなライト作品の偉大さを体感するため、EE編集部員がその地に乗り込んだ。

 

摩天楼発祥の地、シカゴ

「第3の都市」「Windy City」など、シカゴを形容する言葉はいくつかあります。ちなみに取材に訪れた11月は東京都内の気温が最高15℃前後だったのに対し、シカゴは最高6℃。最高がゼロ℃なんていう日もありました。しかも、「Windy City」の名が表すように、風が強く、外を歩くと顔が痛みます。当然、ホームレスを見かけることは稀です(ここらへんはサンフランシスコと大きく違います)。

今回強調したいのが、この街が「摩天楼発祥の地」であるということです。1871年の大火事により街が焼野原となったものの、その再建の過程でライトをはじめとする優れた建築家たちが集まり、時代の先を行く超高層ビルが次々に建てられたわけです。アメリカ発の建築文化がここから生まれた、と言っていいのでしょう。

 

   

写真: Dice Sales  日本からも多くの写真家が夜景を撮りにこの地を訪れる

 

 

 

シカゴの建築と言えばライト、ライトと言えば日本

フランク・ロイド・ライト(1867年~1959年)は、イリノイ州の隣の(というより北にある)ウィスコンシン州で生まれ育ちましたが、建築家としてのキャリアをスタートさせたのは、ここシカゴです。前述したように、シカゴは建築の街ですから、建築をめぐるツアーが現地にたくさんあります(「建築センター」という、いわば建築の博物館が現地の観光名所になっているくらいです)。どのガイドの方も、ライトを語るときに、「日本」という要素を欠かすことはありません

彼がまだ30歳になる前、シカゴ万博(1893年)において日本が出展した「鳳凰殿」から多大な影響を受け、その後、よほど好きになったんでしょう、実際に日本を訪れました。これが1905年の話です。つまり、その後のライト作品は、日本の建築物からの影響を反映していることになります。それは、東京の旧帝国ホテルの設計にもつながってきますが、この話は後日にしましょう。

そんな日本大好きのライトですが、昨年2019年に再び脚光を浴びることとなります。米国内にある彼の8つの建築群がユネスコの世界遺産に登録されたのです。日本の航空会社が企画したライトの建築物巡りツアーも予約が殺到。ツアーに申し込んでいるのは、女性が多いそうです。

シカゴ周辺では世界遺産に選ばれた8つの建築物のうち、「ロビー邸」、そして「ユニティ・テンプル」の二つが楽しめるだけでなく、自宅兼スタジオの「フランク・ロイド・ライト邸」など、数えきれないほど多くの彼の作品に触れられるのです。

 

 

ロビー邸(Robie House)

中でも、特筆すべき作品が、1909年~1910年にかけて建設されたロビー邸です。Prairie Style(草原様式)という、草原が広がるように水平方向を意識した建築物がライト作品の特徴ですが、このロビー邸はそのスタイルの真骨頂。大きく張り出した屋根は日本の伝統建築から影響を受けており、迫力がある一方で、建物全体が低くおさえられた印象を与え威圧感は感じません。

 

彼のすべての作品に言えることですが、大きな空間にいくつかの機能(例えば応接間など)を持たせようとしたときに、一つひとつを完全に隔てたり、仕切ったりせず、連続性の中に自然と「間」を生み出すーーこの技術が天才的です。そして、自然光を大胆に取り込むので、屋内にいても明るく(撮影しやすい!)、開放的。だけれども外からは丸見えにならない。屋内からは外がよく見えるのに!

 ロビー邸の2階フロアはまさにそれを体現しています。

 

 

照明やステンドグラスにデザインされた幾何学模様も彼の代名詞。床を見るだけでも彼のスタイルが楽しめます。

これから紹介する多くの建築物で見かけることになるでしょう。

 

 

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彼が欲しがった建築哲学と日本の建築文化が融合した最高傑作、ロビー邸。シカゴに訪れた際には、ぜひ見学してみてください。シカゴ中心地から車で20分ほどの距離です。

なお、ライトの建築物の多くはFrank Lloyd Wright Trustが管理しており、知識豊富なガイドによるツアーが用意されているのでおすすめです。

 次回はもう一つの世界遺産である「ユニティ・テンプル」を紹介いたします。

 

[取材協力]

イリノイ州観光局(https://www.enjoyillinois.com/jp/

シカゴ観光局(https://www.choosechicago.com/

 

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