【編集部現地レポート】一般社団法人KIP 知日派国際人育成プログラム
全文は、『CNN ENGLISH EXPRESS』2024年12月号の62~65ページでお読みいただけます。
KIPとは
2008年1月に発足。日本のことを知って発信できる国際人を目指す会員制の討論グループ。
会員は社会問題を自分事として考え、解決策を模索するべく活動を行っている。
また、input ⇔ output の積み重ねを普段から鍛錬し、身につけて初めて、品格ある日本人として真に国際社会に通用するという考えのもと、各種活動に取り組んでいる。
活動内容
フォーラム
Geopolitics of Energy in Japan through a Realist Lens
「リアリズムの視点から見た日本のエネルギー地政学」
講師 Hunter McDonald
太陽光や風力などの自然エネルギー発電所の開発から建設、運営・管理、電力小売事業など、自然エネルギーに関するあらゆる工程をワンストップで手掛けるグローバル企業、自然電力グループ。その韓国のカントリーマネジャーで投資の専門家であるハンター・マクドナルド氏を講師に迎え、「エネルギーと日本」のテーマでフォーラムが開催されました。その模様を一部紹介します。
日本のエネルギー自給率は12%
基本的に全て英語で行われた今回のフォーラム。ハンター氏からまず、日本のエネルギー自給の現状について講義がありました。その中で、日本はエネルギー自給率が約12%と低水準であり、それに伴い世界的なエネルギー価格の変動に対し脆弱であることが紹介されました。
近年ではウクライナ紛争の影響によりエネルギー価格は一層上昇し、エネルギー安全保障が喫緊の課題となっているとのこと。原子力発電の再稼働が進められる一方で、風力や太陽光といった再生可能エネルギーの拡大が求められ、また日本が地熱エネルギーの可能性を大きく秘めた国であることも、今後バランスのとれたエネルギー源確保のために欠かせない重要な視点であることが再確認されました。
エネルギー供給源の多様化が必要
講義の後、参加者各自の視点から、「日本のエネルギー政策のあるべき姿」が論じられました。「エネルギー自給率の低い日本は、原子核融合などのさらなる技術革新を進めなければならない」との意見が出ました。それに対して、「核廃棄物の処理」などの問題点の指摘がありました。日本語でも論じることが難しいテーマであるにもかかわらず、英語で語っている皆さんの姿を見てとても感心しました。
また、「日本に適した地熱エネルギーも持続可能な選択肢であるが、地域の反対や法的制約が障害となっている」「自然エネルギーの推進には政府の支援が不可欠」「交通手段における、電気自動車(EV)の普及促進と充電インフラの整備の必要性」など具体的な視点から問題が論じられました。
多くの意見が出た中で、「日本は急進的な脱原発を目指すのではなく、より現実的に時間をかけてエネルギー供給源の多様化を図るべきだ」との意見は、参加者から多くの一致を見たようでした。
KIP会員様の声
奥秋秀太 さん(Pitzer College 2年)
私がKIPと出会ったのは高校2年生の冬でした。海外大学への進学という目標を持っていた当時の私は、KIPが提供する高校生向けのJACKプログラムの存在を知り、国際人や討論、学際性といったKIPの理念に引かれ申し込みました。
初めて参加したフォーラムのテーマは「理系人材を育成するための教養と専門性」というもので、寡少な知識と経験で戸惑いながらも大学生や社会人の方と討論したことを鮮明に記憶しています。そして今に至るまで、さまざまなKIPのイベントに参加し、貴重な経験を得てきました。多くのKIP会員の方が語られるように、討論する力の向上や多様なバックグラウンドを持つ人との交流、日本や世界の現状を知ることでの価値観の更新など、KIPを通して得られるものは学校では教えられないものが多いです。さらに、研究分野の最先端で働く方や業界を築き上げてきた重鎮の方などからお話しを伺えるのはKIPの魅力のひとつです。
私は今アメリカの大学で学んでいますが、「知日派国際人」というKIPの理念は私の土台になっています。自国のことを知った上で国際的な舞台で活躍するということは、単に外国語が話せたりさまざまな分野を知っていたりするだけでなく、文化の違いを超えた上で創造的な解決策やつながりを見いだしていくという姿勢そのものが問われているように思います。大学の授業内外で討論するときや社会問題について論考するときはその姿勢を大事にしていますし、グローバル化の時代においてそうした考え方は不可欠なものとして今後も扱われていくでしょう。
KIPに在籍してまだ2年半ですが、フォーラムや研修といったプログラムを通して身につけてきた姿勢や思考法などは世界レベルで生きていると実感しています。今後もKIPで培ってきたことを存分に発揮していきたいですし、逆に私がアメリカの地で学んでいることをKIPの活動にも還元していきたいです。
松山和葵 さん(同志社国際高等学校 2年)
kIPは私にとって閉ざされた学校生活と社会を結びつけてくれる架け橋のような存在です。日米両言語で行われるフォーラムはもちろん、レポートの提出やメールでのやりとり等普段の学校生活では経験することのない社会の一般常識を学ばせていただいています。フォーラムでは専門的なテーマが扱われることが多いため毎回知識不足を痛感しますが、学校で抽象的に習った事象の具体例であることが多く、学校での学びを深め、社会のつながりを感じる機会となっています。また、今まで知らなかった分野や職業の方のお話を聞く機会も多く、進路に悩む高校生として将来を幅広い視点から考える機会をいただき本当にありがたいです。
スピーカーの方によるスピーチの後に続く全体討論ではハイレベルな意見が繰り広げられ、大人を前にして意見を言うにはとても勇気が必要です。しかし、KIPでの討論は一般的なディベートとは少し違い、相手の矛盾を指摘することはあっても常に互いを尊重する姿勢が守られています。年齢や経験に差はあっても、フォーラムを通して共に学ぶ仲間であるという意識を参加者の方が共通して持っているため、高校生であっても質問や意見が言いやすい環境が守られています。
フォーラムとは別に、私はプロジェクトという、本来大学生のみが参加できる研究プロジェクトに参加させていただいているのですが、ここでの学びが本当に大きいです。プロジェクトはフォーラムよりも高頻度で開催されるため、メールでのやりとりやレポートの提出も日常的に行うことが求められます。全てのメールをチェックし期限を守ることに慣れることができず、ご迷惑をお掛けしてしまうことが度々あるのですが、社会において絶対求められるスキルであるため、KIPで高校生から訓練を始められて本当に良かったと思います。わからないことを質問させていただくときもKIPの先輩は快く教えてくださり、本当に挑戦し成長する最適な環境だと思います。
KIPフォーラムに参加して 現役学生のみならず、社会人参加者も含めて活発な活動を展開しているKIP。同じ場を共有する皆が頭をフル回転させていることが伝わってきて、取材者側も大いに刺激を受けました。こうした経験を積んだ皆さんが、日本人の国際的な地位向上に必ずや貢献することになるだろうと、期待を高めつつ取材を終えました。 |
KIPの活動についてもっと詳しく知りたい方、お申し込みをご検討の方はこちらをご覧ください