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ドイツに行かなきゃ知らない!? ドイツ語 -Part 1 知ってる? こんなドイツ語―

Folkwang フォルクバング美術館

ドイツ語学習者でも、日常生活では知らない? そんなドイツ語をピックアップして、Part毎に10回ずつご紹介します。今ドイツ語を学習している、あるいは、むかし学習したみなさん、そして、もちろんドイツ語を知らない方にも! 日本ではあまり知られていないドイツ語単語・表現とともに、その奥に潜むドイツの文化に触れてみませんか? 興味を持った方には、より詳しい内容が読めるようにドイツ語原文と対訳もご用意しました。この機会に、新しいドイツに触れてみましょう!


 

Folkwangって何?

Volkswagen(ドイツの自動車メーカー・フォルクスワーゲン)じゃありませんよ。似てますけどね(笑)。地名でもありません。ドイツでFolkwangと言ったら、誰もが「フォルクヴァング美術館」を頭に思い浮かべます。最初はルール地方のハーゲンにありましたが、創設者の死後エッセンに移され、1922年改めてオープンしました。それから数えて今年は開館100周年。その特別展に松方コレクションの中から印象派の名画が何点か展示され、注目をあびています。

 

ルール工業地帯に博物館を!

Folkwang(=Folkvanger)は本来、ゲルマン神話エッダに出てくる豊穣と芸術の女神Freyaの宮殿のことです。工業地帯に暮らす人々に物だけでなく心や知的豊かさも持ってほしいと願い、創設者のオストハウスが命名しました。最初は世界各地の珍しい物品を展示するつもりでしたが、次第に美術品、特に印象主義や表現主義の作品にコレクションの重点が移りました。今ではドイツを代表する現代美術の美術館として広く知られています。

 

日本に本格的な西洋美術館を!

同じ頃日本では松方幸次郎が、第一次世界大戦の軍需景気で得た財産を投じて美術品を集め(松方コレクション)、日本に本格的な西洋美術館を創設しようとしました。彼の悲願は世界恐慌や戦争の勃発でかなわず、3000点の西洋美術の多くは散逸・焼失しました。さらに、第二次世界大戦でフランスと日本は敵対関係にあったため、パリに保管されていた松方コレクション約400点は、敵国財産としてフランス政府に接収されました。

 

フランス政府との返還交渉

この400点は最初ロダン博物館に預けられていましたが、ヒトラーが印象・表現主義を「退廃芸術」とみなし弾圧したので、パリ郊外アボンダンの村に一時疎開し、難を逃れました。そのうち370点がサンフランシスコ講和条約により、専用の美術館を設置するという条件付きで戻ってきました。1959年国立西洋美術館が開館。ただコロナ禍による改修工事のため2022年春まで閉館していたこともあり、今回のフォルクバンク美術館100周年の特別展への貸出にもちょうど都合が良かったようです。

 

日本人は印象派がお好き

フォルクヴァング美術館でもヒトラー政権下で印象派、表現主義、シュールレアリスムの作品1400点が「退廃芸術」のレッテルを貼られ強制押収されましたが、その大半が戦後戻ってきたそうです。日本人は印象派が好きなようですね。輪郭をぼかす手法がファジーな美を好む国民性に合っているのでしょう。明治維新で鎖国が解け、生まれて初めて目にした西洋美術が松方コレクションの印象派の絵だったことも関係しているかもしれません。

 

チャレンジ!! ー より詳しい内容を、ドイツ語で読んでみよう!ー

→ ドイツ語文と対訳を見る

 

第7回は、Migrationshintergrund 移民的背景 を取り上げます。お楽しみに!

 

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著者略歴

  1. 石井 寿子(いしい・としこ)

    学習院大学修士課程卒。ミュンスター大学留学時代(1986-89)に島田氏と知り合う。1993年から約30年間Randolf JesslおよびAndrea Raabと共著で年度版のドイツ語中級読本『時事ドイツ語 Neuigkeiten aus Deutschland』(朝日出版社)を執筆した。訳書に『サッカースポーツの役に立つトレーニング理論 ―サッカースポーツの一般・特殊コンディション』(朝日出版社)、『ジェレミーと灰色のドラゴン』(小学館)などがある。複数の大学でドイツ語非常勤講師をつとめ現在に至る。

  2. 島田 信吾(しまだ・しんご)

    1957年大阪生まれ。1972年渡独。ミュンスター大学修士課程卒。エアランゲン・ニュールンベルク大学にて博士号及びハビリタチオン(社会学教授資格)獲得。ハレ・ヴィッテンベルク大学比較文化社会学教授を経て2005年よりデュッセルドルフ大学現代日本学科社会科学系教授。著書に『Grenzgänge – Fremdgänge. Japan und Europa im Kulturvergleich(Campus),『Die Erfindung Japans. Kulturelle Wechselwirkung und nationale Identitätskonstruktion』(Campus)など多数。

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