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にしまりちゃん 龍神道を行く

徳川家康と龍神様の関係

「織田信長・豊臣秀吉・徳川家康、三大武将の誰が好きですか」と生きていると一度は聞かれたことがあるでしょう。

私は、とにかく、「徳川家康」一択。

もちろんリアルな人となりは存じ上げないが、残された格言やエピソードを読むと、「愛を持っていた強い人」だと思うから。

 

歴史を紐解いても、戦国時代を終わらせたターニングポイントの人物である。

殺し合う世の中を望まず、極力穏やかな国にしたいと家康が強く願っていたことは日光東照宮にある「眠り猫」の伝説が表している。

「眠り猫」を知らない方のためにちょっと解説をすると、家康のお墓に通じる参道の門にある猫の彫り物のことで、その横には雀が描かれている。

猫が眠っている間は雀も安心していられる。家康によって訪れた平和を象徴しているとか。

 

いずれにしても江戸幕府を境に日本は戦国の世から変わったのだから、「安泰を願う」強い思いは、やはり家康だからこそだ、と私は思っている。

そんな家康の傍には愛と平和を重んじる龍神様がいらしたのだと感じる。

家康も龍神様を感じたことがあったのか、できることならインタビューしたいくらいだ。

実際、時を経た今でも、「家康ゆかりの場所にはもれなく龍がいる」と言って過言ではない。

 

金龍が立ち昇る、家康の生誕地

 

岡崎城(愛知県岡崎市)の隣にある龍城神社をご存知だろうか。

岡崎城は、家康が生まれた場所。

2019年からご縁があって、龍城神社さんでのライブペインティングを開催させていただいている。

 

龍城神社はその名の通り、龍にまつわる伝説が諸説ある。

三河守護職、西郷弾正左衛門頼嗣がこの地に新たな砦として岡崎城を築こうとした時、

「自分はこの地に棲む龍神である。自分を鎮守の神と奉れば、永くこの城を守護しよう」

というお告げがあり、城の別名を「龍ヶ城」と名付けてその龍神を祀った。

龍城神社の西側にある「龍の井」は、その伝説の舞台となったことから「出世開運の龍の井戸」として今も祀られている。

それから約100年後、天文12月26日に竹千代、つまりは家康が誕生した日にもこの地で金色の龍が天に昇ったと伝えられている。

 

私は、岡崎にいらっしゃる有志の方々に声をかけてもらうまで、この神社を知らなかった。

「にしまりちゃんのライブペイントを、ぜひこの龍の神社で!」と数年間ずっとお声がけいただいていたのだけど、それがやっと叶ったのは、私が第一冊目の著書を出した時。

龍愛について触れた本を出版したから、というまさに引き寄せだった。

ひょっとして、私と同じように龍神様の助けを借りて生まれてきた家康からの…引き寄せか?

 

龍がうごめき光が満ちるパワスポ

 

2019年夏、ついに私は龍城神社に降り立った。

中へ入った瞬間、すーっと何かの光が降りてきた感覚を確かに感じた。

「ここには龍がたくさんいる」。

根拠のない確信と、込み上げるものがありちょっと涙ぐんだ。

「いろんなご縁が繋がって、この龍神様がいらっしゃる場所で龍の絵を描かせていただく」という幸運。

龍神様が歓迎してくれている、と思った。

 

ライブペインティングの前のご祈祷、龍神様のご加護を感じる宮司さん。

ふと天井を見上げると大きな龍の木彫りの天井画。その目と目があった瞬間、何か震えがくる感覚があった。

それと同時に、「私、ここでライブペインティングをさせていただいて、いいのだろうか」という緊張感に包まれた。とても恐れ多い、と。

 

私は龍を描く時、その瞬間を覚えていない。

龍に憑依される、龍神様が降りてくる、という感覚。

だからライブペインティングを見た人にはいつも言われる。

「ある瞬間から、何かが降りてきて描いている感じがした。

あれはMARIさんではなかった」と。

 

蝉の声が鳴り響き、ギラギラとした真夏の太陽が照りつける中、私の龍城神社での初ライブペインティングがはじまった。

 

金色の龍が降りてくる瞬間

 

炎天下、オーディエンスが見守る中、私は白い掛け軸の前に絵の具を持って立った。

何かが降りてくるのを待つ。

蝉の声、雑踏、人の声。

ある瞬間、それがさっと途絶えて小さな風が吹いた。

何かが来た、という確信。

つむじのあたりからすーっと体に温かいものが入ってくる感覚。

金色。金色の龍だ。

 

そこで一旦、私自身の記憶が途絶えていく。

こういう時、私自身の意識はどこにあるのかというと、「無」なのだ。

私は体だけを龍神様にお貸しした感じ。

その間私の手は忙しく、絵の具を激しく使って動いている。

 

汗が流れるひんやりとした感覚でだんだん私自身が戻ってくる。

無音の空間から、次第に蝉の声が、神社の砂利の音や周りの人の声が、カメラを切る音が、音量を増していく。

完全に自分が戻ってきた時、ふと目の前を見ると大きな龍神様が描かれていて、私の手や顔は絵の具で汚れていた。

ライブペイントを見ていた方々の拍手に包まれる。

私はどうやら描きながら涙を流していたようだ。

そしてオーディエンスの中にも、涙を流している方がお見受けできた。

 

龍が降りてきて、描く。

根拠はないが、間違いないと思う。

あとから動画を見直すと、

「ああ、私、こんな顔して描いているんだ。これは間違いなく私ではない。龍そのものだな」

と、確信するのだ。

とりわけ龍城神社でのライブペインティングは、毎回、ものすごいエネルギーをいただいている。

2022年の夏の絵は、神社に奉納され、畏れ多くも神社の境内に飾られていた。

ありがとうございます。

私は龍城神社さんに、いや龍神様に、毎回しっかりお辞儀をして帰る。

尊く、強く、美しく、時に厳しい、龍城神社にいらっしゃる金色の龍神様。

龍に出会いたい方は、是非一度足を運んでみてはいかがだろうか。

一歩足を踏み入れた瞬間の、あのなんとも言えない温かい感じをぜひ味わっていただきたい。

 

そして来年も7月30日(日)にライブペイントの開催が決まっているので、ご興味があれば是非、龍が降りてくる瞬間をご一緒に。

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著者略歴

  1. 西村 麻里

    コピーライター/クリエイティブディレクター/アーティスト
    熊本生まれ。
    国内広告代理店、外資広告代理店のコピーライター・CMプランナー・クリエイティブディレクターを経て、MARI NISHIMURA INC. を設立。
    龍を描くアーティストとして、ニューヨーク、東京をベースにアーティスト活動を展開し、ロサンゼルス、ベルリン、ロンドン、カンヌ、パリなどでも個展を開催。
    2020年公開の映画「響 HIBIKI」に画家として出演。
    著書に『THE AURA』『龍スイッチはじめよう』(ともにWAVE出版)がある。

    ●国内賞
    TCC賞新人賞、TCC審査委員長賞/ADC賞シルバー(RA-CM)/ブロンズ(TV−CM)/電通賞最優秀賞(TV-CM)/FCC賞OCC賞CCN賞/朝日広告賞 ほか多数
    ●海外賞
    CLIO賞シルバー/one show ブロンズ/SPIKS ASIA ブロンズ/epica award paris シルバー/one show メリット賞/D&AD インブック受賞

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