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にしまりちゃん 龍神道を行く

龍神様はどこに存在しているのか

湖で龍神様に遭遇 九頭龍神社の不思議

私には、九頭龍神社に定期的に行っていた時期がある。

箱根にある九頭龍神社はその名の通り、龍神様を御祭神とする神社。

毎月13日に行われる月次祭にも何度か行ったことがある。

九頭龍神社へ行くなら、ぜひ一度はこの月次祭に行っていただきたい。九頭龍大神の神前で参加者全員の願い事が奏上される。

 

九頭龍神社へ行く道中はなぜか毎回、雨が降る。

私がイベントを開催すると必ず雨が降る、というのはもはや定説なのだが、九頭龍神社に行く時は半端ない大雨と強風。嵐と言っても過言ではない。

しかし龍神様は恵みの水をもたらす神様、雨が歓迎の証なのだと言われれば妙に納得する。

九頭龍神社の「何かいる」という感覚を、雨や風がさらに盛り上げてくれる。

 

大きな白い龍を、実際に湖畔で2度ほど見たこともある。

大きな大きな白い龍、銀色の光を放ってそれはそれは美しく、優しい龍だった。

湖の波がそう見えたのか、また、本当に龍がいてその姿を見せてくれたのか定かではないが、たしかにそこにいた。

 

九頭龍神社は、立身出世・金運・縁結びなどたくさんのご利益があるということで、さまざまな企業のトップが参拝するらしい。

そもそも、九頭龍神社の摂社である箱根神社元宮は西武グループ創業者の堤康次郎さんが再建を手掛けたそうで、九頭龍神社本宮も一時期私有地としていたそうだ。

経営者が集うのも、なんだかとてもわかる気がする。

それくらい、どーんとした大きな龍の力を感じるのが九頭龍神社なのだ。

 

ドバイで出会った龍神様を愛する人々

 

ところで先日、私はイタリアのギャラリーからオファーを受けて“World Art Dubai”に出展した。

ドバイは初めての土地だったので、UAEの人々に龍神様の絵がどう捉えられるかがとても楽しみであり、不安でもあった。

イスラム圏なので、偶像崇拝とみなされ、受け入れてもらえないのではないかと思ったからだ。

しかしその予想は見事にはずれ、こんなにたくさん写真を撮られるのかと驚くくらい、龍はドバイの人々に大好評だった。

 

ドバイではシンボルとして「馬」や「鷹」が好まれるのは知っていたけれど、龍にここまで好意やリスペクトをいだくというのは、まさに新発見。

とても不思議だったのは、特に若い世代、それこそ10代や20代のドバイ在住の若者が「青い龍」をとにかく絶賛し、インスタにアップしたい、写真を撮りたいと押しかけてきたこと。

会期中何回も来てくれる若い女性もいて、「いつかこの絵が買えるようになりたい」と言ってくれた。

 

ドバイには、ロシアやウクライナから一時避難している方々もいて、ウクライナの男性が私の絵を見て涙を溜めながら、「この龍を見ていると生きる力が湧いてくる」と言ってくれた言葉も心に残った。

 

もしかしたら、日本のアニメなどの影響で若い世代に龍がインプットされているのかもしれない。

たとえそうだとしても、「龍は人々と共に強く生きてくれる存在」という認識が、日本から遠く離れたUAEでも共通していてとても面白く、私においてはさらなる挑戦のきっかけになった。

龍神様、ありがとうございます。

 

「成長した姿」を介して龍神様と出会う

 

中国や台湾では、実力がある人々を龍に例えるそうで、装飾品にも皇帝の肖像画にも五爪の龍が出てくる。

中国のことわざで、「望子成龍、望女成鳳」という言葉がある。「子孫の成功を望む」という意味らしい。

中国にはほかにも故事があり、「激流を登り切った鯉がやがて龍になる」という伝説が日本に伝わり、「鯉の滝登り」ということわざに転じている。

つまり龍神様は「成長した理想の人物」の形として存在するとも言えるだろう。

 

龍神様に会えるのは神社だけではない

 

九頭龍神社の湖にいる龍のように、龍神様はなにも神社だけに存在しているわけではない。

ある時は海にいて、湖にいて、空にいて、森にいて、そして神社にもいる。

その存在は実にさまざまな場所に現れる。

 

先日、ニューヨークの和食レストラン「WOKUNI」のライブペインティングで龍を描いたのだが、その時にスマホでじっと撮影していた年配のアメリカ人女性が、私に話しかけてきた。

「私はニュージャージーから来たんだけど、私の家にずっと龍が住んでいるの。

その龍は私が悩んでいる時にすーっと出てきて、いつもその存在を見せてくる。

言葉はないけど、何かとんでもないパワーを届けていなくなるのよ。あなたの龍に似ている」

青い目を輝かせて興奮してそう語ってくれた。

ニュージャージーでは、家に龍がいることもあるようだ。

つまり、心のあるところに、人がいる場所に、常に龍神様は存在しているのではないだろうか。

事実、私もふと空を見上げると、大きな龍に出会って元気をいただくことが多々あるのだから。

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著者略歴

  1. 西村 麻里

    コピーライター/クリエイティブディレクター/アーティスト
    熊本生まれ。
    国内広告代理店、外資広告代理店のコピーライター・CMプランナー・クリエイティブディレクターを経て、MARI NISHIMURA INC. を設立。
    龍を描くアーティストとして、ニューヨーク、東京をベースにアーティスト活動を展開し、ロサンゼルス、ベルリン、ロンドン、カンヌ、パリなどでも個展を開催。
    2020年公開の映画「響 HIBIKI」に画家として出演。
    著書に『THE AURA』『龍スイッチはじめよう』(ともにWAVE出版)がある。

    ●国内賞
    TCC賞新人賞、TCC審査委員長賞/ADC賞シルバー(RA-CM)/ブロンズ(TV−CM)/電通賞最優秀賞(TV-CM)/FCC賞OCC賞CCN賞/朝日広告賞 ほか多数
    ●海外賞
    CLIO賞シルバー/one show ブロンズ/SPIKS ASIA ブロンズ/epica award paris シルバー/one show メリット賞/D&AD インブック受賞

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