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グググのぐっとくる題名

第3回 繰り返しの題名

ブルボン小林さんの新連載、「グググのぐっとくる題名」。小説や演劇、映画、音楽、漫画や絵画……あらゆる作品の、「内容」はほとんど問題にせず、主に題名「だけ」をじっくりと考察します。20年前に発売された前著『ぐっとくる題名』以降、新たに生まれた題名や、発見しきれていなかったタイトルを拾い上げる予定です。
第3回目は、1987年のリリース以来聴かれ続ける人気曲と、心地よい響きに満ちた中華小説、気鋭の詩人による短編集、そして80年代のガールズバンド曲の題名を鑑賞します!(編集部)


Creepy Nutsのヒット曲『Bling-Bang-Bang-Born』のサビ(ブリンバンバン……と繰り返すところ)は久保田利伸のヒット曲『流星のサドル』と同じだ。
ほらほら、ここ同じ、とうちの子に聞かせて煙たがられていたのだが、最近サービスで「よーるーを超ーえていくのさー」と歌ってくれるようになった。親の趣味が古いから、最新の曲と昭和の歌とチャンポンでインプットしていく。

冷蔵庫を開けながら西城秀樹『ブーメランストリート』のブーメランを「マーガリン」に入れ替えて歌っていたのには驚いた。
「マーガリンマーガリンマーガリンマーガリンきっとー あなたは戻ってくるだろうー」(親の自分がそんなふうに歌ってることで覚えたのは明らかなのに、なんで! と思った)。

歌の中のそういった繰り返しには意味がほぼない。
『ブーメランストリート』も、ブーメランのように君は戻ってくる、という「主旨」を伝えるとき「ブーメラン」を連呼することにあまり意味がない(はず)。意味でないならなんなのか。気持ちよさだ。

語を繰り返すことに、意味の付加はない。童謡の『グリーングリーン』とかもだ。『Bling-Bang-Bang-Born』のサビだってそう。意味ではない、反復の心地よさ。
そしてその心地よさは本編だけでない、題名にさえ反映されるという話。

 

 

本連載は終了しました。加筆・改稿のち書籍化します(2025年12月20日発売予定)

新たな読み物、対談など盛りだくさんでお届けします。どうぞお楽しみに! 編集部

 


◎ 好評発売中! ◎


『増補版・ぐっとくる題名』 著・ブルボン小林(中公文庫)

題名つけに悩むすべての人に送る、ありそうでなかった画期的「題名」論をさらに増補。論だけど読みやすい! イラストは朝倉世界一氏による新規かきおろし!

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著者略歴

  1. ブルボン小林

    1972年生まれ。「なるべく取材せず、洞察を頼りに」がモットーのコラムニスト。
    00年「めるまがWebつくろー」の「ブルボン小林の末端通信」でデビュー。
    著書に『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』(ちくま文庫)、『ゲームホニャララ』(エンターブレイン)、『マンガホニャララ』(文藝春秋)、『増補版 ぐっとくる題名』(中公文庫)など。
    『女性自身』で「有名人(あのひと)が好きって言うから…」連載中。小学館漫画賞選考委員を務める。

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