朝日出版社ウェブマガジン

MENU

出張版 桒原駿の備忘録

出張版 桒原駿の備忘録 昇段を決めた一局 ①

皆様はじめまして。日本棋院所属囲碁棋士二段、3年目の桒原駿です。これでくわばらしゅんと読むのですが、読みにくいしパソコンやスマートフォンで変換できなかったりするのでこれを機に覚えて辞書登録していただけると嬉しいです(笑)

文章を書くのが好きで普段から「桒原駿の備忘録」という名のブログで自戦解説などを行っています。今回その出張版という名義で始まるこの「あさひてらす」での連載はブログのものよりもさらに詳しく分かりやすいものに仕上げたつもりなので、幅広い棋力の方に楽しんでいただけると幸いです。

 

2019年3月14日

碁聖戦予選B

白番 大木 啓司 七段

黒番 桒原 駿 二段(対局時は初段)

  

聞き手「黒番での布石は、いつも決めているのですか」

桒原二段「決めていません。以前、研究会で一力八段と打ったとき、一力八段がこの布石を打たれたので、自分も打ってみようと」

聞き手「真似したってことですね(笑)」

 実戦図10

実戦図1-10

聞き手「白10のトビは初めて見ました」

参考図1

参考図1

桒原二段「参考図1のようにノビが普通ですが、黒2とトバれます。そうなったときに白がAにおさなければ、黒がAにきて、右辺が黒模様になります」

実戦図15

実戦図10-15

桒原二段「だからそれを防ぐ意味で白は10とトビ、実戦は右辺に黒地ができにくくなりました」

参考図2

参考図2

桒原二段「黒から打つにしても、参考図2の黒1とは打ちにくいし、右辺を地にするためには、△の二箇所に打たなければ、確定地になりません」

実戦図18

実戦図15-18

参考図3

参考図3

桒原二段「最近では、参考図3の黒1と上ツケします。ご覧になったことはあると思います」

聞き手「白はハネて」

桒原二段「黒ノビて、白は三三から図のような進行になるのが流行っているのですが」

参考図4

参考図4

桒原二段「一例ですが、参考図3のあと参考図4の黒1と切って以下黒3とカカエてシチョウで取れればいいのですが、この場合は白△がシチョウアタリになるので取れません」

参考図5

参考図5

桒原二段「よくあるのは、参考図5の黒1とハネて、コウに弾き」

参考図6

参考図6

桒原二段「参考図6の黒2をコウ材にして、その後白5のツギになれば、一段落になるのですが、AやBに結構コウ材があり白は5とツナがずにコウを争うので、黒はコウに負ける可能性が高くちょっと打ちづらいです。ですから参考図3の上ツケがよく打たれているのですが、実戦は上ツケを選択しませんでした」

実戦図25

実戦図18-25

桒原二段「実戦の白24まで、この定石は昔からある定石ですね。僕が生まれる前からあるのではないでしょうか」

参考図7

参考図7

桒原二段「ここで、僕は黒25とコスミツケたんですが、このコスミツケは、参考図7の白1のツケが嫌だったのです」

桒原二段「例えば、黒2とハネても、白5までで、断点だらけです」

参考図8

参考図8

桒原二段「参考図8の黒6とカケツイでも、白7とハネられるし」

参考図9

参考図9

桒原二段「参考図9の黒6とハネても、白7とツガれて、黒はAのあたりに守らなければならない。ちょっときかされた感じになります」

参考図10

参考図10

桒原二段「黒は反発して参考図10の黒2と出ても、隅に白地ができた上に黒の形はまだ気持ち悪いので良くないです」

実戦図30

実戦図25-30

聞き手「白30のコスミはどういう意味ですか?」

参考図11

参考図11

桒原二段「参考図11のように、白の△がノビになっていれば、黒のコスミツケにハネからアタリを決めてツギまで。これは白悪くないですよね」

参考図12

参考図12

桒原二段「この場合は、参考図12のようにハネると黒4のツギまで、白は参考図と比べてダメがつまっていて黒からキリ放題です。ここで白5とカケツギになるのですがこれは、実戦図25-30と比較して、参考図12の白1から黒4までをキメる必要はないということです」

参考図13

参考図13

桒原二段「黒は参考図13のように打てば、数目得をするかもしれませんが、白を厚くしてしまった損の方が大きい。白30は、1路右のノビよりは働いていると思います」

実戦図31

実戦図30-31

聞き手「ここで、流行りの三三ですが、三三定石は研究されているのですか?」

桒原二段「はい、人並みには(笑)。普段はすぐ三三に入る風潮はあまり好きではないのですが、この瞬間は三三がベストだと思いました」

参考図14

参考図14

桒原二段「例えば参考図14のように、黒1とかかれば、白2となって左辺が白っぽくなります」

聞き手「確かに、入りづらくなりますね」

参考図15

参考図15

桒原二段「かといって参考図15のように反対側にかかると、白2と挟まれて、やっぱり左辺が白っぽくなりますので、三三に入るタイミングはこういうときなんだなと」

参考図16

参考図16

聞き手「例えば参考図16の白1とオサエて、白模様を大切にしたいのですが、どうでしょうか」

桒原二段「この図は、参考図14や参考図15のときより、左辺白の上下の間隔が広くなり白は守りづらくなりました。黒からは白に守りづらくさせるという意味もあるのです」

聞き手「なるほど、白はちょっと悩ましいですね」

桒原二段「こうなると、三三に入ったかいがあったというものです」

実戦図37

実戦図31-37

聞き手「最近は、地にしたい側の逆をオサエるようになったんですね。以前とは逆になりました」

実戦図50

実戦図37-50

桒原二段「最近流行りの進行ですね」

聞き手「ここではシチョウはどうなんですか」

桒原二段「右上は白ばかりなので、白が良いです」

聞き手「シチョウが悪いときはこの定石は打っちゃいけないと聞いていたのですが」

桒原二段「そうですね。でもこの場合はこれでも構わないと思いました」

参考図17

参考図17

桒原二段「なぜなら、右上隅の白がウスいので、参考図17の黒1とハサむと、白の目があまりなくて、黒1がシチョウアタリにもなっています。普通はシチョウが悪いときには良くないのですが、右上の白をハサんだ石がシチョウアタリになっているので、この場合はありかなと」

 

[つづく]

バックナンバー

著者略歴

  1. 桒原 駿

    平成11年(1999年)4月10日生 東京都出身
    岩田 一 九段門下

    平成28年 夏季入段(平成29年度採用)
    平成31年 二段

    日本棋院東京本院所属

ジャンル

閉じる