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出張版 桒原駿の備忘録

出張版 桒原駿の備忘録『手の内を知る相手』④

 実戦図137

実戦図136-137

桒原二段「この137が勝ちにつながる一手になりました」

 参考図40

参考図40

桒原二段「この局面では白からAとツケコされてキリを狙われるのが嫌ですがCやBのような安直な守りでは地が足りません」

参考図41

参考図41

桒原二段「実戦の137の後、参考図41の1から平凡に進むと黒は全部利かしてから8に守れば中央を抑え込めているので進歩しています」

実戦図142

実戦図134-142

桒原二段「白の138は最強手。139のヒキに対し138の左にツナぐのは物足りないとみて140からすぐに142と隅の目を取りにきました」

実戦図147

実戦図142-147

桒原二段「実戦の145のアテを利かせたのが大きいので左下隅を生きてしまえば良さそうです」

参考図42

参考図42

桒原二段「ここまで黒はずっとコウ材が足りなかったのですが、参考図42の3に対して4とツゲるのが良くAのコスミやBのケイマ、Cなどのコウ材があり、右辺では白のコウ材が減っているので遂に黒がコウ争いで有利に立ちました」

実戦図150

実戦図147-150

桒原二段「コウに勝てないので150と白は妥協。黒は左下隅を生きた上に左辺の白地を少し減らすことができたので大成功です」

 

 第四譜

第四譜(151-200)

 実戦図155

実戦図151-155

桒原二段「152に対して緩めて三子を捨てた代わりに中央が黒っぽくなりました。左下隅から左辺の折衝でリードを奪い返しました」

実戦図159

実戦図155-159

桒原二段「158のアテにツグと白159で渡られてしまうので注意」

聞き手「持ち時間はどうでしたか」

桒原二段「左辺や右辺の難解な変化に時間をかけたので私は既に秒読みでした。上野さんも秒読みだったと思います」

実戦図163

実戦図159-163

桒原二段「実戦の163で中央がさらに黒っぽくなりました」

参考図43

参考図43

桒原二段「黒は密かに参考図43の1から白△の4子を取り込むことを狙っています」

実戦図167

実戦図163-167

桒原二段「実戦の166がどうも良くなかったようです」

参考図44

参考図44

桒原二段「参考図44のように白からすぐに切ると取られてしまうので」

参考図45

参考図45

桒原二段「白は先に1と切ることで3のアテを利かして11までシチョウで取ろうというのが狙いです」

実戦図169

実戦図167-169

桒原二段「しかしここで169が好手」

参考図46

参考図46

桒原二段「169の後参考図46の1と切っても今度は4と守っていて、左上から中央の黒石は生きているので6とツケれば白四子が取れてしまいます」

 実戦図177

実戦図169-177

桒原二段「結局白がノゾいた手は黒に171とツガれて全く得をしていません。しかも177とツケて白を取ることはできないまでもいじめるて得することができます」

 実戦図191

実戦図177-191

桒原二段「白の4子には逃げられましたが予想通りなかなかの戦果を上げることができました」

 実戦図198

実戦図191-198

桒原二段「ここまで黒だけが中央の2目を取った分の得をしたのに対して白地は1目も増えていないので、ここで勝ちが確定したと思います」

 

 第五譜

第五譜(200-231)

桒原二段「231手までで白が投了しました。盤面10目、3目半ぐらいの差でしょう」

桒原二段「序盤に右辺で一本取って良くなった碁を左辺の悪手で悪くしたのですが、右上や上辺の白の弱い石を攻めることで形勢を回復することができました。弱い石は取るよりも攻めてダメ場を打たせることで得をしようという打ち方が上手くいきました」

 

今回は「手の内を知る相手」ということで昔からの顔馴染みである上野さんとの碁について書いてきましたが、AI時代になったこともあり打方自体はお互い大分変わったと思います。しかし不思議なもので根本的な考え方が変わっている人は少なく、院生時代の仲間と打つと違和感を感じることはほとんどありません。

戦いが強い相手と打つときは手厚く打つ場所と捨ててもいい場所を分けることを意識しているのですが、今回はそれが理想的な形になったと思います。長い碁を打ちたいのにすぐツブされてしまうと悩む方の参考になれば嬉しいです。

 

 

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著者略歴

  1. 桒原 駿

    平成11年(1999年)4月10日生 東京都出身
    岩田 一 九段門下

    平成28年 夏季入段(平成29年度採用)
    平成31年 二段

    日本棋院東京本院所属

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