出張版 桒原駿の『備忘録』大模様攻略①
今回から始まる連載第二回は秋山次郎九段との対局を解説していきます。
白番 桒原 駿 二段(対局時は初段)
黒番 秋山 次郎 九段
2019年1月17日
碁聖戦予選C
秋山九段といえば本来ならば最終予選や本戦常連で棋聖リーグにも所属しているトップ棋士。なぜ予選Cの初っ端からそんな相手と当たるのだろうというのが組み合わせ表を見たときの率直な感想でした(笑)
しかし強い先生との対局は棋士として燃えるしとても楽しみなこと。さらにこの前の週に打った棋聖戦ファーストトーナメント準決勝で勝勢の碁を大ポカで落としてリーグ入りに後一歩届かなかった悔しさもあったので、より一層気合を入れてこの対局に臨んだ記憶があります。
第一譜1-50
実戦図1-6
桒原二段「秋山九段は手堅くて厚いという印象なので布石では相手に良い形で構えさせないようにしようと考えていました」
参考図1
桒原二段「参考図1のように、右上隅のカカリに対し白1と受けると黒2と構えられて相手のペースかなと思い、実戦のようにハサミました」
実戦図6-9
桒原二段「白6に黒7となって、相手の目論見をはずしました」
実戦図9-13
桒原二段「黒9のカカリに普通にコゲイマで受けることもできるのですが」
参考図2
桒原二段「参考図2のように、黒2やAと構えられるのが嫌だったので、実戦の10とコスミツケて先手を取りにいきました。以前はすぐにコスミツケる手は、二立三析と言われる良い形を相手に取らせてしまうから悪いと考えられていたのですが、最近はAIの研究によりすぐコスミツケるのも有力とされています」
実戦図13-15
桒原二段「黒は左上隅と下辺に地を持ったので、白は地で離されないように三三に入りました」
参考図3 黒7[14]
桒原二段「白の三三に対して参考図3のように黒1と左辺側からオサエルと、以下よくある定石の進行になったとき黒△が左側の分厚い黒に近すぎるのであまり良いとは言えません。Aにあった方がバランスが良いですね。なので実戦は15と下辺側からオサエました」
実戦図15-23
参考図4
桒原二段「黒23で参考図4の1と切るのは常套手段ですが、図のように進行し白12があるとき黒は黒△に開くことはないので、この形は白のほうが若干効率が良いのです。そこで実戦では23と単にハネました」
実戦図23-29
桒原二段「黒29で一段落です」
参考図5
桒原二段「参考図5の黒△がAやBにあれば黒が厚いのですが、一路低いゆえにこの模様は上側から荒らしやすく脅威ではないので、三三に入った価値はあったかなと思いました」
聞き手「私には下辺が大きな黒地になっているような気がしますが」
桒原二段「△の石が上にあれば大きな地になりやすいのですが、下にあると上積みがないのでハネツギなどのヨセだけでも見た目より大分地は少なくなります。」
聞き手「なるほど、数えてみれば20目程度の地で、左下や右下の白地と比べても特別大きいわけではありませんね」
実戦図29-30
桒原二段「実戦では30としました。左辺の黒が大きく見えるのですが、広すぎて今すぐ打ち込むと逆に相手を固めてしまう恐れがあります」
参考図6
桒原二段「例えば参考図6とするのは、黒2とハサまれて左辺が広い」
参考図7
桒原二段「参考図7と打ち込むと黒2のツメやA辺りに固められるのが嫌です。このように白から打つと逆に相手が固まってしまうこともあるので、実戦は30にコスミツケて手を渡し左辺は相手に打たせてから消しにいこうと考えました」
実戦図31-32
参考図8
桒原二段「実戦では黒31に32と応じましたが32ですぐに参考図8の白1とするのは、黒2のスベリから4と逃げ出されなかなか黒を攻めにくい」
参考図9
桒原二段「最近は参考図9のように黒2までスベる手もよく打たれ、稼がれた上に隅の白の目まであやしくなるのでこれも有力です」
つづく