出張版 桒原駿の備忘録 昇段を決めた一局 ④
実戦図112-116
聞き手「白としては黒113から115が気になるのですが」
桒原二段「白は、ここは承知で実戦図の112を打っています。112で113に守ると黒に先に112に打たれてしまいますからね」
実戦図116-120
桒原二段「これで結構形が決まってきて、細かいけれど黒が少し良いでしょう」
聞き手「昇段がかかった一戦で勝ちが見えたとき、ふるえたりしませんか」
桒原二段「僕は昇段に関わらずいつもふるえています(笑)」
参考図44
桒原二段「今考えると、参考図44の黒1マガリが大きいですね」
参考図45
桒原二段「参考図45の白1とされると、以下白9で黒は左右に切り離されます」
参考図46
桒原二段「参考図46の黒4とヌイた場合でも、△にあった白1子は軽いので取られても白9までとなって、黒3子を飲み込んで白地がかなり大きくなっています」
実戦図120-122
桒原二段「実戦は黒121とトンだので、このときは中央が気になっていたのでしょう。白122は右上隅が若干薄いので、地を稼ぎつつ目をつくりにいったのですね」
聞き手「黒121は利かしですか」
桒原二段「そこに白に打たれて、黒が抑え込まれて中央に白地ができてしまうのを嫌いました」
実戦図122-124
聞き手「黒123は大きいのですか」
桒原二段「黒123は中央の利きを見つつ左辺に上手い後続手がある手です」
参考図47
桒原二段「参考図47のように打つと、白は手入れがいらないのですが」
参考図48
桒原二段「参考図48のように外側から打つと、白は手入れが必要で、黒には△三目のトリが残ります」
聞き手「プロの技ですか(笑)」
桒原二段「これが二段の実力です(笑)」
実戦図124-133
聞き手「黒133は待望のマガリですね。このあたりでは勝ちを意識していましたか」
桒原二段「いや、そうとう細かいですよ」
聞き手「えっ!そうなんですか?!」
桒原二段「でも、一目半ぐらいは残るかなと思っていました」
聞き手「どうやってわかるんですか?」
桒原二段「計算はしますが僕の場合あとは感覚ですね。そこまで計算に自信があるわけではないので(笑)。この後よっぽど変なことをしなければ大丈夫のはずです」
実戦図133-136
桒原二段「実戦で黒135と抜いてコウかと思ったら、136と下からアテられて」
参考図49
桒原二段「参考図49の黒1とツグと白2とされ、白からAなどを見られて、ダメヅマリが気になります」
実戦図136-139
桒原二段「なので黒137と打って2目は捨てました」
参考図50
桒原二段「実戦の黒139は参考図50のAやBなどの白の薄みを狙う後続手をにらみつつ地を広げています」
参考図51
桒原二段「参考図51の白1と中から入るのは、黒4のアテコミで白の断点のどちらかが切れるので取られてしまいます」
実戦図139-143
桒原二段「実戦の黒141とコスミツケて右辺に黒地が4,5目増え、黒143までとなって、ようやく勝ちが見えてきました」
聞き手「震えてましたか」
桒原二段「震え終わったぐらいです(笑)」
聞き手「持時間にも余裕があったんですね」
桒原二段「はい、一時間ぐらい残っていました」
実戦図143-151
桒原二段「この辺りでは、かなり優勢を意識して、手厚くツナガッてればいけると思っていました」
桒原二段「黒149とここをツナガればその下の白がウスくなり、白がウスくなれば大きくヨセられることはないので、黒149は安全運転の意味です」
聞き手「優勢を意識されていたということですが、どのくらいの差ですか」
桒原二段「3目半ぐらいです」
実戦図151-157
聞き手「ツナガる手が続きましたが、157ではツナガないのですか」
桒原二段「その黒は、上辺とツナガっているからさらにツナがる必要はないと思いました」
参考図52
桒原二段「参考図52のように、白1とアテれば黒2から黒4でツナガっていますし、白1でAなら黒1で大丈夫です」
実戦図157-164
参考図53
桒原二段「実戦の162で参考図53の白1とオサエると黒2と効かされてしまうので、白は実戦図の162としてから164とノビました」
実戦図164-165
参考図54
桒原二段「黒165(△)のツケに白1とすれば、黒は2とツイで白3に黒4とオサエ白5とアテられても黒6でAとBのキリとツギが見合いになっています」
参考図55
桒原二段「黒165のツケは、参考図55白1のハサミツケ以下がいやだったので、守った手でもあります。ここで白が投了しました」
聞き手「最終的にはどのぐらいの差ですか」
桒原二段「4目半ぐらいです」
聞き手「もっと良かったのではなかったのですか」
桒原二段「右辺で少しと上辺で少し得をしたぐらいなのでそこまで大差ではないです」
聞き手「それで投了したのですか」
桒原二段「持時間がなければともかく、かなり残っていましたので、ここまできたらもう動かないからでしょう」
総譜 1-165手まで黒中押し勝ち
今回解説したのは昇段を決めた一局ということでしたが、あと1勝で昇段という状況になってから2連敗していたのであまり勝った後の感動とかはありませんでした(笑)
内容は全体的に落ち着いた展開で少々盛り上がりには欠けましたがある程度納得できる碁が打てたと思います。私は別段戦いが苦手ということは無いのですが、なんとなくこういう落ち着いた碁になることが多くアマチュアの方から見ると参考にしやすいのではないかと思うので、これからの連載もお付き合いいただけると嬉しいです。
PS 「桒原駿の備忘録」というタイトルは私が好きな小説から取っているのですがそれが分かったあなたは同士です。