朝日出版社ウェブマガジン

MENU

出張版 桒原駿の備忘録

出張版 桒原駿の備忘録『手の内を知る相手』③

実戦図89 

実戦図84-89

桒原二段「実戦は一番の安全策で白から他になにも手のない打ち方ですが」

参考図26

参考図26

桒原二段「参考図26の形から1と切っているので悪手の意味もあります」

参考図27

参考図27

桒原二段「参考図27のように1のブツカリにヒイてくれるならこちらのほうが良いのですが」

参考図28

参考図28

桒原二段「参考図28の2と踏み込まれてから4と出て6とハサミツケの強硬手段があり、17と隅を生きている間に左辺を攻められて黒がピンチになります。実戦図からはなかなか想像がつかないのですがこういう手段を警戒して悪形もやむなしと安全策をとりました」

 参考図29

参考図29

桒原二段「参考図29のように1のハネダシからハサミツケは参考図28と比べて上からのアテを打っていないことが大きく4でとれています」

実戦図93

実戦図89-93

桒原二段「93は難しいところで」

参考図30

参考図30

桒原二段「この形は白から参考図30の1、3とコウにする手があります。白には右辺にコウ材がたくさんありますので黒は攻めつつ常にコウも警戒していなければなりません」

参考図31

参考図31

桒原二段「実戦の93に対して先ほどと同じように白が1からコウにすると8と外からアテるのが上手い手です。一見白13で白が3手、黒が2手に見えますが14、16で白からオス手がなく黒が勝っています。93に打っておけば白からすぐにコウを仕掛けられないのです」

実戦図100

実戦図93-100

参考図32

参考図32

桒原二段「実戦の94に対して参考図32のように1と平凡に受けると白は2の後にAにワリツグのが先手になります」

参考図33

参考図33

桒原二段「実戦は参考図33の△から後に1とアテコミを打たれても2とツげばAからのノゾキもあるので参考図32より白は厚くありません」

参考図34

参考図34

桒原二段「また参考図34のように3とアテコんだときに4のツギが利くかどうかも1とAの差です。実戦はしっかり97とアテコンだことでコウの心配がなくなりました」

 

 第三譜

第三譜(101-150)

 

実戦図104

実戦図101-104

桒原二段「白は102から104と機敏な動き出しです」

参考図35

参考図35

桒原二段「参考図35のように愚直に1から動けば黒を固めるばかりで白は1目も得をしていません。実戦はこの図より1手ほど省略できています」

実戦図114

実戦図104-114

桒原二段「実戦は白は1子を取り込んで目を確保。黒は中央のカケツギに1手かけた分後手を引きましたが右中央の白への攻めを残しています」

参考図36

参考図36

桒原二段「参考図36の白△のヌキが嫌なのは、図の1から5としかけるコウが残ってしまうことです。黒はコウが弱いので常に気にしなければなりません。こうなってみると黒89の安全策が良かったのかどうか問題になってきます」

実戦図122

実戦図114-122

桒原二段「右辺を打っているあたりまでは黒が良かったのですが、73手目のケイマの逃げ出しから少し形勢を損ねてしまいここでは既に白が良さそうです。115と右辺の白を攻めに行きました。白が安全策をとって116とワリコンでくれたので黒は少し地を得することができ、差を縮めました」

 参考図37

参考図37

桒原二段「しかし116には参考図37の1と下から切れば白はまだ目がないのでこのように追求した方が厳しかったです」

実戦図125

実戦図122-125

桒原二段「実戦は右辺で先手を取り下辺に回るという理想的な展開でしたが、これでもまだ少し白が良かったようです」

聞き手「上野先生はどう思っていらっしゃったのですか」

桒原二段「局後の検討では良い勝負だと思っていたと言っていました。形勢が良くないという判断は後の研究からです」

実戦図129

実戦図125-129

桒原二段「実戦の129がぴったりで左側の白に目がなくなったため白は126から128が良くなかったようです」

 参考図38

参考図38

桒原二段「実戦の126では左下隅の死活の具合もあるので参考図38の白△にツケるのが有力だったという意見で一致しました。白としてはここが一番の決め手だったかもしれません」

参考図39

参考図39

桒原二段「実戦は参考図39のように白の目が一眼しかないので、逆に攻められる危険性があり1のツケが打ちにくくなっています」

実戦図136

実戦図129-136

桒原二段「そこで132の切りから136と目を作りましたが、3手打ったのに2目しかできない効率の悪い連打なので形勢は追いついたようです」

 

 

バックナンバー

著者略歴

  1. 桒原 駿

    平成11年(1999年)4月10日生 東京都出身
    岩田 一 九段門下

    平成28年 夏季入段(平成29年度採用)
    平成31年 二段

    日本棋院東京本院所属

ジャンル

お知らせ

ランキング

閉じる