朝日出版社ウェブマガジン

MENU

音声学者とーちゃん、娘と一緒に言葉のふしぎを見つける

言語学者夫婦、子どもの言い間違いを直さない

「ふみちり、まだ〜?」 

義理の妹が2人目の子どもを産み、当時3歳の上の子を持て余しているようなので、ヘルプに駆けつけた。電車好きの男の子で、車での移動中どうしても「ふみきり」が見たくなったらしい。 

「しげとさ〜ん、ふみりまだ〜?」 

を連呼された。あまりに連呼されて、「エビチリ」が食べたくなった。 

「き」が「ち」になってしまうのは、子育てあるあるだと思う。 

お母さん友達と話していると「うちの子は、まだXXの音が言えなくて〜」とおっしゃる声を耳にする。子どものことに関しては何でも心配になってしまう気持ちは痛いほどよくわかっているつもりだ。だから、この気持ちにもおおいに共感できる。

しかし、我々夫婦はちょっと変わり者なのかもしれないが、子どもの言い間違いを直さず、大事に保護する方針をとることにしている。むしろ他の大人から正しい発音を習ってきてしまうと、ガッカリするくらいだ。なぜ我々は言い間違いを楽しむのか。他のご家庭に押しつけるつもりは毛頭ないが、我々なりの理由を説明しよう。 

第一に、可愛い。子どもらしさが溢れている。特に、下の娘が1歳の時に発した「もえもえちゅん」は破壊力抜群であった。 

もえもえちゅん


●本連載は大幅加筆、改題のち書籍化いたしました(編集部)

バックナンバー

著者略歴

  1. 川原繁人

    1980年生まれ。1998年国際基督教大学に進学。2000年カリフォルニア大学への交換留学のため渡米、ことばの不思議に魅せられ、言語学の道へ進むことを決意。卒業後、再渡米し、2007年マサチューセッツ大学にて言語学博士を取得。ジョージア大学助教授、ラトガース大学助教授を経て、2013年より慶應義塾大学言語文化研究所に移籍。現在准教授。専門は音声学・音韻論・一般言語学。研究・教育・アウトリーチ・子育てに精を出す毎日。著書に『音とことばのふしぎな世界』(岩波科学ライブラリー)『「あ」は「い」より大きい!?:音象徴で学ぶ音声学入門』(ひつじ書房)など。

ジャンル

お知らせ

ランキング

閉じる