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音声学者とーちゃん、娘と一緒に言葉のふしぎを見つける

どうやって音を区切るか、それが問題だ

しりとりが終わらない

上の娘は4歳ごろからしりとりが好きになった。ある日のことである。

娘:マリア
私:アンパンマン……(しまった、「ん」で終わってしまった)
娘:マント
私:!!!

大人であれば「アンパンマン」は「ア」「ン」「パ」「ン」「マ」「ン」と区切るので、最後の音は「ン」である。「ン」で始まる単語は日本語(東京方言)にはないから、私の負けのはず。しかし、娘は「マン」が最後の音だと思っている。



これは、音声学の観点から考えて非常に面白い。人間は、単語を小さな単位に区切ってリズムをとる。どうも、私(=大人)と娘(=子ども)では、その区切り方(つまり、リズムのとり方)が違うらしい。大人は「マ」と「ン」を区切って、2つ分のリズムを振り当てる。子どもは、「マン」を区切らず、1つのリズムとみなしている。


●本連載は大幅加筆、改題のち書籍化いたしました(編集部)

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著者略歴

  1. 川原繁人

    1980年生まれ。1998年国際基督教大学に進学。2000年カリフォルニア大学への交換留学のため渡米、ことばの不思議に魅せられ、言語学の道へ進むことを決意。卒業後、再渡米し、2007年マサチューセッツ大学にて言語学博士を取得。ジョージア大学助教授、ラトガース大学助教授を経て、2013年より慶應義塾大学言語文化研究所に移籍。現在准教授。専門は音声学・音韻論・一般言語学。研究・教育・アウトリーチ・子育てに精を出す毎日。著書に『音とことばのふしぎな世界』(岩波科学ライブラリー)『「あ」は「い」より大きい!?:音象徴で学ぶ音声学入門』(ひつじ書房)など。

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