「連帯の歌」としての少女時代『また巡り逢えた世界』
#少女時代 #소녀시대 #K-POP #케이팝
皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!
第3回は、飯倉江里衣先生(神戸女子大学)。K-POPが音楽的な分野にとどまらず、民主主義や連帯の社会的メッセージにもつながっている現状を教えていただきました!
執筆者: 崔銀景 河正一 飯倉江里衣
金根三 朴天弘 鄭敬珍
https://www.youtube.com/watch?v=0k2Zzkw_-0I
(SMTOWN「Girls' Generation 소녀시대 '다시 만난 세계 (Into The New World)' MV」『YouTube』2011年6月3日)
皆さんは、こちらのK-POPガールズグループ「少女時代」の2007年のデビュー曲『また巡り逢えた世界』を知っていますか。この曲は、かつてはありふれた愛の歌と思われていましたが、今では若者を中心にデモで歌われる「連帯の歌」となっています。
きっかけは、2016年7月28日からソウルの梨花女子大学で、大学経営陣が推進する「未来ライフ学部」新設に反対して始まった学生デモでした[1]。7月30日、崔慶姫総長は大学本館で学生と対話を行うことを約束しましたが、時間になって現れたのは1,600名の警察でした。警察に取り囲まれた学生たちは、恐怖に震えながら互いに腕を組んで歌を歌い始めました。その歌が少女時代の『また巡り逢えた世界』だったのです。この時の映像はSNSで拡散され、ニュースでも取り上げられるなど話題になりました。
梨花女子大の学生たちが歌う姿に誰よりも早く反応したのは、2016~2017年の「ろうそくデモ」に参加した10~20代の女性たちでした。当時の朴槿恵大統領を辞任にまで追い込んだこの「ろうそくデモ」の現場で、10~20代の女性を中心とした若者たちは、『また巡り逢えた世界』を歌い続けました。この歌は、不安だらけの10~20代女性たちに向けて、わずかな希望であっても諦めず、自ら主体的に行動する強さを持つことを訴え、私たちは一人ではなく連帯できるのだと、勇気づける歌として再解釈されたと言えるのではないでしょうか。
その後も『また巡り逢えた世界』は、様々な場面で歌い継がれています。韓国におけるクィア・パレード、フェミニスト集会、2019年4月に憲法裁判所で堕胎罪廃止判決が出た際の歓迎集会、2022年3月の大統領選挙後の「共に民主党」支持者の集会、2022年4月の誠信女子大学における理事会の総長指名結果に対する抗議集会など…。韓国国内のみならず、2019~2021年の香港での民主化運動、2020~2021年のタイでの反政府デモでも若者たちによって歌われました。
おそらくこれからも『また巡り逢えた世界』は「連帯の歌」として、民主主義を訴える現場で人々を勇気づけ支えていくべく、引き続き歌い継がれていくことでしょう。
飯倉江里衣(神戸女子大学)
[1] 「未来ライフ学部」は、高卒の在職中女性が無試験で入学し、2年半で学位取得が可能な学部として新設される予定でした。反対した学生たちは、一般の学生との競争の不公平性、未来ライフ学部内の専攻が純粋な学問とは言い難い美容等の産業分野に偏っていることなどを問題視しました。これは、大学側は高卒在職者を「学生」ではなく「消費者」として扱い、お金さえ払えば容易に学位を与えるという「学位商売」をしており、大学の質・格を下げているという批判でした。さらに、大学側が学生たちの意見を聞くことなく、一方的に事業を推進したことも学生たちの怒りを買いました。