朝日出版社ウェブマガジン

MENU

マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~

似ているようでちょっと違う!日本語と韓国語 ―「-네(요)」は「ね」じゃないの?

#韓国語学習 #한국어학습 #文法 #문법


皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!

第25回も、ひきつづき朴天弘先生(東京大学)です。以前、「しないでね」の「で」と、韓国語の「-고[コ]」について教えていただいたことがありましたね(第7回はこちら)。今回は「ね」と、韓国語の「-네[ネ]」のちがいです!


 執筆者: 崔銀景 河正一 飯倉江里衣  

      金根三 朴天弘 鄭敬珍    


 似ている意味で使われ、さらには響きまで似ていて時々間違った使い方をしてしまう例として、日本語の「ね」と韓国語の「-네〔ネ〕[1]」が挙げられます。これらはそれぞれ「これ、美味しい〔〕!」の「이거 맛있〔〕.[イゴ マシンネ]」、「終わった〔〕。」の「끝났〔〕.[クンナンネ]」などのように、日本語の「ね」と韓国語の「-네」は対応しています。

 しかし、「-네」と「ね」が置き換えられる場合も確かにありますが、完全に同じ意味を持つモノだと信じるには罠が潜んでいます。皆さん、前回の「忘れないでください〔〕。」を韓国語でどう言えばいいのか覚えていますか。「잊어 버리지 마세요.」でしたよね。「-네」は見当たらないこと、気づきましたか。今回は、「-네」と「ね」についてお話します。

 日本語の「ね」は、次のように話し手が聞き手に互いに共有する情報や聞き手が持っているだろうと思うような情報について確認したり同意を求めたりする場合によく使われます。

  ① (外を歩いている二人、AがBに)今日は天気がいい〕。

  ② (料理を一口食べて)美味しい〕。

 または、話し手が聞き手への注意を引いて、共有の話題に持ち込むような場合でも使えます。

  ③ A:連載はいつからですか。

    B:そうだね。えーと、(スケジュールを確認して)来週からだ〕。

 これに対して、韓国語「-네」の主な機能とは、発話時において話し手が初めて気づいたり、わかったりしたことについて、感嘆や驚きを表す場合によく使われます。上記の例を見てみると、①の「天気がいい」、②の「美味しい」、③の「来週からだ」は話し手においては、外に出てはじめて、食べてみてはじめて、スケジュールを確認してはじめて、わかったことがわかります。ですので、次の①’〜③’のように韓国語の「-네」を使うことができます。

  ①’ 오늘은 날씨가 좋〔〕.([オヌルン ナルシガ ゾン〔ね〕])」

  ②’ 맛있〔〕.([マシン〔ね〕])」

  ③’ 다음 주부터〔〕.([ダウム ジュブト〔ね〕])」

 一方、次のようなシチュエーションを考えてみましょう。共同作業で最後の原稿を書いた後、その一人が「終わったね。」と言います。この「終わった〔〕」は、終わったことに対するもう一人の作業者に共感を促すことから、問題なく「ね」が使えますが、韓国語はどうでしょうか。普通なら、韓国語は「끝났다!([クンナッタ]終わった)」のように言ったほうが自然かと思います。自分で原稿を書いて終わったのにもかかわらず、「終わったことについて、今、気づいた」と言うのは不自然だからです。ですが、次のような場合であれば、韓国語で言えるようになります。

  ④ (急いで家に帰ってきたが、ドラマがもう終わっているのを知って)

    아, 끝났〔〕.([ア クンナン〔ね〕]あ、終わってた。)」

 また、日本語の「ね」は、「食べて〔〕。」、レポートなどを「今日までに出して〔〕。」のように聞き手に何かしらの働きかけをする指示などをするときに使って、「食べて。」「今日までに出して。」に比べるとその語感を和らげる効果を持っていると言えます。しかし、韓国語の「-네」にはそのような機能はありません。「-네」を使うためには、発話時においてはじめて気づいた・知ったといった情報が必要だからです。ですので、「食べて〔ね〕。」は「네」なしで、「먹어.[モゴ]」、「今日までに出して〔ね〕。」は「오늘까지 리포트를 내.[オヌルカジ ネ]」となります。「먹어네.(×)[モゴネ]」、「오늘까지 내네.(×)[オヌルカジ ネネ]」とはならないことに注意してください。

 今回は、日本語を韓国語で考えるときの違いとして、日本語の「ね」と韓国語の「-네」を中心にお話ししました。どちらも互いに置き換えられる場合もありますが、基本的には違う形式であること、お分かりになったでしょうか。難しいですか。「아, 어렵〔〕요.[ア オリョンネヨ]あ、難しいです〔ネ〕」の声が聞こえそうですが、韓国語制覇という「宝」を目指して、一歩一歩進みましょうね(한 발 한 발 나아갑시다.[ハン バル ハン バル ナアガプシダ])。

朴天弘(東京大学)

 韓国語ver.はこちら 


[1] 「-네[ネ]」は、後ろに「-요[ヨ]」をつけて、「-네요[ネヨ]」にすれば丁寧な表現に、「-요」がなければ非丁寧な表現になりますが、ここでは日本語の「ね」と比較しやすくするために「-네」として考えます。

バックナンバー

著者略歴

  1. 朴 天弘(パク・チョンホン)

    韓国ソウルの出身。韓国外国語大学で日本語を専攻、2007年から東京大学大学院言語情報科学専攻で言語学を専攻。日本の放送大学やNHKラジオ講座に母語話者ゲストとして出演したことをきっかけに、韓国語を母語ではなく外国語として見るようになる。研究分野は日本語をベースとした意味論や推論、日韓対照研究などに興味を持っていて、今は中国語にも興味がある。いつも楽しく授業ができるように心がけている。現在、東京大学 大学総合教育研究センター、特任講師。

ジャンル

お知らせ

ランキング

閉じる