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マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~

韓国現地リポート-コロナ後の韓国人の生活は「ダングン(人参)」が支える

#당근마켓 #ダングンマーケット #앱 #アプリ


皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!

第29回は、鄭敬珍先生(釜山大学)です。韓国でもコロナの影響で人々の暮らしは大きく変わったようですが、その代わりに韓国で大きく発達したのが「ニンジン」だそうです。いったい何のことでしょうか??


 執筆者: 崔銀景 河正一 飯倉江里衣  

      金根三 朴天弘 鄭敬珍    


 カナダで1年間住むこととなった妹の家族は最近、アプリ「ダングンマーケット」にハマっています。略して「ダングン」と呼ばれるこのアプリは、日本のメルカリのような韓国式フリマアプリのことを指します。妹は「ご近所さんから質の良い服や物を安く買えたんだけど、思わず、ずっとみてしまう」と話していました。 最近では「ダングン貧乏(=ダングンマーケットで過度な支出をすること)」という言葉が流行っているのだとか。

 実にダングンはコロナ禍以降、韓国人の生活を支えていると言えます。2021年の1年間、約1391万の人がダングンのアプリをダウンロードし、現在は5人に1人が週に1度以上ダングンを利用しているということですから、その人気ぶりは凄まじいものです。このようなダングンの人気の背景には、コロナ禍の長期化により狭くなった人々の行動範囲に合わせた、「ハイパーローカル(hyperlocal·地域密着)」サービス市場が急成長したこと、また、在宅勤務が増えたり、長距離外出が減ったことで、いわゆる「スルセ圏(スリッパのような楽な服装で余暇を楽しむ、または商業施設を利用できる住居圏域を指す新造語)」での消費が増えたことなどが挙げられています。 

 ダングンは韓国語で「人参」という意味なのですが、実は「あなたの近く(당신의 근처)」の略語だそうです。その名の通り、ダングンのサービスを利用するためには、実際に住んでいる町内でログインする必要があり、さらに、町内認証を経た地域住民同士が、対面で取引をする仕組みとなっています。

 しかし、コロナ禍においてダングンが一気に注目を集めるようになったのは、フリマアプリとしてではなく、住民間の交流やコミュニケーションを深める媒介となったのがきっかけでした。例えば「どうしてもお菓子とかパンが食べたいのに、コロナに感染し、外に出れません。どなたか買ってきてくれませんか?」という書き込みに、「後でドアノブのところにかけておきますので、品目名と数量を教えてください」と、助けてくれた隣人が現れたり、コロナに感染して自宅待機しているため、薬を買ってきてほしいとか、本を返却してほしいなどといった依頼に応えるケースが多数あったようです。まさに、ご近所だからこそ、できることですよね。

 最近はウィズコロナの雰囲気の中、ダングンでは「一緒にやろう」サービスを再開したそうです。それは公園での散歩、町内での外食のような日常の活動から運動、ゲーム、勉強会、登山、ボランティア活動など、様々な活動を一緒にやりましょう、というネット掲示板のようなもの。このようなフリマアプリのちょっと変わった運用は、やはり「韓国人特有の情」を土台としていると私は考えています。

 ダングンは現在、グローバルバージョンの「KARROT(キャロット)」を発売し、アメリカ、カナダ、イギリス、日本の4カ国でサービスを展開しています。日本では「お住まいのまちのフリマアプリ」をキャッチフレーズとして掲げているようですが、韓国式「一緒に」サービスが日本でも成功できるか楽しみです。皆さんも「ダングン」してみませんか。

鄭敬珍(釜山大学)

 韓国語ver.はこちら 


日本のダングンホームページ https://jp.karrotmarket.com/

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著者略歴

  1. 鄭 敬珍(ジョン・ギョンジン)

    海雲台で有名な港町・釜山で生まれ育った。大学で日本文学を学び、卒業後はすぐ就職の道へ。11年間勤めた会社を退職し、2012年から法政大学大学院で日本文学(近世文学)を専攻した。主な関心事は、江戸と朝鮮時代における人々の暮らしや交流。好きな日本語は「一期一会」。韓国に帰国してからは、授業や研究活動を通して江戸文化をメインに日本文化や日本人の暮らしを紹介することに力を入れている。 現在、韓国・釜山大学 人文学研究所、研究教授。

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