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マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~

韓国型ニューディール、世界初のグリーン・リカバリーの推進

#グリーン・リカバリー #그린리커버리 #持続可能な社会 #지속가능한 사회


皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!

第10回は、前回にひきつづき金根三先生(志學館大学)です。「ニューディール」とは、国家が社会経済への介入や投資を積極的に進める政策ですが、コロナ禍を逆手にとって、韓国ではこれを現代版にアップデートしようとしているそうです。


 執筆者: 崔銀景 河正一 飯倉江里衣  

      金根三 朴天弘 鄭敬珍    


 皆様はグリーン・リカバリーという単語を知っていますか?これは、OECDが2020年に発表した報告書で言及された、「コロナ禍という未曾有の危機の中で世界経済の復興にあたって、単純に経済や生活を戻すだけではなく、気候変動や社会保障の充実などの社会問題を解決した持続可能な社会を目指す」という内容を意味します。具体的には、まず、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及や、省エネルギー、電気自動車の購入補助などで、温室効果ガスを削減する脱炭素社会へ移行しながら、経済発展を行うことを指します。それと同時に、既存産業の労働者たちを新しい産業で雇用できるよう、セーフティーネットを手厚く支援するなどを含む社会保障の充実も図ります。

 韓国では2020年7月に、国単位では世界初のグリーン・リカバリー戦略である「韓国型ニューディール」が始まりました。これは、「デジタル・ニューディール」「グリーン・ニューディール」「ヒューマン・ニューディール」の3つで構成されています。デジタル・ニューディールでは、公共サービスやデータ、教育、行政、社会インフラなどのデジタル化を図ります。グリーン・ニューディールでは、2050年までにカーボンニュートラル(炭素の純排出量を0とする)を実現するための再生可能エネルギー分野の強化はもちろん、既存の産業からグリーン産業への移行を行います。そして、ヒューマン・ニューディールでは、これらデジタルとグリーン・ニューディールを支える雇用・福祉・人的投資を強化する役割を担います。この韓国型ニューディールは、2020年度から2025年度までの中長期財政投資計画として、総額220兆ウォン(約20兆円)規模の予算が組まれています。

 日本でも、2020年10月に当時の菅義偉総理が2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を発表しました。ここでは、環境保護と持続可能な生産活動ができるように産業構造と社会経済に変革をもたらし、次なる成長につながることを目標としています。まさに「経済と環境の好循環」という「一石二鳥な」政策です。ただ今の時点では、両国ともに核廃棄物問題を解決できないまま原子力発電を再生可能エネルギーの中で推進することとなっており、完全なグリーンであるのかは議論の余地があるでしょう。

金根三(志學館大学)

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著者略歴

  1. 金 根三(キム・グンサム)

    日本が肉眼でみえる釜山で生まれ育った。少子高齢化という同じ課題を抱えている日本で社会保障財政の研究をしたいと思い、2007年から立教大学大学院で経済学を専攻した。研究分野は日本と韓国の地方財政改革と社会保障制度の比較。現在は、桜島と錦江湾が眺められる鹿児島で経済学と財政学を教えながら、研究活動を続けている。また、2017年から韓国語講師としてもたくさんの日本人の皆様と交流を重ねている。現在、志學館大学 法学部、講師。

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