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マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~

フェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』を読もう

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皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!

第6回は、飯倉江里衣先生(神戸女子大学)。前回は音楽と社会のつながりを取り上げていただきましたが、今回は文学から。社会の生きづらさを描いた韓国のベストセラー小説について、やさしく教えていただきます。


 執筆者 崔銀景 河正一 飯倉江里衣  

      金根三 朴天弘 鄭敬珍    


 皆さんは、『82年生まれ、キム・ジヨン』を読んだことがありますか。本書は、韓国で2016年10月に刊行されて以降、累積136万部の大ベストセラーを記録するチョ・ナムジュのフェミニズム小説です。日本では2018年12月に筑摩書房から翻訳出版され、2022年9月末現在まで約23万部も売れているそうです。日本では、10万部以上を売り上げた書籍はベストセラーといわれますので、本書がどれほど日本でも支持を得ているか、お分かりになるでしょう。

 本書の主人公は、1982年生まれで、1歳の娘と夫の3人で暮らす33歳の韓国人女性キム・ジヨンです。キム・ジヨンというのは、1982年生まれの韓国人女性に最も多い名前で、ごく普通の韓国人女性を体現する意図でつけられています。本書は、精神科医による彼女のカウンセリング記録という体裁をとり、女性たちが幼少期から感じる様々な葛藤、悩み、疲労、苦労、痛み、悔しさ、悲しさ、苦しさ、辛さ、そして理不尽さ、プレッシャー、恐怖、挫折、絶望などを描いています。

 キム・ジヨンという韓国人女性の話から、皆さんは何を感じるでしょうか。現在の日本の若者からすると、本書は一回りほど年上の韓国人女性の話であり、「1982年生まれが33歳時」という2022年からみると7年前の設定である点や、ジヨンの母親世代の話、韓国の家族行事の様子などについてはピンとこない部分があるかもしれません。それでも本書から、今まで認識していなかった女性差別に気がつき、自分自身のことを振り返って、涙を流す女性も少なくないのではないでしょうか。

 私の大学のゼミでは、本書を読んだ学生たちから様々な感想が語られ、議論が盛り上がりました。ジヨンの夫は、彼なりに妻を理解し味方になろうと努力していますが、「これが夫と言えるのか」と怒りを露わにした学生もいました。また、2019年に本書は韓国で映画化され、日本でも2020年に映画が公開されましたが、ゼミでは、小説と比較した場合の映画に対する批判もいくつか出ました。例えば、小説に登場する精神科医は男性ですが、映画では女性の設定に変更されていて、これは小説の意図を台無しにしているのではないか、等々…。

 皆さんも、ぜひこの本を読んでみて、周りの人と感想を語り合ってみてはいかがでしょうか。

飯倉江里衣(神戸女子大学)

 韓国語ver.はこちらから 

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著者略歴

  1. 飯倉 江里衣(イイクラ・エリイ)

    専門は朝鮮近現代史。東京外国語大学外国語学部東アジア課程朝鮮語専攻在学中に韓国ソウルの延世大学校で1年間の交換留学を経験。学部卒業後、同大学大学院の博士前期課程および博士後期課程で、日本の植民地支配下で中国東北地域(「満洲」)に渡った朝鮮人の歴史を研究。日本軍「慰安婦」問題、徴用工問題、在日朝鮮人の歴史・現在などを大学で教えつつ、韓国のフェミニズム、韓国ドラマ・映画 、K-POP についても勉強しながら授業に生かしている。現在、神戸女子大学 文学部 国際教養学科、助教。

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