ネット上で政治参加が可能?韓国のインターネット事情
#民主主義 #민주주의 #オンライン党員 #온라인당원
皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!
第17回は、金根三先生(志學館大学)。韓国では、単なる感想コメントだけでなく党内の投票や政策決定まで、現実の政治活動がネットと連続した民主主義になっている様子を教えていただきました。
執筆者: 崔銀景 河正一 飯倉江里衣
金根三 朴天弘 鄭敬珍
2000年代からインターネットの普及が世界で類を見ないほど急速に拡大した韓国。いまだに世界でインターネットの通信速度が速いランキング上位の国であるだけあって、ネット上でも政治に関する議論が活発に行われています。そもそもネット政治が注目されたきっかけは、2003年の大統領選挙でした。当時、党内で基盤が弱かった廬武鉉(ノ・ムヒョン)候補は、インターネットでマニフェストを公開するなど、支持者たちとの積極的な交流を通じた選挙運動で新たな支持者をたくさん集め、最終的には大統領に当選されることになりました。それ以降、保守勢力や進歩勢力を問わず、ネット上での政治運動を活発にするようになり、今日に至っています。
ポータルサイトのNaverやDaumで掲載されている政治記事をみてみると、コメントで熱烈な議論が繰り広げられています。昔は、特定政治家や政党に所属して党員として政治活動をすることが一般的でしたが、今はネット上で多様な価値観をもつ一個人がリアルタイムで自分の意見を言うことができる時代になりました。しかも政府の政策について日々書き込みをしながら、同じ意見の人同士で集まったり、異なる意見の人同士が議論をしたりもします。まさに古代ギリシアのアゴラのような直接民主主義がネット上で繰り広げられると言っても過言ではないでしょう。それぞれの理念や価値観が交錯しながら毎日のように数多くの書き込みがアップされているのです。また時にはネットにとどまらず、実際に広場で集まって集会やデモを行うこともあります。政府による不当な政策への抗議や、大統領の弾劾などを主張する時に登場するろうそくデモは、ネットを通じて自発的に集まった人々によって開かれることが多いです。
また、近年では、自分の政治観に合う政党にオンラインで加入する人々も増えています。そこでは、サブスクのような感覚で、ネット上で所定の党費を払って登録すると政党のオンライン党員として活動もできたりします。党の政策に対してコメントで参加も出来ますし、昔はオフライン党員や党内委員のみによって選抜された代表もオンラインで投票することができます。これにより、より多様な世代且つ価値観を持つ人々が気軽に政党の活動に参加できるようになったのも画期的なことと言えます。
デジタル技術の発達によって昔よりも積極的な政治活動がみられるようになったのは、単に政治を政治家にすべて任せるのではなく、日ごろから一般市民自身が政治を自分の事として捉えているという姿勢を表しているとみても良いかもしれません。既存の間接民主主義を補完するネット上での一般市民たちの政治活動は、民主主義の新しい形態として、注目するべきではないでしょうか。
金根三(志學館大学)