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マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~

韓国の民主主義と経済発展 1987~2022、そして…

#大統領制 #대통령제 #民主主義 #민주주의


皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!

第12回は、金根三先生(志學館大学)。今回は韓国の現代史について教えていただきました。その歴史は、保守政権と進歩政権が交代しながら作り出すダイナミズムによって支えられているとのこと。そして日本と共通する課題にも注目です。


 執筆者: 崔銀景 河正一 飯倉江里衣  

      金根三 朴天弘 鄭敬珍    


 皆さんは韓国と日本の政治システムを比べた時、一番異なるものは何であると思いますか?おそらく多くの方は真っ先に大統領の存在に気が付くことでしょう。韓国は1948年に政府を樹立してから大統領制を維持していますが、今のように5年ごとに国民の直接投票で政権を変えることになったのは1987年の市民革命からです。では、経済の面ではどうでしょう?日本と同じくOECD(経済発展開発機構)加盟国として先進的な資本主義経済の国であるので、一見、日本とそう変わりがないように見えます。しかし、韓国の現代史は、日本以上に民主主義の発展と資本主義経済の高度化が歴史そのものといっても過言ではありません。

 韓国では、朝鮮戦争が終わり約10年後の1961年から1993年までの長い間、軍部政権が台頭し、国民の直接政治参加と言論の自由を制限しており、経済面では特定の財閥を中心に計画経済に近い国家主導の経済発展を図ってきました。1980年代の半ばまでは高度成長はあったものの、多くの自由が制限されていた時代でもあります。ですが、1988年ソウルオリンピックの前年度である1987年6月、市民たちの大規模なデモ活動により大統領選挙における直接投票権が復活し、1993年は民間出身の金泳三大統領が当選、軍部政権の時代は幕を閉じました。それ以来、「世界化(세계화)」という名の下で金融部門の急激な規制緩和を行いますが、その直後に1997年のアジア金融危機が直撃、IMF(国際通貨基金)に救済金融を申請するほどの経済危機に陥ってしまいます。IMFから要求された市場の開放や財閥の解体、非正規雇用の拡大など新自由主義的な経済構造改革を余儀なくされた韓国社会は大きな混乱を経験します。しかし、IT産業育成を中心とした経済政策が実を結び、2000年代になってから次第に経済が回復するようになりました。また、本格的に弱者を配慮する社会保障政策が拡大されたのもこの頃からです。

 その後、韓国政治は、より市場経済を重視する保守政権と、より社会保障を重視する進歩政権が交互に政権を取りながら、今日に至っています。その間国民たちは選挙の時以外でも、さまざまな経済社会的な懸案に対して平和的なろうそくデモなどを行い、直接声を上げてきました。例えば、不正腐敗がある大統領については弾劾をした後、平和的な選挙で新しい代表を選びました。経済分野では、とりわけデジタル産業ではSAMSUNG、LGなど、世界的な企業もいくつか名を連ねています。ただし、所得格差や高い比重を占める非正規雇用、高い水準の家計負債など、経済危機当時の傷もまだ完全に治っていない点は、これからの韓国社会にとって大きな宿題となっています。成熟した民主主義によって、経済発展と社会保障の両立を図っている昨今の韓国社会は、これをどう乗り越えていくのでしょうか。

金根三(志學館大学)

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著者略歴

  1. 金 根三(キム・グンサム)

    日本が肉眼でみえる釜山で生まれ育った。少子高齢化という同じ課題を抱えている日本で社会保障財政の研究をしたいと思い、2007年から立教大学大学院で経済学を専攻した。研究分野は日本と韓国の地方財政改革と社会保障制度の比較。現在は、桜島と錦江湾が眺められる鹿児島で経済学と財政学を教えながら、研究活動を続けている。また、2017年から韓国語講師としてもたくさんの日本人の皆様と交流を重ねている。現在、志學館大学 法学部、講師。

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