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マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~

似ているようでちょっと違う!日本語と韓国語 ―「맞는다」と「맞다」どっちが맞아(合っている)?

#韓国語学習 #한국어학습 #文法 #문법


皆さんの「そうそう!これ、聞きたかったぁ~」に答える連載『マニマニ教えて!今の韓国ヨギヨギ~(たくさん教えて!今の韓国こっちこっち~)』です。韓国で、または日本で韓国関連分野を研究している先生たちが今の韓国についてやさしく解説してくれます!韓国語版おまけ付きで、言葉の勉強もできるなんてチョアヨ(素敵です)>_< 連載を読み終える頃には、あなたも韓国通になっているかも?!

第22回は、朴天弘先生(東京大学)です。今回は、厳密な文法としては誤用かもしれないけれど、一般に広く浸透している韓国語の表現の面白さについて教えていただきます。


 執筆者: 崔銀景 河正一 飯倉江里衣  

      金根三 朴天弘 鄭敬珍    


 韓国ドラマの中で男女が話しているシーンを思い浮かべてください。女性が何かを思い出したかのように大きい声をあげます。そして、字幕には「아, 맞는다[ア、マンヌンダ]!」。皆さんはこうした場面を見たことがありますか。これを見て「何か変だ」と思う人もいるでしょう(私もその1人なんですが)。日本語では「あ、そうだ!」「そういえば」の表現に該当しますが、何かを思い出したこと(記憶の想起)を表す表現(感嘆詞の用法)はよく「아, 맞다! [ア、マッタ]!」のほうが聞き慣れている学習者が多いかと思います。では、どっちが「맞을까요?([マズルカヨ]合っているのでしょうか)」。まず、日本語と違う韓国語の特徴について簡単に説明します。韓国語は動詞と形容詞において現在形(非過去形)や連体形の活用が異なります。例えば、連体形(現在)の場合は動詞の基本形の語幹の後に「-는[ヌン]」を、形容詞の場合は語幹(最後が子音で終わるか母音で終わるかによって)の後に「-(으)ㄴ[(ウ)ン]」をつけます。また、現在形(非過去形)の場合でも、形容詞は基本形のそのままの形で使えますが、動詞の場合は基本形の語幹(最後が子音で終わるか母音で終わるかによって)の後に「-ㄴ다[ンダ]/-는다[ヌンダ]」をつけなければなりません。

 では、「맞다[マッタ]」について見てみましょう。「맞다」は次の例のようにいろんな意味として使われますが、「動詞」なので、次のように使われます。

  ① 공이 머리에 맞는다.([ゴンイ モリエ マッタ]ボールが頭に当たる。)」

  ② 형에게 맞는다.([ヒョンエゲ マッタ]兄に殴られる。)」

  ③ 비를 맞는다.([ビル マッタ]雨に降られる。)」

  ④ 주사를 맞는다.([ジュサル マッタ]注射を打つ(打たれる)。)」

 上記の例のいろんな「맞다」は「ある動作や動きを表す」動詞なので、現在形(非過去形)は「맞는다[マンヌンダ]」となります。問題は、次のような「맞다」の場合です。

  ⑤ 선생님 말이 맞다!([ソンセンニム マリ マッタ]先生の言うことが正しい!)」

    정답이 맞다!([ジョンダビ マッタ]答えが合っている!)」

  ⑥  (感嘆詞の用法としての)아, 맞다!([マッタ]あ、そうだ!)」


 ⑤の「맞다」は「合っている、一致している、正しい」などの形容詞的な意味に近い意味として使われる場合で、⑥は感嘆詞の用法のような特集な意味として使われる場合です。しかし、まだ動詞にしか認められていないので、「선생님 말이 〔는다〕!(先生の言うことが正しい!)」、「정답이 〔맞는다〕!(答えが合ってる!)」、「아, 〔는다〕!(あ、そうだ!)」と言うのが規範的には正しいです。しかし、韓国語の母語話者の間ではこれを「맞는다」ではなく「맞다」で言う人が多いです。特に⑥のような場合は、「맞다」のほうが主流だと思います。

 これは、動詞の「맞다」を形容詞(または、⑥のように感嘆詞として)として認識しているとも言えますが、韓国語は動詞と形容詞が明確に区別できない場合もあります。「늦다[ヌッタ]」の場合がそうですが、「늦다」は動詞の「遅れる」の意味としても、形容詞の「遅い」の意味としても使われます。例えば、「약속 시간에 늦는다[ヤクソク シガネ ヌンヌンダ]約束時間に遅れる。」や「늦은 시간[ヌズン シガン]遅い時間」のように、ですね。前者は「늦는다」のように動詞活用(非過去形)をしていて、後者は「늦은」のように形容詞活用(連体形)をしています。もしかしたら、母語話者の頭では「맞다」は「늦다」のように、動詞の「맞다」と形容詞の「맞다」があると考えるようになって、「合っている、一致している、正しい」などの意味を持つ「맞다」は形容詞(または、感嘆詞)として使い分けしているかもしれません。

 しかし、まだこのような「맞다」の使い方が正しい表現として認められているわけではありません。「ことばのゆれ」として「誤用」であるかもしれませんが、同時に「아, 맞다!」のような言い方が我々の言語生活の中に深く浸透しているのも否定できません。これから「아, 맞다!」が生き残って一つの地位を獲得するのか、「아, 맞는다!」に強制的に直されて無くなるのか、今後の動向が楽しみです。皆さんも「あ、そうだ!」や「合っている、正しい」の意味として「맞다」が使われる場面を目撃したら、「맞다!」だったか「맞는다!」だったか、確かめてみてください。

朴天弘(東京大学)

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著者略歴

  1. 朴 天弘(パク・チョンホン)

    韓国ソウルの出身。韓国外国語大学で日本語を専攻、2007年から東京大学大学院言語情報科学専攻で言語学を専攻。日本の放送大学やNHKラジオ講座に母語話者ゲストとして出演したことをきっかけに、韓国語を母語ではなく外国語として見るようになる。研究分野は日本語をベースとした意味論や推論、日韓対照研究などに興味を持っていて、今は中国語にも興味がある。いつも楽しく授業ができるように心がけている。現在、東京大学 大学総合教育研究センター、特任講師。

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