“一”に御用心
字謎で最もよく使われる字は何か。誰もこんな統計をとったことはないが、わたしはひそかに「それは“一”ではないか」と思っている。“一”は字謎の本文に実によく出てくる。よく登場するとは有能な働き者ということだ。
例えばこんな字謎がある。
①一撇。 Yì piě. (ひとハネ)
「ひとハネ」とは漢字の筆画のハネ一つ。片仮名の「ノ」のような形だが、これでは字にならぬ。そこで本文をもう一度眺め、「と」と解釈し、“厂”chǎng の解を得る。つまり“一 ”を「ひとつの(ハネ)」と読むか、「一」自体と捉えるかがポイントなのである。ここでも「メタ言語的に読め」が効いている。
次の問題は答えが二通りある。“一”をどう読むかにかかっている。
②两人少一人。 Liǎngrén shǎo yì rén.
もし“一人”を「ひとりの人」と解釈すれば“两”から“人”をひとつ取り去り“丙”bǐng が答え。もし“一人”を文字通り「“一”と“人”」と読めば、答えは“内”nèi となる。“一”をどう読むかに関わっているわけだ。
③十两加一点。 Shíliǎng jiā yì diǎn.
まず、“十两”とはイコール一“斤”と考える。これは換算の考え方で,いずれ詳しく解説することにしよう。
これに“一点”を加え“斥”chìの解を得る 。ここでの“一”は「ひとつの」の方だ。
④口小一点,样样都有。 Kǒu xiǎo yì diǎn,yàngyàng dōu yǒu.
「口が少し小さい」のではない。“口·小·一·点”すべて合体させる。すると“京”jīng ができる。下句は「京(みやこ)なら何でもある」という,これは意味を表している。ここでの“一”は「一」という文字自身を表している。“一”がどちらに解釈されるかは,その都度気をつけることになる。
次も同じ趣向だが、やや上級者向け。
⑤父亲多一点文才。 Fùqin duō yì diǎn wéncái.
いきなり解を明かしてしまうと“效”xiào 。“父”の上に“一”と“点”が乗っかっていることを確認されたい。なお“文才”は“攵”fǎnwénpáng (ぼくづくり)が担当している。こういうところが上級者向けとされる。
次も“一点”を含む問題だが、字謎傑作の一つ。
⑥加减乘除少一点。 Jiā jiǎn chéng chú shǎo yì diǎn.
(加減乗除に一点不足)
「加減乗除」、つまり+-×÷を適当に組み合わせて漢字を作るのである。但し、“一点”だけ少なくするという。この答えは“坟”fén 。+,−,×があり,÷だけは下の“一点”少ない。
「ウーン」と唸ってしまう。
◆練習問題
[答えは、漢字一文字です。"解答を表示”の左の黒い三角をクリックすると見られます。]
1 百里挑一。
白 (百から一をトル)解答を表示
2 令应少一点。
今(令から点をトル)解答を表示
3 十一点进厂。
压(厂の中に十一と点が入る,日本の圧よりも点が一つ多い)解答を表示
4 去一人还有一口,去一口还有一人。
合(一人が去るも口ひとつ残り,口が一つ去るも一人が残る)解答を表示