歇後語型
謎の本文だけを眺めていたのでは、絶対に答えの出ない字謎がある。例えば、
①水落 shuǐ luò
「水が落ちる」だからと、“落”からさんずいを取り去っても字にならない。さて、困った。なんとなく気になるのは“水落石出”shuǐ luò shí chū という四字成語の存在。「水落ちて石出ず」、物事の真相があきらかになるという意味だ。そんなことを思いつつも、例によって堪え性がなく解答を見ると、“础”chǔ とある。やはり、成語の後半“水落石出”がきいているのだ。表面に出ていないものが、実は問題文の役を果たしている。
この手の字謎は他にも、
②语重 yǔ zhòng
③早春 zǎo chūn
などがある。“语重”とくれば“心长”xīn cháng が続く。かくて②は“怅”chàng ができる。③は“早春二月”という言葉があり、“月”が二つで“朋”péng が解。
いずれも誰もが知っている成語やフレーズで、“水落”とか“语重”と言えば、慣性の法則が働き、後の言葉が自然と口をついて出るものらしい。パッと出てこないとすれば、己れの中国語のレベルがまだ低いのである。“摸棱”mōlíng といえば“两可”liǎng kě と続かなければウソ。そこで“哥”が答え。“一朝”yì zhāo なら“一夕”yì xī で“歹”dǎi が得られる。いずれも四字の固定フレーズだ。
もう少し続けよう。今度は後半の二字をあらかじめ[ ]内に示す。これならば解けるであろう。
④一马 yì mǎ [当先]dāng xiān
⑤寻根 xún gēn [究底]jiū dǐ
今度のはしかし“当先”や“究底”を足し算してもダメである。これは前にやった「指示型」字謎の要領である。“石头”なら“石”の頭で“一”、“田中”なら“田”の中で“十”というあれである。④は“当”の先っぽで“小”、⑤は“究”の底で“九”が求める答え。
この字謎は肝腎の問題文になるところを伏せている。こういうのを解けるようになるにはさぞかし何百もの成語を覚えなくてはと思われるかも知れないが、その心配は無用。成語辞典をめくってみたが、実際に字謎にも応用できる、そんな好都合な成語はそうはない。
肝腎なところを言わないといえば、中国のことば遊びの一種――“歇后语”xiēhòuyǔ が思い浮かぶ。実のところ歇後語もその一部が字謎としてかりだされている。
⑥猴子爬树 Hóuzi pá shù [拿手]ná shǒu
「猴の木登り――お手のもの」。この後半は隠して出さず、字謎を解く者はまず“拿手”が分かった上で、これをメタ言語的に「手ヲトル」と解し“拿”から“手”をトリ、“合”hé の答えに辿りつくのである。