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中国文字謎 入門講座

字謎をこえて

字を当てるだけじゃもの足りない。という向きには、地名や人名を当てさせる“地名谜”や“人名谜”が用意されている。

 まず中国の地名から。と言っても私たちが知っているのは省都や観光地といった有名な所だけ。以下に挙げるのはまあせめてこれぐらいは常識として心得ておきましょうという十題。

 

  ①金银铜铁。 Jīn yín tóng tiě.  (无锡)Wúxī

 

  ②自相矛盾。  Zì xiāng máodùn.    (开封)Kāifēng

 

  ③一路平安。 Yí lù píng’ān.    (旅顺)Lǚshùn

 

  ④起锚扬帆。  Qǐ máo yáng fān.    (上海)Shànghǎi

 

  ⑤双喜临门。  Shuāng xǐ lín mén.  (重庆)Chóngqìng

 

  ⑥带枪的人。 Dài qiāng de rén.  (武汉)Wǔhàn

 

  ⑦已建首都。  Yǐ jiàn shǒu dū.    (成都)Chéngdū

 

  ⑧日落西山。  Rì luò xī shān.     (沈阳)Shěnyáng

 

  ⑨四季花红。  Sì jì huā hóng.     (长春)Chángchūn

 

  ⑩银河渡口。 Yín hé dù kǒu.     (天津)Tiānjīn

 

 いずれも素直で、無理のない問題である。上海などは④の他にも“大江东去”dàjiāng dōng qù とか“巨轮出港”jù lún chū gǎng “舍车登舟”shě chē dēng zhōu などの謎が作られているが、首都北京が意外にも少ない。それでも一つ、

 

  ⑪背景分明。  Bèijǐng fēn míng.  (北京)Běijīng

 

というのがあった。“背景”から“明”を分(わか)れさせよという意図でどうも他の地名シリーズと比して味わいに乏しい。天津などは、

 

  ⑫日工资。 Rì gōngzī.  (天津)

 

などというのもある。「日銭」という発想で、“津”を「渡し場」ではなく“津贴”jīntiē の方でとらえている。

 もう少し、中国の地名謎を補っておこう。

 

  ⑬差不多。  Chàbuduō.

 

  ⑭萤火虫。  Yínghuǒchóng.

 

  ⑮北风吹。  Běifēng chuī.

 

ここらあたりになると、なじみが薄いせいかかえって面白い。⑬は“大同”Dàtóng 、⑭はホタルで“昆明”Kūnmíng 、昆虫で明るく光るものということなのだろう。⑮は北風が吹けば、雲は南へ吹き流されて“云南”Yúnnán 。

 

 次は日本の地名シリーズ。これは!と思うものは少ないが、よく見かけるのをまず五題ほど紹介しよう。

 

  ⑯仙居。 Xiān jū.                               (神户)Shénhù

 

  ⑰天宫。  Tiān gōng.                              (神户)Shénhù

 

  ⑱赛跑到终点。 Sài pǎodào zhōngdiǎn.            (冲绳)Chōngshéng

 

  ⑲好学者不耻下门。 Hǎo xuézhě bù chǐ xià mén.   (爱知)Àizhī

 

  ⑳海中大陆。 Hǎi zhōng dàlù.                    (广岛)Guǎngdǎo

 

この中では⑱の沖縄などは傑作といってよい。「仙台」を当てさせるものに

 

  ㉑人到山边治水去。 Rén dào shānbian zhì shuǐ qù. (仙台)Xiāntái

 

というのがある。人が山にゆき“仙”、次に“治”から水を去り、“台”だ。もちろん、中国や日本以外の、外国の国名・地名を当てさせるものもある。

 

  ㉒他们二人都去。 Tāmen èr rén dōu qù.           (也门)Yěmén

 

  ㉓渴望天亮。  Kěwàng tiān liàng.                  (巴黎)Bālí

 

 こんな風に、字謎の向こう側には、地名・人名はもとより四字成句、魯迅の筆名、古典詩の一句、書名、映画や芝居の名等々を当てさせる、それこそ外国人にはよほどの教養がないと太刀打ちできぬものがごまんとひかえている。これらはしかし、この講座の範囲を超えている。個々人の興味と研鑽に待ちたい。

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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