好きな字謎
字謎好きが集まり、二ヶ月に一度ぐらいの割で会を開いている。それぞれが問題を十題持ち寄る決まりだ。メンバーは九人だから、これで九十題。お茶を飲みながらワイワイやる。たっぷりと半日がとこかかる。至福の時でもある。
こちらが出題した字謎を、次々とあっさり解かれてしまうとどうも面白くない。と言って、難問を並べても評判が悪い。程よい難しさがあり、解きおえて「ウーン、なるほど、やられたか」と一声あがるのがよい。解法に無理があるとブーブー文句を言われたりする。
どんな字謎を選んでくるかにその人の個性が現れる。
奇妙な味の字謎が好きな人もいれば、平明な中にウィットが感じられるものを好んで持ち寄る人もいる。
私の好きな字謎はといえば、どうもカタチにポイントを置いたものが多いようだ。例えば、
①比天还高。 Bǐ tiān hái gāo.
なんていうのは、天の頭をちょっと突き出させ、天より高い“夫”fū を作る。そこが嬉しい。
②转过身,变成人。 Zhuǎnguò shēn,biàn chéng rén.
「身をひるがえすと人になる」。これは“入”rù が答えだが、よく考えついたものだ。関心を通りこして感服する。これも“人”と“入”のカタチに着目したもの。言われれば、ナルホドと分かるけど、「人」と「入」の反転関係を最初に発見し字謎に造りあげた人は偉い、と思う。
次に紹介するのは、私が字謎に手を染めた頃に出会って、いたく感動した作品である。
③小勺儿, Xiǎo sháo’ér, 小さなシャクシで
炒豆儿, chǎo dòu’ér, 豆を煎る、
炒了仨, chǎole sā, 三つ煎ったが、
蹦了俩。 bèngle liǎ. 二つは外へとび出した。
まず∪という杓子を描く。そこに豆、これは丸い点でよい。3つのうち一つは杓子の中へ、あとの二つは右と左へとび出した。するとこれで字になっているではないか。 “心”xīn という一字をこんな風に表現するとは!
なによりも“心”というのは、小さなシャクシでパチパチ豆を煎る姿だというのがいい。元気が出てくる。同じ趣向で、
④一勾残月带三星。 Yì gōu cányuè dài sān xīng.
「一片の残月に三つの星」というのもあるが、こんなとりすましたものより、ぴょんぴょんはねる豆の方が断然よい。
今回は好きな字謎の話をしたから、練習問題とか、字謎のメタ言語的解釈とかいうのは一切おやすみ。