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中国文字謎 入門講座

さまざまな演算子

 字謎というのは、ともかくある字を造り出すわけだから、問題文の中にその造り方が暗に明に示されている。

 最も普通の指示は「足しなさい」と「引きなさい」であった。

 

  ①家中添一口。 Jiā zhōng tiān yì kǒu.

 

  ②中加一点。 Zhōng jiā yì diǎn.

 

はじめのは“家”の中へ“一口”を入れて“豪”háo 。②は“中”と“一点”を合体させて“虫”chóng 。これはどちらも足し算である。

今度は引き算。

 

  ③往左边去。  Wǎng zuǒ biān qù.

 

  ④粮食外运。  Liángshi wài yùn.

 

“往”の左側を去る、と読んで“主”zhǔ が答え。次の④は“粮”から食べものを外へ運び出してしまう。食べものとはこの際“米”である。“粮”から“米”を引いて“良”liáng が答え。

 

 「足す」と「引く」の他にもいろいろある。ちょっと変った演算子を紹介しよう。次に並べるのは、これまで既にやったものばかりだ。どんな演算・操作をするのかに注意して再挑戦してみられたい。

 

  ⑤转过身,变成人。 Zhuǎnguò shēn,biànchéng rén.

 

  ⑥一上就同。 Yí shàng jiù tóng.

 

  ⑦主动一点。 Zhǔ dòng yì diǎn.

 

⑤は“入”が答え。クルリと身をひるがえすと“人”になる。⑥は「一が上がると“同”になる」のだから、“一”をどんどん下へおろしてくると“回”huí になる。⑦は“主”の一点を動かして“玉”yù 。点の移動というのが面白い。これにちなんだものをもう一題。

 

  ⑧动一动吧。 Dòng yi dòng ba.

 

今度は何を動かすのか。「字謎に遊び字なし」と言う。ムダな字はない。この場合は文末の“吧”も勘定に入れ、「“吧”をちょいと動かせ」と読む。かくて、“邑”yì ができあがる。

 

  ⑨散而复聚。 Sàn ér fù jù.

 

というのはどうか。“散”sàn とは「バラバラにする、散らす」。何をバラバラにするのか、目的語は“而”で、ここが肝心なところ。つまり「“而”の字をバラバラにして復聚(またあつ)めよ」という趣旨だ。かくて“而”を組みかえて“血”xiě が解。何をバラすのかを見つけるのが難しいが、意外な答えができるので解けた時は面白い。

 

  ⑩小米二字调整。 Xiǎo mǐ èr zì tiáozhěng.  (打一食品)

 

“小米二字”を調整せよ。これはある食品名を当てさせるもの。「小·米·二·字」を適当に解体して組み替える。あれこれいじりまわして“粽子”zòngzi ができた時は快哉を叫ぶ。

 演算子としてはもう一つ、“残”cán を覚えておきたい。“残”とは「一部が欠けていて、不完全」という意味。例えば、

 

  ⑪身残心不残。 Shēn cán xīn bù cán.

 

なら“身”の一部を欠けさせ、これと“心”を合体させ“息”xī が答え。繁体字を応用する例だが、

 

  ⑫残风。 Cán fēng.

 

という問題で、“虱”shī というのもある。

 

 

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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