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中国文字謎 入門講座

ヒネリをきかせた加減算

字謎の足し算・引き算に慣れたあたりで、ちょっとヒネリのきいた加減算を紹介しよう。

 

  ①有刀就割。  Yǒu dāo jiù gē. (刀があれば切る)

 

 いま、我々の求めている解をXとする。そのXは「もし刀があれば割(き)る」というのである。これを式に書き表せば、

 

  X+刀=割

 

となる。Xを求めるには、

 

  X=割-刀

 

すなわち、“割”から“刀”つまり“刂”を引いて“害”hài を得る。この要領で早速次なる類例を試されたい。

 

  ②得水便湿。 Dé shuǐ biàn biàn shī. (水を得れば湿(しめ)る)

 

  ③出头即失。 Chū tóu jí shī. (頭を出せば失う)

 

  ④有脚就跑。 Yǒu jiǎo jiù pǎo. (足があれば跑(かけ)る)

 

さほど難しくない。②は“显”xiǎn 、③は“矢”shǐ 、④は“包”bāo が答えである。いずれもXがαを得るとβになる(X+α=β)という形式だ。ここで、プラス符号を表す語としては、“得、有、加、遇”などがよく使われるし、その結果「βになる」ことを表す際には、例題に見られたような“便、即、就、则”といった接続詞や、次の問題に見られるような“作、成、为”(~となる)といった語がよく用いられるのが特徴である。

 

  ⑤有人作伴 Yǒu rén zuò bàn (半)

 

  ⑥加工成功  Jiā gōng chéng gōng  (力)

 

この型も慣れてしまえば易しすぎるので、末尾のαに工夫が凝らされる。

 

  ⑦多点就好。  Duō diǎn jiù hǎo.

 

点をプラスすれば“好”になる、というのであるが、あいにく“好”には点は見当たらない。これは末尾のαに工夫を施し、直接“良”を見せず、その類義語“好”を置いたのである。“良”に気づけば答えは“艮”gèn とわかる。

 

  ⑧得月而足。 Dé yuè ér zú.

 

これも同類。月を得ると“足”になる。ところで“足”には月は見当たらぬ。類義語“脚”に思い到れば、めでたく“却”què の解を得るという仕組みだ。

 さて、次は今までと逆の演算をして解くもの。

 

  ⑨无人作主。  Wú rén zuò zhǔ.

 

「人がいないと主に作(な)る」と読む。求める字をXとすると、式は

 

   X-人=主    ∴X=主+人

 

となり、今度は“主+人”と足し算で“住”が答えとなる。先程と違い、使われる動詞も“无、少、去、缺”などマイナスの意を表すものになる。

 

  ⑩无口能言。  Wú kǒu néng yán.  (唁)

 

  ⑪人去可也。  Rén qù kě yě.  (何、他)

 

 

◆練習問題

[答えは、漢字一文字です。"解答を表示”の左の黒い三角をクリックすると見られます。]

1 加一等于四。 

  

 

 

 

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匹 

 

 

 

  

 2 进口成品。 

 

  

 

 

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   3  有心不善。 

 

  

 

 

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    4  差点成王。 

 

  

 

 

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玉,主

 

 

 

 

 

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著者略歴

  1. 相原 茂

    中国語コミュニケーション協会代表
    1948年生まれ。東京教育大学修士課程修了。中国語学,中国語教育専攻。80~82年,北京にて研修。
    明治大学助教授,お茶の水女子大学教授等を経て,現在中国語コミュニケーション協会代表としてTECCの普及に努める。
    NHKラジオ・テレビでも長年中国語講座を担当。編著書に,『はじめての中国語』(講談社現代新書)『雨がホワホワ』『ちくわを食う女』『中国語未知との遭遇』(ともに現代書館)『ときめきの上海』『発音の基礎から学ぶ中国語 新装版』(ともに朝日出版社)『「感謝」と「謝罪」はじめて聞く日中“異文化”の話』(講談社)『講談社中日辞典<第三版>』『講談社日中辞典』(講談社)など。

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