金子真季二段の心の一局(2)「殺戮天使が狙う」
参考図14
金子先生「質問のあった黒27で参考図14の黒1のコスミは、白2とアテれば黒3とオシやすいので、これは考えられる手ですが」
参考図15
金子先生「参考図15の白2とオサエて白6のサガリまでとなり、黒がAとオサエても隅の白に目はありますので、Bとはさんだり、C、Dなどの攻めが考えられますので、コスミを選択するのは難しそうです」
聞き手「もう少し、足早に逃げたいところですね」
参考図16
聞き手「少し戻って、実戦の黒25で参考図16の黒1とトブ手は」
金子先生「白は2とケイマして黒3とカケツグのですが」
聞き手「ちょっと難しいですね。この形では、黒1とトブほうがよく打たれているようです。しかし、実戦の白26はいい手ですね」
金子先生「序盤早々にポイントをあげられたと思っていました」
参考図17
金子先生「この後黒は右辺にヒラクか、参考図17の黒1とトブかと思っていたのですが、白2として黒3となって、白が少し強化されれば、白4とのぞく狙いがあるので、黒1とは打ちにくそうです。それで、右辺にヒラク方かなと思っていました」
実戦図27-29
金子先生「おそらく右辺にヒラクだろうと思っていたら、実戦は黒29だったので、ちょっと意外でした」
金子先生「予定が違ったので、次の手に悩みました」
参考図18
金子先生「この後、参考図18の白1とハサむ以外にも△のところにもいろいろ手がありそうで、時間はタップリありましたが考えるところが多すぎて」
聞き手「候補手が多すぎると、違うところに打ちたくなるんですよね」
実戦図29-30
金子先生「そうなんです、それで白30に打っちゃいました。なんで打っちゃったんだろう(笑)」
参考図19
金子先生「今思い返すと、参考図19の白1が良かったかもしれません」
聞き手「黒はどうしましょうか」
金子先生「単に黒2と逃げたら白3とカケて、これは黒あまりにも苦しいですね」
参考図20
聞き手「かといって参考図20の黒2とするのも」
金子先生「白3から白7までで右上の黒が取られそうです。いくら右辺に厚みができても、序盤にこれだけ取られたらさすがに良くないでしょうね。早碁ならこう打ったのでしょうが、迷いすぎちゃいました」
金子先生「左上をケイマに受けるのは、ちょっと足が遅いかなと思って候補から除外しました」
実戦図31
金子先生「私が左上隅を受けなかったので、黒は31とハサミました」
参考図21
金子先生「黒としては、白が参考図21のようにツケてくれれば、上辺を強化しようという狙いと、黒31の手が単純に大きいから、ということがあったようです」
金子先生「コゲイマガカリの方にツケるのは普通の手ですが、私は上辺を狙っていたので、こちらにはツケたくなかったんです」
実戦図32
聞き手「反対側にツケてモタレるのが普通なので、金子先生は白32とツケられたのですね」
参考図22
金子先生「そうです。参考図22と上辺側にツケると、黒の上辺が強化されて、私としては面白くありません」
参考図23
金子先生「例えば参考図23の黒ハネれば白2とひいて黒3のカケツギになれば、白2と力を蓄えていますので、白4と打ち込んだときの効果が大きくなります」
聞き手「こういう展開になったら、金子先生の独壇場ですね」
実戦図32-35
金子先生「参考図23となるとまずいので、黒は実戦では33と反発してきました」
参考図24
金子先生「本来でしたら黒35の後、参考図24の白1から白3としたいのですが、ここで黒から良い手があり、黒4とコスミます」
聞き手「定石でこういう形があり、白5とサガルのですが、黒6とツケて左側の黒3子を捨て石にする狙いがあります」
参考図25
金子先生「参考図25の△などの効きもありますし、参考図24の後、参考図25の白オサエは黒2と切られて白2子が取られてしまいます」
参考図26
金子先生「そこで白は参考図26の黒1とツケられたら白2とマガルしかなく、黒は△周辺の効きを見ながら右辺にまわり白を攻める」
聞き手「これが黒の注文なんですね」
実戦図35-36
金子先生「あくまでも狙いは上辺なので(笑)、参考図24のようにアテると止まらなくなりますから、ここは一旦落ち着いて白36とノビてみました」
聞き手「左下隅の黒石を挟んだ白石が援軍になっていて、心強いですね」
金子先生「その白石の存在は重要です」
実戦図36-38
金子先生「黒37のサガリで、白は自分の生きも気にする必要があるので白38とします」
実戦図38-43
金子先生「白が△にくるとまるごと取られてしまうので、黒43と逃げなければなりません」
参考図27
金子先生「本来は、参考図27の白△があるので、どんどん押さえつけてしまいたいのですが、黒6に打たれると左上の白石に目がないのです」
参考図28
金子先生「参考図28以下、白は左上隅に目がないので、左辺の黒との攻め合いになるのですが、ひと目で白が不利だとわかります」
実戦図43-46
金子先生「本来なら左辺を決めたかったのですが、実戦では一度だけオサエて白46としました。白44では、ここで一度押すかどうか迷ったのですが、単に黒44とされるのと比較して、押すほうが良いと判断しました」
「棋士のお昼休み」
小山先生「お昼ご飯は、棋士によっては食欲がなくて散歩したりコーヒーだけのときもあります」
参加者「お弁当の方もいらっしゃいますか」
小山先生「いらっしゃいます。ちょうど今(取材日:3月16日)、僕は花粉症で外に出ると大変なことになるので、最近は母にお弁当を作ってもらいます」
金子先生「羨ましいですね」
小山先生「金子先生はどうしてますか」
金子先生「対局の日が、女流棋士はだいたい四人ぐらい同じ日になることが多いので、仲の良い棋士といつものパスタを食べに行きます」
小山先生「結構重いものを食べるんですね」
金子先生「女流一、食べる棋士に触発されて、食べるようになってしまいました」
小山先生「どなたですか?」
金子先生「上野愛咲美女流棋聖です」
小山先生「最近大活躍の上野女流棋聖ですか」
金子先生「愛咲美ちゃんは、とーっても美味しそうにご飯を食べるから、見てる私も食べたくなってきちゃうんです」
小山先生「女流棋士も意外に食べるんですね」
次回第3回をお楽しみに