朝日出版社ウェブマガジン

MENU

洪道場の白黒さんぽ

小山空也四段の心の一局(3)「会心の一局」

 実戦図54

実戦図51-54

小山先生「実戦図の白54は、部分的には珍しい打ち方なのですが、白は上辺に発展性がないので、この場合なら、ある手だとは思います」

参考図22

参考図22

小山先生「普通なら参考図22の白1の一間ヒラキですが、あとから黒2のように三三に入られる狙いがあるので、地にカラくきたのかなと思います。自分としてはありがたいと思いました」

参考図23

参考図23

小山先生「参考図23の白1から以下白7のツケノビも十分考えられる手です。白はツケコシはあまり考えてなかったのかもしれませんね。相手は普段から感情を表に出すタイプではないのですが、それにしてもちょっと普段とは違う堅さが感じられました」

聞き手「眼の前の対局相手の感情を感じ取ったりするのですか」

小山先生「はい、自分は相手の気持ちを感じながら手を考えるタイプです」

 実戦図55

実戦図54-55

小山先生「実戦は黒55とケイマに打ったのですが、局面を見渡してみると右辺中央からの白が若干ですがウスそうです」

参考図24

参考図24

小山先生「例えば、参考図24のように、黒5に切る狙いもあるので、それを含みつつ黒55と打ちました。利かしです。右下の黒地を盛り上げつつ、次に手を抜いたら切るぞ、と。これが良い手でした」

実戦図58

実戦図55-58

小山先生「白は実戦図のように、白56とツケて黒57のブツカリに白58と繋いで、ただ守ったのです。こうなると、黒55はとても効果的で、黒地は盛り上がって、白模様は消えて、ツケコシがなくなったのです」

参考図25

参考図25

小山先生「一例ですが、参考図の白1と白3には、黒4として、ちょっと読みは必要ですが、黒10まで取れているので、この狙いも先手でカバーできたので、黒△はホントに良い手でした」

質問「閃いたのですか」

小山先生「閃きました。持ち時間の長い対局では、時間をかけて考えていると、ときどき閃くことがあるのですが、この手もそうです」

 実戦図59

実戦図58-59

小山先生「ここで実戦の黒59とツケました。この手は難しい意味があるのですが、左下の白はとて強い石なので攻めることはできません。そういう時はなるべく強い石に押し付けて、凝り形にもっていきます。この黒59も閃きです」

聞き手「実戦の黒55と59の石は、流れが非常に良い気がします」

小山先生「良さそうですか。結構雰囲気がでていますよね」

実戦図64

実戦図59-64

小山先生「白64まで、先手で打ちましたが、右下の黒地が大きくなってきました。下辺左の白地は元々こういう形なので、黒だけが儲けてちょっとずつ成功しているかなと思いました」

聞き手「黒が一方的に増えているというイメージですね」

小山先生「そうです、この一連の流れでは気分良く打っていました」

 実戦図65

実戦図65

小山先生「この対局のハイライトです」

聞き手「急所に見えます」

小山先生「急所っぽい手ですね。“ぽい手”を打つのは大切なことで、みなさんも“ぽい手”を打てば、成功することが多いと思います」

参考図26

参考図26

小山先生「黒は参考図26の左上の△や、中央の石がまだ安定していません」

実戦図67

実戦図65-67

小山先生「欲張りな発想ですが、実戦図の黒65のツケに白は66とハイ、黒67ツケまでうまく運びました」

聞き手「白としては受けたくないのですね」

小山先生「白が、少し堅くなっていると感じたので」

聞き手「ここぞとばかり」

実戦図73

実戦図67-73

小山先生「実戦図の黒73までとなって、さきほどの左上の黒2子と黒73の石がツナガり、さらに中央上部に黒模様ができてきました。このあたりでちょっと形勢が良くなったかなと思いました」

小山先生「白は、左辺を僕の想定どおりに打ってくれたので気持ちよく打てています。もう少し反発してくるかと思っていました」

聞き手「白は手に伸びがないですね」

参考図27

参考図27

小山先生「左辺の白地は、参考図27のようになればほとんどない、といって良く」

聞き手「黒地は中央にいっぱいできそうなのに、白地は7目あるかないかですね」

参考図28

参考図28

聞き手「白はどうすればよかったでしょう」

小山先生「実戦図の黒65に対し参考図28の白1とトブのは黒2とサガラれて、白2子が攻められてしまいます」

参考図29

参考図29

小山先生「実戦のように白は一度はハッて以下白10として、左上の黒2子と中央の黒を分断すればあちこち凌がなければならないし、左辺の黒石は取れませんが、白からAなどの黒を攻める手もありました」

聞き手「自分が黒を持っていれば嬉しくなります」

質問「先生は顔に出るタイプですか」

小山先生「僕は出さないように意識しているのですが、両親にいわせると“いつも見ればわかる”そうです。バレバレですね」

小山先生「形勢が良い時は、“勝てそうだ”と思って失敗してきているので、打っている時は“勝てそうだ”とか“(棋聖戦)Cリーグ入だ”とかは考えないようにしていました」

小山先生「考えないようにってことは、考えてるんですよね。形勢が良いのは意識していました」

 実戦図74

 実戦図73-74

小山先生「白は、このまま黒地がまとまると勝てないと意識して、右下隅に手を出してきました。こういうときが一番気をつけなければいけません」

聞き手「ここで、皆殺しにするか、小さく生かすかの判断が大事なんですね」

小山先生「どうするか、かなり慎重に考えていましたが、皆殺しにすることにしました」

参考図30

参考図30

小山先生「例えばですが参考図30のように生かす手はあります」

 実戦図81

実戦図74-76

小山先生「実戦は下からハネて、白は76にサガリました。これも狙いがある手です」

 実戦図81

実戦図76-81

小山先生「部分的には実戦図の黒81まで、右辺の白2子が取られてしまうのですが」

 実戦図85

実戦図81-85

小山先生「白から実戦図のAのコスミが先手になるので、そのアジを見ながら隅の生きを探しています」

実戦図90

実戦図85-90

聞き手「実戦の白90で、白には目形ができてきたように見えますが」

小山先生「黒としては右下で白に生きられると地合がたいへんなので、ある程度は成算を持って、打っています」

 実戦図96

実戦図90-96

小山先生「石を取るときは、金子先生をイメージして」

参加者「確かに真季先生のような打ち方だ」

聞き手「私のイメージって…(笑)」

聞き手「白は実戦図の96に、目一杯頑張ってきました」

 実戦図99

実戦図96-99

小山先生「黒97に白98ツギは手を抜くと切れてしまうので絶対です。黒99は難しいところですが」

参考図31

参考図31

小山先生「参考図31の白1が先手になるので、実戦の黒99としました」

聞き手「目を奪いつつ自分も守る手ですね」

第三譜

第三譜(101-150)

小山先生「黒模様の中で白が生きるか死ぬかの攻防です。かなり際どい攻め合いになりましたが、黒25まで両コウで白石を全滅させることができました。こうなっては黒の勝勢です。白26からは最後の勝負手です」

 

実戦図102 

実戦図99-102

小山先生「白は右下隅に目がないので、いろいろ仕掛けてきますが、ちょっと苦しんでいるようです」

聞き手「いろいろ打って、ねばっていますね」

小山先生「そうですが、白のやること全て地が損になってしまうので、右下が生きなければ勝ち目はありません」

 実戦図109

実戦図102-109

小山先生「実戦図の黒109のツギは手を抜くと、白に109とアテられて109の下に出られてしまうからです」

実戦図112

実戦図109-112

参考図32

参考図32

小山先生「実戦の白112では、参考図32の白1コスミツケが第一感なのですが、黒2として、なかの白3子が取れています。下の白石に目がないので右辺の白は全滅します。ここまでは、時間があったので想定していました」

 実戦図117 

実戦図112-117

小山先生「この攻め合いは読み切りです。さきほどは、右辺中央の白4子と責め合っていたのですが、こんどは下方の白石との攻め合いで、結果的には全部取りました」

聞き手「どれぐらいで読み切りましたか」

小山先生「そうですね、ある程度一本道だったらプロはかなり速く読めます。10分ぐらいで黒が勝っているのはわかります」

小山先生「白は地で損が大きかったので、その後いろいろ打ってきました。実戦はかなり手堅く打ったのですが8目半差でした」

 参考図33

参考図33

小山先生「相手の模様の中で捌く時は、ツケたり切ったりハネたりするのが良いのですが、参考図33の白1と切ると、こういう手のほうが嫌だったのですが、黒2とサガルつもりでした」

聞き手「白は正直に打っていたのではダメなので、どこかに飛ばしたりツケたりするのでしょうが、ここは白3ぐらいでしょうか」

小山先生「黒△がすごく働いているので、白は右辺で目をつくるのは大変でしょう」

 参考図34

参考図34

小山先生「参考図34のように下辺をヨセることもできたのですが、中央の黒地が大きかったので、白はこれでは足りないと考えたのでしょう」

 参考図35

参考図35

聞き手「参考図35の白1のハネが気になるのですが」

小山先生「形は少し悪いのですが、黒6となって、周りが全部黒なのでやれるなと思っていました」

 

 第四譜

第四譜(151-189)

小山先生「黒は絶対に大石が死なないように、分かりやすく打っています。黒61までの中央の黒石は完全に生きました。攻撃はされていますが左上の黒も取られる石ではないです。黒89までしっかりと生きては黒の勝ちです」

洪先生「空也は入段前に最強の手を打ちたいと言ったのを覚えています。その後すぐプロになりました。自分で考えて実行できる空也は本当にすごいと感じました」

 

第五譜

第五譜(190-279)黒8目半勝ち

小山先生「今まで棋聖戦ファーストトーナメント決勝で2回負けていたので、今回こそは絶対に勝つ!という強い気持ちで臨みました。内容も自分なりに良く打てたと思います。Cリーグに入ったことに満足せず、さらに昇格を目指します!今後もどうぞよろしくお願いいたします」

 ハイライト

ハイライト 黒65(△)

洪先生「空也のここからの決め方がとても良かったです。囲碁が強くなるにはこういう構想力がとても大事です。勝ちへの道。未来への道を考えていくことはこれからの人々に必要なことだと思います。自分は世の中のために何ができるのか。何を残せるのか。いつも考えているテーマです。精一杯生きます」

 

バックナンバー

著者略歴

  1. 洪 清泉

    1981年12月30日生 韓国済州出身
    1993~1997年 韓国棋院院生として修行
    1999,2001年 アマ国手戦優勝(韓国代表決定戦)
    2004年 鳳凰杯プロアマオープン優勝
    2007年 全日本アマチュア名人戦 優勝
    2008年 全日本アマチュア本因坊戦 優勝
    2009年 関西棋院試験碁合格 関西棋院入段
    2013年 二段
    2014年 NHK杯出場
    2015年 棋聖戦Cリーグ進出
    2016年 天元戦本戦進出
    2016年 三段
    2016年 碁聖戦本戦進出
    2017年 天元戦本戦進出
    2017年 NHK杯出場
    2018年 NHK杯出場
    2019年 四段

  2. 小山 空也

    平成8年(1996年)11月17日
    神奈川県出身
    小山 竜吾六段 門下

    平成25年夏季入段(平成26年度採用)
    平成27年グロービス杯世界囲碁U-20 日本代表
    平成27年二段
    平成27年新人王戦本戦進出
    平成28年三段
    平成28年阿含・桐山杯 本戦進出
    平成28年竜星戦本戦進出
    平成28年ゆうちょ杯本戦進出
    平成29年おかげ杯本戦進出
    平成29年新人王戦本戦進出
    平成30年四段
    平成30年新人王本戦進出
    平成31年新人王本戦進出
    平成31年棋聖戦Cリーグ入り

    日本棋院東京本院所属

ジャンル

閉じる