小池芳弘五段の心の一局(2)「三三を科学する ②」
実戦図10-15
小池先生「白10のツケは、ほんの少しですが様子を見るという意味があります。繰り返しますが、リスクも大きいので、おすすめはできません」
小池先生「白12は、比較的わかりやすい手です」
参考図20
小池先生「実戦の黒15では参考図20の黒1と切る手が普通ですが、白は黒2と下がられると隅が死んでしまうので、白2、4とハネツギます」
参考図21
小池先生「参考図20は参考図21と少し似ているように見えますが」
参考図22
小池先生「白は参考図22の△にキリが入っているのが自慢で、黒5とカカエるのが穏やかですが、以下白10まで、続けてAとカケたりする手もありますがだいたい一段落です。これで黒がかなり悪いというわけではないのですが少し嫌です。なぜかというと説明しづらいのですが」
聞き手「感覚的なものですね。たしかに6をはじめいろいろ白から利かされた印象です」
実戦図15-17
小池先生「実戦は黒15とハネツギました」
参考図23
小池先生「これは、参考図23のように白1とツグと黒2とハネて3から4として、白が手を抜くと黒Aで白は死んでしまう。白は生きていませんよ、というのを自慢に打ったのが黒15、17のハネツギです」
参考図24
小池先生「白が23図を嫌がって参考図24の1とサガれば、黒2の切りにしろAとハネるにしろ、ハネツギが大きく利かしたことになります」
参考図25
小池先生「少し戻って、黒15では参考図25の1に切るのが普通です。図のように進行して、途中5のカケツギが最も多い打ち方で、白8はオシの一手、そして図のような戦いになるのですが、特別に黒が攻められているわけでもありませんし、後に黒がAに来ればどちらかといえば白が攻められている雰囲気です。白としては先に地を稼いでおいた、ということでしょう」
小池先生「ではなぜこの図を選ばなかったか。この対局はNHK杯方式の早碁で、芝野七段が自信満々に白10からツケたので黒1の切りは研究しているはずだし、自分は1の切はあまり自信がなかったので、意表を突いてみようと15に打ちました」
聞き手「ここは心理的な要素が大きかったのですね。今はもう研究済みですか?」
小池先生「今の自分だったら黒1に切ります」
聞き手「小池先生は研究怠りないのですね」
小池先生「そうです。一局ごとに成長しているのです(笑)」
参考図26
聞き手「小池先生のおススメは、参考図26のように白1とブツカッて黒2とオサエルのですね」
小池先生「ブツカッてハネルというのが普通の手で、この後いろいろ変化はあるのですが潰れないように打っておけば、だいたい互角に進行します」
実戦図17-19
小池先生「白は18とノゾキにはツガないで、19と反発しました」
参考図27
小池先生「白は参考図27のように黒がツイでから白2とツグつもりだったのではないでしょうか」
参考図28
小池先生「白はノゾキを打たずに参考図28の白1とツゲば、黒2とハネます。このとき白は4とハネダシますが、参考図のように白3とカカエると黒4とオサエ白5のヌキに黒6と抑え込まれます。白7と切って一応コウの形ですが」
参考図29
小池先生「参考図29の黒1のヌキに白2、4ととても大きなところですが、黒5で右上隅の白の目がなくコウにできないのです。しかも右上隅の白は周りがすべて黒で止められています」
参考図30
小池先生「そこで白は、参考図28の3で参考図30の3とハネダシます」
聞き手「黒4の切りには」
小池先生「白5とアテて6のツギに白は7とサガって生きたとき、黒の十分な形ではないですよ、といいたいのです」
参考図31
小池先生「参考図30で、参考図31のように白△黒△の交換があればどうでしょう」
聞き手「黒石はダンゴにされたように見えますね」
小池先生「なので、この白△はムダにはならない、という意味があったのです」
参考図32
小池先生「実戦の白18とノゾキをすぐに打った理由は他にもあります。参考図32のように先に白1とツナグと黒2のハネに白は3とツイで、この後の白5のノゾキに対し、黒はもうツギません。Aとオサエるか6にツケるなど、少し躱し気味に打ちます」
参考図33
聞き手「黒がツガなかったので、例えば参考図33の白3と切りますと」
小池先生「4のアテから以下8までとなり、実戦を見ていただければ分かりやすいのですが」
実戦図18-27
小池先生「参考図33と比較して、実戦はAにツガず白26となっていて、黒はAに切ることはできませんし、こちらの方が白は、はるかに勝っています。」
小池先生「参考図は白が26でAにツイでしまった状態になるので良くないのです。白は24とトルことで目の心配はなくなるし、Aの一路下の黒石を取りに行く必要もないのです」
小池先生「白18に黒が20とツイでくれれば利かしになるし、反発されてもこの図にはなる、ということでした」
小池先生「対局中はこれで互角の分かれだと思っていましたが、今見ると白の生きっぷりが良いのです。というのは、白は生きているので壁として考えることができますので、上辺の黒4子が白の壁に貼り付いているように見えて、黒十分とは言えないもどかしさがあるのです」
聞き手「白26が光っているので、上辺の黒は万全とは言えないのですね」
小池先生「黒27と三間に開いたのは、黒4子はもういらない、という手なんです。もしこの4子が重要なら二間に開きます」
参考図34
小池先生「隅の黒4子に固執すれば参考図34のように二間に開くのですが、白2とツメられて二間では生きるには狭い。黒3から7のように逃げなければなりませんが、右側の白の壁の横をただ逃げているだけの状態になっています」
聞き手「黒地は増えないのに白地ばかり増えていますね」
参考図35
小池先生「参考図35のように、白1には黒2とワタる手を用意しているのですが、どうしても取りに来るというのなら、黒4子は捨てても良いという考えです」
つづく