棋士インタビュー 一力遼竜星 五藤眞奈初段
一力 遼 竜星
五藤眞奈 初段
「洪道場の白黒さんぽ 第三回目」では、NHK杯で見事優勝されたばかりの一力遼先生、新初段の五藤眞奈先生にお話を伺うことができました
―― 五藤先生が碁を始められたきっかけはなんでしょう
五藤先生「私は元々綺麗な石が好きで、貝殻も集めていたのです。母が石が好きなら、と囲碁を勧めてくれて、遊んでいるうちに好きになり、そのうちプロになりたいと思いました」
―― 五藤先生のお母さんがきっかけだったのですね。お母さんの愛情がプロ棋士を育てたのですね
―― 一力先生が囲碁を始められたきっかけはなんでしょう
一力先生「私が五歳ぐらいのときに父に連れて行ってもらい、近所の人たちに打っていただきました。祖父が強くて有段者だったこともあります」
―― 最近AIがよく話題にされるようになり、日本でも開発が始まるようですが、先生はAIを活用されていますか
一力先生「AIを自分のパソコンで使えるようにして、活用しています」
―― 今後アマチュアがAIとどのように対峙すれば良いのか。先生はプロとしてどのようなお考えかお聞かせください
一力先生「どのようにAIと対峙すれば良いかということは難しいのですが、全くAIを使わなくても非常に強い棋士もいらっしゃいます。しかし世界大会などでは、ある程度研究していなければ対応が難しい面もあります。現状はAIが出す答えが全てというわけではなくて、自分に合った手を選んで使っています。そしてアマチュアの方には、AIの出す勝率にこだわらず、自由に楽しんでいただければと思います」
五藤先生「私は最近AI研究会で大橋先生からパソコンの使い方をいろいろ教えていただきながら、研究に役立てています」
―― 実際にはどのように活用されていますか
一力先生「局後に自分の棋譜を並べて、検討することが多いです。その他、序盤の形で気になったものを調べています。結構評価値が変わることもあるので、ある程度参考にしつつ自分で考えることも必要かな、と思っています」
―― 世界戦などでは、当たり前にAIの影響を受けているのですね。世界戦の見どころや一力先生がファンにこんなところを見てほしいというのはどのようなところでしょうか
一力先生「トップ棋士はほとんどがAIの影響を受けているので、世界的な傾向といえますね」
―― どの対局も序盤は似た形になっているそうですが
一力先生「そうですね。わりと同じような布石からスタートしています。とはいえAIの真似だけしているのではファンも面白くないとおもいますので、そんな中でも自分を出していければと思ってはいます」
―― 普段手合がないときはどのように過ごされていますか
一力先生「主に囲碁の研究です。手合が多いので、指導碁はこういう機会でもない限り滅多にできません」
五藤先生「一日も早く一力先生のようになりたいと思って勉強しています」
―― 囲碁の普及に向けては、なにかアイデアをお持ちですか
一力先生「囲碁自体の魅力もそうですが、棋士一人ひとりの魅力ももっとアピールしていければと良いと思います」
―― プロ棋士を目指している子どもたちやご両親へのアドバイスをお願いします
一力先生「いろいろな出来事があるとは思いますが、勝ち負けでお子さんに対する態度を変えないであげてほしいです」
五藤先生「アドバイスではないのですが、母は私を一人で育ててくれて、私の見えないところできっと大変だろうなと思っていました。そのことを思うたびにいつも感謝しています。プロになったので、これからはどんどん勝ってお返ししたいと思っています」
―― 一力先生は現役の大学生ですが、授業との両立はどうしていらっしゃいますか
一力先生「大学に進学することに抵抗は感じませんでした。授業もちゃんと受けられます。中学、高等学校と続けてきましたので、その延長線上でごく自然に進学しました」
一力先生は、一見スポーツマンタイプの爽やかな好青年ですが、碁に対しても、人生に対しても真っ直ぐで、しっかりと大地に根を下ろした、まさに一流のプロ棋士でした。
実は、お会いする前まではちょっと堅物っぽいなと思っていましたが、明るくてユーモアもあり、気安く話せる若者でした。
五藤先生は、その表情にまだ幼さの残る可愛い少女に見えましたが、白黒さんぽでは、一力先生とともに解説でサラサラと石を並べていく姿が、一人前のプロ棋士であることを強く意識させられました。将来がとても楽しみな棋士のお一人です。
最後にお二人に今後の目標を伺いました。一力先生は当然のごとく7大タイトルと世界戦。五藤先生は目の前の一局一局を大切に戦いたい、ということでした。
お二人の今後の活躍に期待します。ありがとうございました