棋士インタビュー 小山空也四段 金子真季二段
洪道場出身棋士インタビュー
小山空也四段
金子真季二段
自戦解説に先立って、囲碁ファンにはNHK杯でお馴染みのお二人に、お話をうかがいました。
――小山先生 棋聖戦のファーストクラス勝ち上がり、そして四段昇段、おめでとうございます
――金子先生 二段昇段おめでとうございます。本日はよろしくお願いします
――近年、AIの影響で盤上の風景が変化しているように感じているファンも多いと思いますが、NHK杯の記録係をされていて、最も変化したと思われることはどのようなことでしょう
小山先生 AIの影響で序盤の布石がパターン化されてきて、どの対局も最初はある程度似たような進行になるような印象を受けます。
金子先生 小山先生がおっしゃったようにAIの影響は大きいです。対局だけでなく、流行を追うことで、どこでもAIを見かけるようになりました。
小山先生 AIの戦法を取り入れずに成績を残している棋士はほんの僅かです。
金子先生 AIを取り入れていれば見慣れない手を打たれても驚かないですみます。
小山先生 早碁では、AIを使って研究しておくことも必要でしょうね。
――お二人はいつも視聴者とは反対側から対局を観ていらっしゃいますが「観る碁ファン」に、「こんな角度からも観てほしい」ということがあればお願いします
小山先生 対局中の姿勢や動作を注目していただきたいです。例えば間違えて「しまった」と思ったときの表情や、相手が間違えたときの一瞬の反応などを、盤面と同時に楽しんでいただければ。
金子先生 そういうとき、カメラはよく対局者を写していますよ。
――写っていないときの方が多いと思っていたのですが
金子先生 そうでもないですよ。それに対局者はマイクを付けているのでよく聞こえます。
小山先生 関西の先生はボヤキでも、ちょっと受けを狙ってるようにギャグっぽいことを言われたり、そういうところが面白いですよ。
金子先生 収録中、笑いそうになったり。
――それはどなたですか。言えませんか。(笑)
小山先生 以前面白かったのは坂井秀至先生で対戦相手が山田規三生先生のとき。
小山先生 規三生先生って昔「ブンブン丸」といわれていたのですが、山田先生が坂井先生の石をとりにいったら、坂井先生が「ブンブン丸が取りに来たぞー」っと。
金子先生 それ、私も聞きました。(小山先生と)一緒のときでしたね。あの対局のときは面白かったです。
金子先生 趙治勲先生も、昔懐かしいギャグを突然おっしゃるので、対局中に吹き出しそうになって困ったことがあります。
――治勲先生は人気もあるし、お話もたのしいですね
――日頃から、勉強や研究を続けていらっしゃるでしょうが、主にどのようなことをされていますか。また、継続してやったほうが良いことがあれば教えてください
小山先生 最近はAIを使って序盤の作戦を研究したり、詰碁は毎日ちょっとずつやります。継続してやったほうがいいことは、やっぱり詰碁だと私は思います。
――詰碁はお好きですか?
お二人 はい、まあまあ好きです。
金子先生 私もAIを使って勉強をしています。今までは詰碁がベースで筋トレのように解いていて、それに棋譜並べと実戦譜の研究だったのですが、そこにAIが出てきてからAIの研究が主体になってきました。
――棋譜並べは、AIを使われるのですか
小山先生 PCで棋譜を見たり「幽玄の間」で見たりしています。
金子先生 (PADを取り出して)今はこういうPADやスマホがあれば、どこでも棋譜を見られるので便利です。
小山先生 そこが最近変わってきているところだと思います。
――プロ棋士をめざす子どもたちもそういう研究会が必要になってくるのでしょうね
小山先生 同じプロを目指す強い子どもたちと、お互いに刺激を与え合うことが良いのかなと思います。
金子先生 同じ棋力の子がそばにいる方が良いです。年齢も近い子がいれば、さらに闘志も湧いて意識して強くなろうとするから。
――アマチュアの方へのアドバイスをお願いします
小山先生 アマチュアの方には、とにかく囲碁を楽しんでいただきたいです。嫌いなことをムリヤリすることはないし。気の合う仲間と楽しく打ってもらえたら。
金子先生 楽しくお喋りしながら打っていただきたいですね。
小山先生 目的にもよりますが。強くなりたい人は、詰碁をやった方がいいし、自分より少し強い人と打つこともした方がいいでしょう。それが楽しいかどうかはわかりませんが、強くなれば嬉しいと思います。
――指導碁を受ける人達は、強くなりたい人と、楽しく打ちたい人とどちらが多いでしょう
金子先生 指導する人によっても違うでしょうが、強くなりたい人より楽しみたい人のほうが多いような気がします。
――囲碁に興味を持ち、これからはじめたいと考えている方に、先ず何をすればよいか、若手のお二人ならではの斬新なアドバイスをお願いします。家族、恋人、友人などを囲碁の魅力にひきずり込みたいと考えている囲碁ファンに、良いアイデアがあればお願いします
小山先生 そうですね。自分の好きな棋士を見つけて応援する。棋士のファンになるのがいいですね。
金子先生 そうそう。そうですね。
小山先生 対局姿勢を見ていただいて、素敵だなと思ったら真似してみたり。そこから、(家族や友達を)誘ってみるのもいいのかも。
金子先生 最近カフェのような明るい雰囲気の碁会所が増えてきたので、もっともっと増えると良いですね。そして、ゲーム感覚で石を並べられると良いですね。
――プロを目指す子どもたちを持つご両親に、アドバイスをお願いします
金子先生 とにかく心のケアが大切です。なんといっても子どもですから、負けると強いストレスを感じるし。囲碁と関係ない話をするのもいいです。体のケアも。
小山先生 そうですね。私は両親がプロだったので、当たり前のように囲碁をやっていましたが、心と体のケアが、最も大切なことだと思います。
金子真季先生、小山空也先生、お忙しい中、お時間をいただき、ほんとうにありがとうございました。この日のお二人はNHK杯の画面とは違った、優しく、そしてキリッとした美しい表情をたくさん見せてくださいました。
囲碁を始めたきっかけは、小山先生は、ご両親がプロ棋士だったからだそうですが、金子先生は『ヒカルの碁』だそうです。そうか『ヒカルの碁』世代のプロ棋士が活躍していらっしゃるのか、とやけに感動しました。編者は『ヒカルの碁』を読んだことがなかったので、早速読んでみることにします
次回の棋士インタビューは、一力遼NHK杯選手権者と五藤眞奈新初段です