新井満涌初段の心の一局(3)「憧れの棋士③」
実戦図57-61
新井先生「黒は57に切りました」
参考図23
聞き手「参考図23の黒1と出たくなりますが」
新井先生「それは、2とアテて3とツゲば4で黒3子がとれます」
参考図24
新井先生「参考図24の3とハネても4ととって、黒からはコウ材がありません。これは白が厚く打っていたからです」
参考図25
新井先生「仮にここで黒5とアテても冷静に6とツイで、白はABCDと断点が多く」
聞き手「どこを守ればいいかわかりませんね」
新井先生「守りづらいというか、守れないですね」
参考図26
新井先生「黒61の後に参考図26の1とマガルのは、2と出られて今度は黒3子を取れませんしAの両アタリもありますので」
実戦図61-62
新井先生「ここは実戦のように62とアテました」
実戦図62-65
新井先生「白64に、黒はコウ材がないので65とツギます」
実戦図65-73
新井先生「黒は1つでも利かされたら悪いと考えたのでしょう、左右どちらも頑張ります」
実戦図73-83
聞き手「この攻め合いはどちらが勝っていますか」
新井先生「実は白は勝っていません」
参考図27
新井先生「隅の攻め合いは負けているのですが参考図27の白1とアテれば黒2と逃げても白□と黒65の交換があったため逃げる先は行き止まりで黒を取れます。△にきたことで、いろいろ利かしもあり、右下隅は攻め取りで、実質20目もあるでしょうか。隅は元々黒地ですからなおさらです」
実戦図83-87
新井先生「86までで、白は隅では多少戦果をあげることができました」
聞き手「87は戦線を拡大してきたのでしょうか」
新井先生「実はこれはシチョウアタリの問題があるのです」
聞き手「えっ? シチョウですか」
参考図28
新井先生「参考図28のように進むと、白13でシチョウが発生します。目で追っていただければわかるように、黒△がシチョウアタリになっています。なので、白は1とは切れないのです」
聞き手「シチョウアタリは打たれる前に気づいたのですか」
新井先生「はい、気づいていましたが、2手連打されてもなんとか耐えるつもりでした」
実戦図88-101
新井先生「確かに2手連打はキツイのですが、隅で生きられれば耐えられると考えていました」
第三譜(101-150)
新井先生「白104と置いた手は、黒を中央に追い出して、左上の黒石との絡み攻めにすることを狙っていました」
新井先生「白122~132まで調子良く進んだのですが、アクセル踏みっぱなしで白142と下辺を取りきりにいったのが実は打ち過ぎでした。白145、黒142、白Aと打って左下黒を活かし中央を大事にしておけば、白の外勢もなかなか厚かったのではないかと思います」
新井先生「黒149からカケられた以降、盛大なフリカワリができてしまいました。命からがら半分逃げ出したものの、形勢は黒良しです」
実戦図101-103
新井先生「ここまでになって見ると、黒は2手連打した割にはそれほど良くはありません」
聞き手「左上隅の白地も結構大きくなりましたね」
新井先生「白にそれほど傷がついたわけでもないし、それなら中央下の2子を取った方が大きそうです」
参考図29
新井先生「左上隅の黒5子を攻める手は、例えば参考図29の白1としても2とサバかれて、直接攻めてすぐに効果を上げることは難しいのです」
実戦図103-105
新井先生「そこで、実戦の104と下からいってみました」
聞き手「この黒もはっきり生きているわけではないですね」
参考図30
聞き手「実戦の105で参考図30の黒1とオサエたらどうでしょう」
新井先生「これは図のように黒の周りからペタペタと利かせて、白2子は取られましたが、白12とされてもまだ生きがありません」
聞き手「黒は愚形にされた感じがしますね」
実戦図105-112
新井先生「部分的には黒2子が死んでいますが、これは黒の捨て石作戦で」
実戦図112-119
新井先生「白は絞られました。取られてもただでは死なない。取られた石を有効に使う作戦です」
参考図31
新井先生「白は絞られはしたのですが、黒も参考図31のAにツナげばBに切られるし、BにツナげばAに切られる、と悩ましいところです」
実戦図191-121
新井先生「それで黒もどちらにツイでもやや気持ちが悪いので、121にはずして打ったところです」
実戦図121-125
新井先生「白は遠慮なく切ります」
新井先生「この局面を見ると、左辺上の黒5子が少し弱く、下の黒一団もまだ生きてはいないので、白としては、下辺から黒を追い出しつつ左辺で上下の黒を分断しようとしています」
実戦図125-128
新井先生「黒は中央の黒4子を利用して絞ったりしながら捌けないかと考えているようですので、白も中央の2子からはすぐ動いてもうまくいきそうにないので128としました」
実戦図128-131
参考図32
新井先生「実戦の131で参考図32の黒1とすれば白2子が取れていますが、白2と下がって黒△の5子が危なそうです」
聞き手「かなり危ないですね」
新井先生「黒は取っている暇がなさそうなので131とハサミツケました」
実戦図131-142
新井先生「実戦の141につづいての142が敗着でした」
参考図33
新井先生「結論から言うと142では参考図33の1と打つべきでした。黒6まで黒はなんとかワタリましたが中央の白が厚く、黒△の4子が白の勢力圏に孤立してしまいました。地合いも白がやや良かったようです」
聞き手「黒を生かせて中央を取ったかんじですね。上辺の白も活きてきました」
新井先生「厚みの碁の醍醐味です。ようやくここにきて上辺の千両マガリが役に立ってきました」
実戦図142-146
新井先生「参考図33のように打つべきでしたが、ここで欲が出てしまいました。白146まで黒を取ったのは良いのですが」
実戦図146-165
新井先生「実戦図のようになってみると、中央の黒4子も取れました。しかし上側の白全部がほぼ死んでいます。右辺の白はかろうじて生きましたが、上辺が丸呑みされて左上隅の結果に関わらず足りなかったようです」
第四譜(151-199)
黒中押勝
洪先生「満涌の碁は迫力があります。細くて速い、突き刺すレイピアではなく、グレートソード(両手剣)のような少し鈍い音がする破壊力が凄まじい武器を使うスタイルだと昔から感じています」
洪先生「プロ棋士になってからは指導も増えて真剣勝負の実戦量が減っているのですが、そこが補強されればもっと活躍出来ると思います。群馬県出身で故郷の囲碁普及に、満涌ならよりいろんな所で活躍出来ると思います。頑張りましょう^-^」