池本遼太初段の心の一局 ①『初対局はオンラインで』
池本遼太初段から皆様へ
皆様はじめまして。新入段の池本遼太と申します。
日本棋院関西総本部所属の17歳、広島県出身です。
私は、9歳のころプロ棋士を目指し、父を広島に残して母と上京しました。洪道場には大変お世話になりました。本日は皆様と交流できるのをとても楽しみにしています。よろしくお願いいたします。
洪から遼太へ
遼太はよく気を遣う、心が温かい子です。友達ともよく話せるし、初めてあった人ともすぐ親しくなります。道場でもいろんなことで助けてもらいました。それはお父様とお母様からもらった愛が大きかったからできることだと思っています。遼太の夢のために家族が離れて暮らした期間が長かったのです。時々広島に帰り元気をもらって戻る遼太を見たら羨ましい気持ちもありました。お父様、お母様をだいじにこれからもまっすぐ成長して欲しいです。両親を愛する、周りに気遣うことができればきっとだいじょうぶです。夢に向かって頑張りましょう!心いっぱい応援しております。
おかげ杯予選
黒 池本 遼太初段
白 大橋 成哉七段
池本先生「この碁はおかげ杯の予選でネット対局だったので、いつもと違った雰囲気での対局でした」
聞き手「この日が初めての対局ということで緊張しましたか」
池本先生「ネット碁だったのと、勝った後の二局目だったのであまり緊張はしませんでした」
聞き手「大橋先生はかなり強い相手ですが、対策は考えていましたか」
池本先生「はい、大橋先生は石が外側にいく棋風なので、外側でも内側でも負けないようにしようと思っていました」
第一譜(1-60)
池本先生「黒15は、最近では非常に珍しい手です。この碁は白を少しでも追っていこうと思いました。黒21から黒31の攻防は白がやや甘いと思います。黒35は堅すぎました。40に下りるほうが良かったです。実戦は白36に打たれて窮屈になりました。なんとか生きるスペースを確保しようと黒39に打ったのですが、すかさず白40に打たれて切られてしまいました。安易に考えすぎでした。黒39は53のほうが良かったです」
実戦図1-15
池本先生「実戦の15は、最近ではかなり珍しい打ち方です」
参考図1
池本先生「最近はAと受けたり、AIが出る以前はBと受けることも多かったです」
参考図2
池本先生「参考図2のようになると、かなり穏やかな進行なのでもう少し激しい碁にしようと考えて実戦の15としました」
聞き手「下辺に隙きはあるけれどカカった石にプレッシャーをかけるという意味ですね」
参考図3
池本先生「参考図3のように1とハサんでいく手はよくありましたが、AIは三々に左から3とオサエる手が少し甘いと見ているようです。これでなんの問題もないように思いますが」
実戦図15-20
池本先生「予想通り白は石が外側にきています」
聞き手「15で相手の方はどう思ったでしょう」
池本先生「こんな手を打ったときは相手の方の表情を見てみたいと思います(笑)対局中にどこを見ているかわかれば、どう思ったのかの予想もできるのですが。ただネットがいいのは、対面だと相手からの無言の圧力を強く感じるのですが、ネットは顔が見えないので私は好きなように打てるのです」
実戦図20-31
池本先生「21のツケは最近AIが打つようになった手です。31までで一段落です」
聞き手「ツケたときのこのわかれはどう思いますか」
池本先生「地を稼いでいるので黒に不満はありません。外側の白はアツいようですが断点も残っているのでそこを見ながら十分に打てると思います」
実戦図31-36
池本先生「32と白が模様を広げてきたので33としましたが34に35と下辺を守ったのですが36と打たれて33の石が窮屈になっています」
参考図4
池本先生「実戦の35では参考図4の1とトンで2には3とウケていてすぐ何かがあるということではないので、それほど2の手を嫌がることはありませんでした」
参考図5
池本先生「実は対局中は参考図5の1とトンだら2とトブんでおくつもりでしたが、36とかなり厳しい手を打たれてしまいました」
参考図A
池本先生「参加者から参考図Aの1のアテコミからいくのはどうか、という質問をいただきましたが、これが最善だったかもしれません」
実戦図36-40
池本先生「さすがに左辺を丸々取られるわけにはいかないので37とノビて38には39としたのですが、これがちょっと焦りすぎだったようです」
参考図6
池本先生「ここは参考図6のようにもう一本ノビて3のケイマぐらいだったでしょうか」
実戦図40-43
参考図7
池本先生「実戦の43で参考図7の1とノビるのは2のコスミツケから4とノビられて黒が苦しい。それでもなんとかしなければならないので、43とツケました」
参考図8
池本先生「実戦図のあと白が参考図8の1とノビれば図のようになって黒の成功ですが」
実戦図43-50
池本先生「実戦では白は44で45とブツカりました」
聞き手「46とオサエられて、まだ49や50に断点がありますね」
池本先生「49とツナいで白から50と切ってきました」
聞き手「50と切りにくそうに見えますが、池本先生は予想されていましたか」
池本先生「予想はしていました。ただ、この後良い手がなさそうだなと」
参考図9
池本先生「例えば参考図9の1と打っても2と応じられて左辺の黒が窮屈です」
参考図10
池本先生「さらに参考図10の1と切っても以下4から6となっては白が良い」
実戦図50-59
池本先生「そこで実戦は6線に並んだ4子を捨てることにしました」
参考図11
池本先生「実戦の59は参考図11の1では2とオサエられて3で生きはあるのですが先手で4にまわられてしまいます。これでは少し足りないかなと考えて実戦の59としました」