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洪道場の白黒さんぽ

一力遼竜星の心の一局(2)「息詰まる、技の応酬」

 実戦図29

実戦図27-29

一力先生「そこで、白は実戦の28にツケました」

質問「白28では、6ノ二はありませんか」

一力先生「その方が良かったかもしれませんね。黒の目を奪うのと同時に、白の目を作りに行くというのは考えられる手です」

参考図20

参考図20

一力先生「参考図20のように進んだとして、白Aからのデギリの味を見ながら、△が先手で利いているので、上辺の白は目の心配がありません」

参考図21

参考図21

一力先生「逆に参考図21のように白が単に1とすると、黒2で上辺の白2子が攻められる格好になります。確かに実戦の白28で6ノ二とするのもいい手ですね」

参考図22

参考図22

質問「実戦の白28に対して黒は引くものですか、反発する手はありませんか」

一力先生「いろいろあると思います。例えば参考図22の黒1なら、白2とオサエて以下白6となると、白も厚い形ですし」

参考図23

参考図23

一力先生「参考図22のあと黒が手を抜けば、参考図23の白1の切りに黒2とツグと白1があれば白3が先手になりますので、右上の部分に白の地が付きそうです」

参考図24

参考図24

一力先生「黒が参考図24の1とこちら側にハネると、白2と切って黒3のノビに白4とアテて以下白14とオサエれば、白12からのシチョウは白が良いので、黒3子が取られては白の成功です」

参考図25

参考図25

一力先生「あとは参考図25の黒1の側にハネる手ですが、白2とオサエて黒3に白4とツギ、黒5とツイで黒の右上が厚くなっても右辺の白にはひびかないので、白6とケイマに打っておけば、この白と黒の上辺の交換は白が得をした形です。それで実戦の黒29の引きが冷静な手といえます」

実戦図31

実戦図29-31

参考図26

参考図26

参考図27

参考図27

一力先生「実戦の黒31で、参考図26の黒1としても、白2から黒3白4となり、白2と4の二目は例えば参考図27のように打っても上辺の二目とツナガッているので、隅の黒2子が生きようとすれば、内外の黒石がともにうすくなってしまうので、これは黒にとっては好ましくない展開です」

実戦図36

実戦図31-36

一力先生「実戦の黒35とオサエられたとき、白28と黒29の交換があることで、白36としたときに多少目がたちになっています」

参考図28

参考図28

一力先生「例えば、今白28とツケたとすると、参考図28のように黒から2、4とされて、今度は黒△があるために、白2子が取られてしまいます」

実戦図41

実戦図36-41

一力先生「実戦の黒41は、出切りを防いだ手です」

参考図29

参考図29

一力先生「参考図29の白1から白3と出切っても、黒4以下白を取れています。先手で上辺の黒を強化しようとしています」

実戦図44

実戦図41-44

一力先生「黒41に白42と反発しました」

参考図30

参考図30

一力先生「黒は参考図30の黒41(△)を囮にし、黒43とアテてAの断点を補っています」

実戦図45

実戦図44-45

一力先生「黒45とひらいて、この段階で形勢は互角だと思っていました」

聞き手「黒45はどんな狙いがあるのでしょうか」

一力先生「この時点で、上辺はほぼ固まり右辺も大きいところはありますが、一応打ち終えている感じで、残っている大場は左辺と下辺です」

参考図31

参考図31

一力先生「参考図31の黒1と下辺も大きいのですが、白2やAに打たれると、左辺の上部がそのまま地になりそうです」

参考図32

参考図32

一力先生「黒△があれば、次に黒1の狙いがあり、ここでは最も大きいところでしょう」

実戦図49

実戦図45-49

一力先生「白は最後の大場にカカリ、先程狙いの黒49ときました」

参考図33

参考図33

一力先生「黒49のあと、参考図33の白1とすると、黒12まででセメアイは黒の勝ちです」

 参考図34

参考図34

一力先生「参考図33の白5で参考図34の白1と戻りますが黒2とカケツイで、白は全体の目があやしく、Aの割り込みも心配しなければならないので、33図の白1とするのは難しいのです」

 

 次回第三回をお楽しみに

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著者略歴

  1. 洪 清泉

    1981年12月30日生 韓国済州出身
    1993~1997年 韓国棋院院生として修行
    1999,2001年 アマ国手戦優勝(韓国代表決定戦)
    2004年 鳳凰杯プロアマオープン優勝
    2007年 全日本アマチュア名人戦 優勝
    2008年 全日本アマチュア本因坊戦 優勝
    2009年 関西棋院試験碁合格 関西棋院入段
    2013年 二段
    2014年 NHK杯出場
    2015年 棋聖戦Cリーグ進出
    2016年 天元戦本戦進出
    2016年 三段
    2016年 碁聖戦本戦進出
    2017年 天元戦本戦進出
    2017年 NHK杯出場
    2018年 NHK杯出場
    2019年 四段

  2. 一力 遼

    平成9年(1997年)6月10日生
    宮城県出身
    宋 光復九段門下。
    平成22年夏季入段(平成23年度採用)
    平成24年二段、25年三段、26年四段、同年七段、29年八段
    日本棋院東京本院所属

    平成25年 棋道賞新人賞・勝率第1位賞受賞
    平成26年 第39期棋聖戦リーグ入り ☆16歳9ヵ月でのリーグ入りは史上最年少記録。リーグ入りにより七段に昇段
    平成26年 第1回グロービス杯世界囲碁U-20優勝
    平成26年 第5回おかげ杯優勝☆二連覇
    平成26年 第39期新人王戦優勝
    平成26年 棋道賞国際賞受賞
    平成27年 棋道賞国際賞受賞
    平成28年 棋道賞最多勝利賞 47勝19敗 最多対局賞 66局
    平成28年 第25期竜星戦で井山裕太棋聖を破りタイトル獲得
    平成29年 棋道賞優秀棋士賞受賞
    平成30年 第27期竜星戦優勝
    平成30年 第25期阿含桐山杯優勝
    平成31年 NHK杯優勝
    令和元年 第28期竜星戦優勝

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