新井満涌初段の心の一局(2)「憧れの棋士②」
実戦図42-44
新井先生「コウを仕掛けたのですが、黒にコウを抜かれて白にはコウ材がありません」
参考図11
新井先生「例えば参考図11の白1とツケてサバク打ち方もあるかもしれませんが、コウを仕掛けたあとの白1では、コウを解消されたり黒2とされても、上辺の白石が浮いている感じになります」
聞き手「上辺の白石が薄くなっていきますね」
新井先生「コウを利用してうまくまとめてみよう、という気持ちでした」
参考図12
聞き手「参考図12のようにコウがない状態で、単に1とマガルと黒2とツケられて黒が繋がってしまいますね」
新井先生「実戦の進行と、参考図の進行を比較すると、実戦の図ではコウを仕掛けたことによって、右辺の黒が繋がりにくくなっていて、しかも先手で白44にマガリを打てています」
実戦図44-45
新井先生「ここで黒は45とコウを解消しました」
聞き手「少し甘いように見えますが」
新井先生「鈴木先生は地にカライ打ち方なので『これで黒が良いでしょう』とのご判断だと思いました」
新井先生「私は厚い碁が好きなので、44のような手は『千両曲がり』を打ったような気分でした」
実戦図44-46
新井先生「コウを解消されたあと、白は46にハネました」
聞き手「このハネはまだ利いていないようですが」
新井先生「そうなんです。一般的には『序盤で44、46と二手かけるのはどうなの?』って言われてしまう手なのですが、洪先生には『信念があらわれた手』とおっしゃっていただきました」
聞き手「新井先生らしい手ですね」
参考図13
新井先生「普通なら、白46では参考図13の白1トビでしょうね」
聞き手「これは実戦と比べて、ダメがあいてますね」
新井先生「そうなんです。46の利点は」
参考図14 白3 [8]
新井先生「少し断点は残りますが、46の後、参考図14の白1から黒8となって、かなり黒をへこませました」
参考図15
新井先生「他には、参考図15のように、後々白△に石が来れば、Aなどから結構ヨセが利きます」
参考図16
新井先生「そして、参考図16のように黒1と切ってくれば、白2として戦いにもちこみます」
聞き手「切らせて戦おう、という手でもあるんですね。味わい深い手です」
参考図17
新井先生「因みに、参考図17のように後々△の交換があれば、白1から打って」
参考図18
新井先生「黒1と切るのは、白4まで両アタリで取られてしまいますので」
参考図19
新井先生「前図の黒1で参考図19の黒1とツグことになりますが、随分白が良さそうです」
実戦図46-47
新井先生「厚みを重視する打ち方はすぐに地になることはあまりなく、一手の価値が問われてしまうことがあるのですが『見えない地』といって、あとになって戦いになったときに大きな力を発揮します」
聞き手「中を広く構えて、相手にどうするのか聞いているのですね」
新井先生「実戦は黒47としました。さすが鈴木先生、すぐには乗ってくださらない。白はウスイところもいろいろあるし『中央辺りに黒石がきたら戦いますよ』ということでしょう」
実戦図47-53
新井先生「仕方がないので、白は全部対応しています」
聞き手「コウ材がないので、53とツグしかありませんね」
参考図20
新井先生「正直いいますと、AとしたときにBと切られて少しショックでした。黒は△が光っていて、よく見ると左辺と下辺の白は弱い石ばかりです」
第二譜(51-100)
苦し紛れにサバキを求めて白54とツケましたが、黒57では62に打たれるくらいで白大変そうです。
白58、60でチャンス到来!下辺が攻め取りになって少しだけ元気が出てきました。
実戦図53-54
聞き手「ここからスゴイ変化になっていますね」
新井先生「そうなんです。白54とツケたのは…」
聞き手「黒が攻めてきたのに、逃げずに逆に入って行ったのですね」
参考図21
新井先生「例えば参考図21のように逃げて、白9で右辺の白石に繋がっているように見えるのですが、繋がっても白石はまだ弱いんです」
聞き手「白模様が跡形もないですね。ただ逃げていくだけではツライ」
新井先生「厚みの碁では、これだけはやってはいけないという見本です」
実戦図54-57
新井先生「白としては54からサバキにいきます」
参考図22
新井先生「結論からいえば、黒57では参考図22の1で良かったのです。黒としては図の上下△の白を切り離してさえおけば、右下の黒は生きていますし、右下と下辺の白は繋がるのも苦しくて繋がったとしてもまだ生きていません」
聞き手「下の白△と下辺の白石がツナがるのは難しそうですね」
新井先生「図のように打たれると、かなり苦戦を強いられていたでしょう」
(つづく)