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洪道場の白黒さんぽ

呉柏毅六段の心の一局(3)さらなる頂きを目指して

実戦図93-98

実戦図(93-98)

 

参考図19

参考図19

呉先生「実戦は95とハネました。参考図19の黒5までが黒の狙いで、隅はコウを仕掛ける手が残ります。白が6と守ると参考図18より、わずかに黒が勝ります」

 

実戦図98-104

実戦図98-104

 

参考図20

参考図20(黒6は7の下)

呉先生「参考図20のようになると、黒地が大分減らされてしまいます」

呉先生「というわけで、実戦のように進んだのですが、後手を引いてしまったので白104を許してしまいました」

聞き手「しかし、痛い失敗というわけではなさそうですが」

呉先生「確かにまだまだ難しい形勢ですが、気持ち的にちょっと失敗したなと」

 

 実戦図104-115

実戦図104-115

 

 参考図21

参考図21

呉先生「実戦の115で手を抜くと参考図21のように白から荒らされるので、それを嫌って115としました」

 

実戦図115-117

実戦図115-117

 

参考図22

参考図22

呉先生「細かい話ですが、普通なら実戦の117では参考図22の黒1とツグのですが」

 

参考図23

参考図23

呉先生「将来、参考図23の白1から取られてしまう手が残るので、それを嫌って117とサガりました」

 

参考図24

参考図24

呉先生「参考図24となると、2目得なんです」

呉先生「このとき、多少形勢が悪いかなと思い、頑張ったのですが、右下の黒は思いの外味が悪いのです」

 

参考図25

参考図25(白3はA)

呉先生「白から打つとすれば、参考図25の1かAですが」

 

参考図26

参考図26

呉先生「参考図26の白9でコウになり、このコウに負けたときBがあるので黒10とツギますが白11で大きなコウになってしまいます」

 

参考図27

参考図27

呉先生「参考図27の黒4トビが正しくて、8までギリギリ耐えているのですが、その分白にコウ材がたくさんできました」

 

 実戦図115-117

実戦図115-117(再掲)

聞き手「ここまで、呉先生は形勢が悪いと思っておられますが、はっきり白持ちだと言える方はいらっしゃいますか」

参加者「うーん、下辺の黒地が減ったのと白の厚みになったのと、白番でやや白持ちかな」

呉先生「私は悲観派で、対局前から形勢が悪いと思っています(笑)」

 

 実践図117-130

実戦図117-130

聞き手「黒127のツケは左上の白地を増やさないようにしているのですか」

呉先生「そうです。様子見の意味もありました」

 

 参考図28

参考図28

呉先生「127のツケに参考図28の白1と下をハネると、図のように黒14まで隅の白がかなり危険です」

 

 実戦図130-134

実戦図130-134

呉先生「黒133は一見すると薄い手ですが、自分の陣地を増やしながら白の模様を制限する意図でした」

呉先生「このときは、意外にいけるのではないかという気持ちでした。ずっと悲観してたのに不思議です(笑)」

聞き手「白は134程度でいいと思ったのでしょうか」

呉先生「そうですね。白はもっと厳しく来るかと思ったのですが」

 

 実戦図134-143

実戦図134-143

呉先生「141と押す前に139のアテを打ったのは様子見です。実戦の抜きならば141押しが成立します」

 

 参考図29

参考図29

呉先生「142で参考図29の白1なら、図のような進行を考えていました」

 

 実戦図143-148

実戦図143-148

呉先生「ここから先は、上辺と中央右など不確定なところが多くて、どうまとめるかで勝敗が決まりそうです」

 

 参考図30

参考図30

聞き手「例えば、参考図30の1とトンだら」

呉先生「白2あたりでも、形勢が変わってしまいそうです」

聞き手「ここに白地をあまり作らせないように打たないとならないですね」

 

 実戦図148-151

実戦図148-151

呉先生「悩んだ末に打った手が151でした」

 

 第四譜

第四譜(151-200)

151のコスミを発見して決断できたのは嬉しかったです。形勢自体がよくわかっていない状態で厳しく打つのは勇気がいりましたが、この手から少しずつ流れを引き寄せたのかもしれません。

黒157のツケから170までの分かれは少し得したと思います。

ここからは秒読みになり、慌てながら必死に落ち着かせようとしていました(笑)(呉)

 

柏毅は院生の頃から細かい碁が得意でした。元々性格がきれい好きで清潔で掃除が出来ます。私とは正反対です(苦笑)いつも細かい勝負が多いのでハラハラドキドキしながら見ていますが、自分が得意とする分野があるのはとても良いことです。これからも上手く伸ばして欲しいですね^-^(洪)

 

 最終譜

最終譜(201-246)

呉先生「最後に白が244に手入れが必要な事に気付き、やっと半目勝ちかなと思いました」

 

この碁を打たれた時は丁度AIとの付き合い方で悩んでる頃でした。自分の手に自信が持てなくて、気持ちの悩みが成績にも反映してました。

対局前に自分らしく打つと臨んだ結果、半目勝てたのがすごく感慨深かったです。(呉)

 

柏毅の碁は終盤がポイントです。最後の最後まで一つ一つ丁寧にパズルを完成させていると感じます。この碁も丁寧にヨセをしていましたね。この碁の勝利で4勝1敗、Bリーグに昇格しました!今年のBリーグでは苦戦してCリーグ陥落しましたがまた上がるでしょう。Bリーグの対局でたくさん勉強になったと思います。また頑張りましょう!(洪)

 

 ハイライト

ハイライト(黒△ 133手目)

この手を見て美しいと思いました。黒△が〇の石と繋がり右中央に黒地が見えてきました。とてもバランスが良いなと感心しました。

私は院生時にずっと相手の石を狙うだけでヨセまで行く必要はないと思っていました。逆転負けばかりで結局プロにはなれませんでした。

私はヨセが下手なので柏毅のスタイルが羨ましいです。柏毅にいろいろ習いたいですが多分高いご飯が必要な気がします(笑)(洪)

 

編集部注:呉柏毅先生は令和6年現在六段、49期棋聖戦Aリーグに在籍

 

(了)

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著者略歴

  1. 洪 清泉

    1981年12月30日生 韓国済州出身
    1993~1997年 韓国棋院院生として修行
    1999,2001年 アマ国手戦優勝(韓国代表決定戦)
    2004年 鳳凰杯プロアマオープン優勝
    2007年 全日本アマチュア名人戦 優勝
    2008年 全日本アマチュア本因坊戦 優勝
    2009年 関西棋院試験碁合格 関西棋院入段
    2013年 二段
    2014年 NHK杯出場
    2015年 棋聖戦Cリーグ進出
    2016年 天元戦本戦進出
    2016年 三段
    2016年 碁聖戦本戦進出
    2017年 天元戦本戦進出
    2017年 NHK杯出場
    2018年 NHK杯出場
    2019年 四段

  2. 呉 柏毅

    1996年1月26日 台湾出身

    2014年 入段
    2014年 秀策杯3位
    2014年 ゆうちょ杯4位
    2015年 新人王戦本戦進出
    2016年 二段
    2016年 関西棋院新人賞
    2016年 棋聖戦Cリーグ進出
    2016年 関西棋院1位決定戦本戦進出
    2016年 ゆうちょ杯優勝(初タイトル)
    2016年 碁聖戦本戦進出
    2016年 天元戦本戦進出
    2017年 棋聖戦Cリーグ進出
    2017年 三段
    2017年 竜星戦本戦進出
    2017年 天元戦本戦進出
    2018年 四段
    2018年 NHK杯出場
    2018年 新人王戦本戦進出
    2019年 棋聖戦Bリーグ昇格
    2019年 五段
    2019年 NHK杯出場
    2024年 六段
    2024年 第49期棋聖戦Aリーグ

    関西棋院所属

    王 立誠 九段門下

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