池本遼太初段の心の一局 ③『挑戦する力』
実戦図93-96
参考図29
池本先生「実戦の96で参考図29の1ツギは2で上辺の白地がなくなりますし、右上も黒が頑張っていたので地合いが良くなっています。シチョウの3子が取られるのは普通は良くないのですが、シチョウの先には白の壁があって元々強いところですから、黒はそれほど痛くはないのです」
聞き手「シチョウを逃げたとき、相手の方はどうでしたか」
池本先生「ネットなので顔色はわかりませんが、考慮時間を3回使われたのでちょっとお困りになったのかなと」
実戦図96-103
池本先生「白は96で左側の黒をにらみながら下辺をアラシにきました」
聞き手「97を捨て石にして101と壁ができてきました」
実戦図103-113
池本先生「ここで実戦の113と2子をヌキましたが、これが予想以上に大きいのです」
参考図30
池本先生「参考図30のように白が1とツイで黒2としたとき白から3に手が残っているのです。図のように運んで黒Aには白Bがアタリになっています。実戦の113とヌイておけば参考図30のBがアタリにならないので白を取れます」
参考図31
池本先生「さらに113に石がきたことで参考図31の黒1の手が残りました」
聞き手「113にヌイた時点ではどう思いましたか」
池本先生「113に白にツガれると、形勢はやや悪いかなと思っていました。我慢していたら手番が回ってきたので打つことができました」
参考図32
聞き手「112で参考図32の1とツグのはいかがですか」
池本先生「ここまで下辺が進んでからでは黒が上辺より2、4と打って下辺の白を狙うことも、白としては意識しなければならなくなっています」
実戦図113-115
参考図33
池本先生「実戦の115に参考図33の白2とするのは下辺で白の生きはあるのですが、下辺の黒地は元々大きくないしAにキリも残っているので13と強気に攻められます。しかし一応この手が残っています」
実戦図115-126
聞き手「121からの数手は時間つなぎみたいな手ですね」
池本先生「大橋先生はまだ考慮時間が4回ほど残っていたのですが、ここであまり時間は使いたくないと思われていたようです」
参考図34
池本先生「実戦の126は、参考図34の黒☓がくると黒から1の狙いが残るので、それを防いだ手です」
第三譜(121-163)
池本先生「黒127と白130はお互い小さな手でした。黒127は135に、白130は137のほうがそれぞれ大きかったです。実戦は結果的に黒が135にまわることができました。黒139から順番に白を攻めて各所で得をしてから黒163にまわっては勝勢です」
実戦図126-131
池本先生「実戦の127から130の4手は余計だったかもしれません」
参考図35
池本先生「というのは、実戦の130ですぐ参考図35の1から3とした方が大きかったし、ということは黒も127のノゾキよりも中央から右辺方面に打ったほうがよかったのです」
聞き手「双方お付き合いをしてしまったのですね」
池本先生「おかげで、実戦の131と思ったより大きいところに手が回りました」
実戦図131-135
池本先生「135となりましたが、下辺の白は完全には生きていません」
参考図36
池本先生「参考図36の白1ツケで以下4までが考えられますが、これは地合いが黒少しいいでしょう」
実戦図135-146
池本先生「実戦の145のあと黒からAに来られると146と反対側のキリが見合いになるので146と守ります」
実戦図146-163
池本先生「実戦の黒147に148と守らなければならず、右辺は白1目もできません。163に手が回って黒がいいでしょう」
参考図37
聞き手「白160で切っても後手ですか」
池本先生「参考図37の1と切っても白7が必要なので、後手は仕方がないかなと思います」
第四譜(164-263)
洪先生「遼太は小学生の頃から目に光がありました。「ピカピカする」と言ったら周りから私の日本語がおかしいと直してくれましたが、ほんとうに「ピカピカ」でした。そのスピードと活き活きとした活力は今でも覚えています」
洪先生「詰碁が好きで良く解いていました。みんなが休みの連休でも詰碁をコツコツやっていたその努力が今の遼太の力だと思います。道場のPCに入力した詰碁の量は結構な数ですが遼太はほとんど解いています。遼太は計算が得意で形勢判断がとても早い。これから経験を積んでいけばきっと大きな活躍をすると思います。せいいっぱい頑張りましょう」
ハイライト
洪先生「遼太のこのシチョウを逃げる一手。驚きました! 小さいときから手がとても早見えで感心していましたが、この発想力は遼太だけの力です。素晴らしい手だと感じました。進化するためにはいつも新しいことへの挑戦がだいじです。これからも常に前を向いて進んでいきましょう」