五藤眞奈初段の心の一局(1)「初めての公開対局」
五藤眞奈初段
2001年12月13日生 東京都出身
2018年 入段
日本棋院東京本院所属
五藤眞奈初段から皆様へ
本日は皆様にお会いできて大変嬉しく思います。足をお運びいただきまして心から御礼申し上げます。
私は4月1日(2019年)付けで正式にプロ棋士になりました。その点では既にプロ棋士として実績のある一力先生とは正反対ですが、対照的な面白さを感じていただければ幸いです。
日本棋院の院生になったのは小学校6年生の4月からで、平成29年度の冬期プロ試験で8勝7敗の勝ち越しで推薦入段が決まりました。プロ試験に合格するには気力と実力、運の3つが必要です。私は通常の院生研修でもプロ試験でも、その日の朝、家を出る前に母に口答えをすると必ず負けます。ですからプロ試験中は、失敗もありましたが口答えをしないよう頑張りました(とっても疲れました)。
これからの目標は、先ずNHK杯に出られるようになりたいです。そして母や洪先生、全国の皆様に見ていただけるような碁を打てたらと思います。最終的にはNHK杯で優勝します!
洪道場をこれからもよろしくお願いいたします。
洪から眞奈へ
眞奈は道場18番目の棋士です。良いところはいろいろありますが、毎日黙々と頑張るところが私は特に好きです。
どんな仕事もそうですが、楽をしようとしないで真剣に臨む姿勢がある人が、結局は成功する気がします。いろいろ足りないところがあって眞奈は一番叱られていた道場生の一人でもあります。でもそれにへこまず、いつも改善しようとする、そして頑張っているのを見て嬉しく思います。
これから世の中に出て社会人として生きて行きます。いろいろ不安もありますが眞奈のことを信じています。自分の長所と短所を把握して人々の話を聞く、人々のために役立つ。そう生きようとすれば、少しずつですが、うまくいくと思います。心いっぱい応援しています。
2019年3月30日
新初段公開対局・解説会
白 辻 華 初段
黒 五藤 眞奈 初段
持時間3分
1手20秒の秒読み
第1譜(1-41)
五藤先生「1手20秒で1分3回の考慮時間での早碁ということもあり、打ち慣れている「星・小目」を使いました。しかしわずか4手目でかかられてしまい違う碁になってしまいました。黒7ではAの方が打ちやすかった。私は早碁が苦手なので、潰れないようにゆっくりした碁に打つように心がけていました。今回はこの戦略が勝ちにつながったと思います。黒33は様子を見た手です。黒41まで良い勝負だと思います」
実戦図1-4
五藤先生「実戦図の白4では、左上のはずが、いきなり白4にかかられて予定が狂ってしまいました」
参考図1
五藤先生「当初は参考図1のように進行するつもりでいましたが、いきなり予定が狂って焦ってしまいました」
聞き手「いきなりかかるのは、確かにちょっと珍しいですね」
実戦図4-7
参考図2
五藤先生「実戦の黒7では、参考図2の黒1とするのが良かったかもしれません」
実戦図7-17
五藤先生「実戦のように進行すると、下辺が白っぽくなって打ち込む場所が難解になってしまいました」
聞き手「参考図2の黒1とした場合、白はどうしますか」
参考図3
五藤先生「参考図3白2とシマリを打てば、黒は3とした方が私の碁風に合っていたので、わかりやすかったです」
聞き手「なるほど、黒3となって右下の黒はアツくなりましたね」
実戦図17-19
参考図4
五藤先生「最初は参考図4の黒1とハサむつもりでしたが、白からすぐ三三に入られて、悪くはないのですが、参考図4のように進んだ後に白からAやBとされるのが、少し気になりました」
実戦図19-24
参考図5
五藤先生「実戦図の白24で参考図5の白1とし、黒2のブツカリから白7までとなれば、黒の2子が苦しかったでしょう」
参考図6
五藤先生「参考図5のようになるなら、黒は実戦の21では参考図6の黒1とした方がよかった」
実戦図24-26
参考図7
聞き手「実戦の白24で参考図7の白1と跳んで以下白5となれば、実戦の黒27手までの形よりは白に余裕があったかもしれませんね」
五藤先生「黒27と急所に打てたので、良くなったと思いました」
実戦図26-41
聞き手「先生はここではどう感じていましたか」
五藤先生「黒は地を稼いだので、上辺の勝負になると思っていました」
質問「白32の一目を取れたのはありがたかったですよね」
五藤先生「はい、その一目を取れたので、中央の黒がだいぶ厚くなりました」
参考図8
聞き手「振り返って、白32で単に参考図8の白1とする手もありましたね」
五藤先生「こうされると、中央の黒の目も制限されて嫌でした」
参加者「白は攻めるのが早すぎたかな」
聞き手「黒35のコスミは良い手でした」
参考図9
五藤先生「実戦の白36で参考図8の白1なら、黒2とトビツケて白3には黒4とハネて、黒は外へ脱出できます」
参考図10
五藤先生「実戦の白40で参考図の白1とすると、黒2のアテから4とツイで、右側の白が少しウスくなります」
参考図11
質問「実戦の白40で参考図11の白1とトンだらどうでしょう」
五藤先生「黒2とツケて白3に黒4で、Aに割かれるなどの手があって、右側の白が傷みそうです。白としては、右上の地模様を重視していたのでしょう」
第2譜(41―80)
白64まで白地が多く形勢不利だと思いました。上辺の白3子を攻めなければと思い、黒65・67で白を攻め始めました。黒69は直感的に打った手で、この時点ではその後の展開は考えていませんでした。白は70で78に守るのが良かったです。実戦では黒の捨て石作戦がうまくできたと思います。これで外側が厚くなり良い勝負になった気がします。
実戦図41-64
聞き手「このあたりでは、どうでしたか」
五藤先生「白は実戦の64に打って、全体的には地で黒を上回っていますので、白のほうが良いと思っていました。黒は、上辺からの白3子を攻めていかなければならないのですが、ちょっと難しいかなと」
聞き手「では、遡って、ここまでにどういう手があったと思いますか」
参考図12
五藤先生「実戦の黒57では、参考図12の黒1と二間に開く方が良かったです。参考図12の黒7まで進行した後、実戦の場合の黒Aでは白からBと入られた場合、周りの白が多くて戦いは黒が不利そうです」
参考図13
聞き手「参考図12のあと、参考図13の白1にはどうしますか」
五藤先生「参考図13の黒2とノビて図のように進行します」
聞き手「白が9と割いてきたら黒は苦しくなりませんか」
参考図14
五藤先生「そのときは、参考図14のように打って、周りにいろいろ利きがありますし最悪でも死ぬことはなさそうです」