池本遼太初段の心の一局 ②『シチョウを逃げる?!』
第二譜(61-120)
池本先生「白64で65に打てば黒Aでコウになります。コウなら黒が中央を二手連打する格好になりそうです。実戦は先手で生きることができましたが、黒にとっては中央の4子が切られBの弱点をカバーされたのが痛かったです。形勢は白良しです。白70は良い手で黒の打ち方が難しいです。白84は120のほうを決めてから打つべきでした。実戦でも白地が非常に大きいように見えます。しかし黒85から91に気付き実戦のように破ることができてはだいぶ盛り返しました。白96か104では113に打つのが見た目以上に大きい手でした」
実戦図59-61
聞き手「白は60とオサエますね」
池本先生「そこで61とカケツいで先手を取って右上にまわりたいのです」
参考図12
聞き手「参考図12の1とサガったら手を抜くのですか」
池本先生「2と受けておき」
参考図13
池本先生「白が手を抜けば参考図13となり、これは隅の白がかなり危ない」
参考図14
聞き手「59のあと白が参考図14の1と攻め合いにきたらどうでしょう」
池本先生「やはり2から打って、黒の攻め合い1手勝ちになります。ここは4子を取られて少し悪かったので思い切って打ちました。考慮時間も4回使っています」
実戦図61-64
池本先生「そこで白は62と守りました。白は手数がノビたように見えますが」
参考図15
池本先生「64で参考図15の1の攻め合いは、2、3と代わってから4とコウにする手があります」
参考図16
池本先生「参考図16のようにコウを解消すると先程取られた四子が生き返り下辺が大きくなりますし、11と先着されても四子が生き返ったことで今度は12が厳しいので黒の方が良さそうです」
参考図17
聞き手「実戦の64の後参考図17の1とデルのはどうでしょう」
参考図18
池本先生「参考図18のようになり、後に白から左下隅から左辺の黒に手が残っていますし、下辺で白に生きられると中央の黒石を取られたのが大きいです」
実戦図64-70
池本先生「ここで先手がとれて69にまわることができましたが、狙いになっていた左上の断点が左辺の白が固くなったことで狙えなくなってしまったのでまだ白のほうが良いかなと思います」
聞き手「70のツケはプロっぽい手ですね」
池本先生「ここでかなり考えました」
参考図19
池本先生「参考図19の1からの変化は想定していました。これなら8までで右下の弱い石をにらみながら有利に戦えるでしょう」
実戦図70-71
参考図20
池本先生「白70のツケに黒はどうしていいかわからず悩みました。参考図20の白△の可能性も残っていますし、気合でAから連打しても、左側の白にはひびかない。実は白70は3秒ぐらいで打たれました。私はおそらく参考図20のAだと思っていいたのです」
聞き手「それはもしかすると相手の方がカチンときたのかもしれませんね(笑)」
池本先生「このあたりで考慮時間は1回残っていたか、もうなくなっていたかもしれません」
実戦図71-76
聞き手「73は隅を黒地にしようという手ですね。隅で白を生かさないぞという」
参考図21
池本先生「参考図21のように進んで右上隅の白は生きますが、8で左側の白の厚みが消えていきますし、右辺の白石もウスくなっていきます」
参考図22
池本先生「参考図21の白5で参考図22の5と出ても6まで、黒の主張が通っているかなと思います」
参考図23
池本先生「白76から参考図23の1と右上隅を取っても上辺から中央にかけて全部白地にはならないにしても、右辺の白2子も攻めにくくなり、勝てる自信がありませんでした」
実戦図76-82
参考図24
池本先生「実戦の82のあと参考図24の1とすると、参考図21と比較して上辺の白地が大きくなっています」
参考図25
池本先生「そこで白は参考図25の1とアテ、黒2から4のヌキに白5とアテ7のヌキに黒8なら白☓で切れてしまうので、黒8でAとすると白8となって黒が悪い」
実戦図82-87
池本先生「実戦の86で参考図25の☓と切るのは同図の右上隅の交換がないので無理です」
参考図26
池本先生「実戦の86で参考図26の1のヌキ、3とアテれば4黒が良い」
参考図27
池本先生「実戦の85に86としてさらに参考図27の1とすれば白は2とヌクことができ、白は右上隅には手を入れず3の右にハネるなど黒4子を攻めます」
実戦図87-93
聞き手「白88はシチョウで、大きいですね」
池本先生「はい、シチョウですが91と逃げ92に93としました」
参考図28
池本先生「実戦の93に参考図28の1とツグと6となってシチョウではなくなってしまいます」
つづく